税理士資格が活きるおすすめの転職先5選と希望を叶える転職先の選び方と注意点

税理士の転職

更新日:2024.03.11

公開日:

税理士が転職を考えるときは、キャリアの方向性を定めたうえで転職活動を進めることが大切です。方向性を定めずに条件や待遇のみで転職先を決めてしまうと、思うような経験が積めずに希望のキャリアを構築できない可能性があります。

税理士の転職先は大きく分けると5つあります。それぞれの転職先を選ぶメリット・デメリットを知り、キャリアの方向性を決める際の参考にしてください。

このコラムでは税理士の主な転職先について解説するとともに、目的・状況別、年代別におすすめの転職先を挙げていきます。

税理士の転職は売り手市場

税理士の転職は売り手市場が続いており、税理士法人や税理士事務所の求人は安定してあります

税理士試験の受験者数・合格者数の減少により税理士は人材不足傾向にあること、マイナンバー制度の導入や相続税法の改正などにより業務量が増えていることなどが理由です。

また税務申告業務は景気の良し悪しにかかわらず発生し、事業再生や助成金活用など不況下ならではの業務もあるため、今後も税理士のニーズが激減することは考えにくいでしょう。

もちろん、新型コロナ感染症拡大の影響による中小企業の倒産やAIの台頭など不安要素もありますが、上記の理由から税理士の売り手市場はしばらく継続すると予想されます。

税理士の転職先は大きくわけて5つ

売り手市場の現在、転職の機会をうかがっている税理士も多いでしょう。転職活動をする際には自身の方向性を明確にすることが大切です。ここで税理士の主な転職先を5つ挙げるので、どの方向で転職活動を進めていくのかの参考にしてください。

税理士事務所・会計事務所

税理士のもっともオーソドックスな転職先といえば税理士事務所か会計事務所です。税理士事務所と会計事務所は名称が違うだけで業務に大きな違いはありません。代表が公認会計士である、会計コンサルを行っているなど、会計色を濃く見せたい場合に会計事務所と名付ける場合があるようです。

いずれも税理士または会計士である代表一人が個人事業主として運営し、数名程度のスタッフがいる事務所になります。

税理士事務所・会計事務所への転職で有利な経験

税務申告書の作成や法人顧問業務、決算指導などオールマイティーな経験が必須です。税理士事務所・会計事務所で主担当を任された経験が3年以上あれば転職で有利に働くでしょう。

その事務所が得意とする領域でどの程度の実務経験があるのかも重視されるため、応募先の得意分野と自身の経験を照らしあわせておくことが必要です。

税理士事務所・会計事務所の年収相場

年収は500万円がひとつの目安とされています。税理士事務所・会計事務所といっても所長の考え方は千差万別ですし、営業力や売上、立地などにも大きな違いがあるため一律に年収を予想するのは困難です。

そのため転職の際には、業務内容や負担の度合いに見合った給与が支給される事務所なのかについて、他事務所とよく比較しながら選ぶことが必要になるでしょう。

税理士事務所・会計事務所へ転職するメリット・デメリット

税理士事務所や会計事務所では税理士のキャリアの土台を構築でき、得意分野や特定の業界などで深い経験を積むことも可能です。特に将来開業を考えている場合は税理士としての基礎的能力の向上や人脈形成にも役立つため事務所経験が不可欠でしょう。

デメリットはよくも悪くも所長税理士の考え方に左右される職場環境なので、所長と相性が合わないと長く勤務するのが難しい点です。所長の高齢化や売上減少による廃業などのリスクもあります。

税理士法人や一般事業会社と比べて知名度が高くない事務所が多いため、事前の情報収集をしっかり行い、事務所の内情や将来性についても検討しておく必要があります。

税理士法人

税理士法人は2人以上の税理士によって設立・運営されている、組織化された税理士事務所のことです。支店展開が可能なので全国に支所がある大規模な税理士法人もあります。税理士法人は規模によって大きく以下の4つに分けることができます。

Big4税理士法人

「EY税理士法人」「PwC税理士法人」「KPMG税理士法人」「デトロイトトーマツ税理士法人」を指します。4大国際会計事務所と呼ばれる「EY」「PwC」「KPMG」「デトロイト」がグローバル展開の中で日本国内の監査法人と提携し、その系列の税理士法人として日本での税務サービスを提供しているのがBIG4税理士法人です。

税理士の転職先としてBIG4税理士法人を選ぶメリットと転職成功のポイント

大手税理士法人

独立系でも数百名規模のスタッフを抱える税理士法人があり、大手税理士法人と呼ばれています。従業員規模でいうとBig4と大差はありませんが、クライアントがBig4に比べると若干小規模です。

準大手税理士法人

大手税理士法人に次ぐ規模の税理士法人を準大手税理士法人といいます。クライアントは上場企業に加えて上場準備企業やベンチャー企業など幅広いのが特徴です。

中小規模税理士法人

上記以外の規模の税理士法人を中小規模税理士法人といいます。多様なクライアントを担当するため幅広い経験ができます。

税理士法人への転職で有利な経験

Big4税理士法人や大手税理士法人ではほかの税理士法人や税理士事務所では経験しないような専門性の高い税務を行うため、国際税務や連結納税、譲渡申告などの特殊業務の経験があると評価されやすいでしょう。

そのほかの税理士法人では税理士法人または税理士事務所での勤務経験が3年以上あると有利にはたらきます。

税理士法人の年収相場

年収相場は税理士法人の規模によって大きく変わります。Big4や大手税理士法人はクライアントの規模が大きいため税理士の年収も高くなりやすく、年収相場は800万~1000円です。準大手税理士法人になると500万~700万円、中小規模税理士法人は500万~600万円が目安になるでしょう。

【2023年】税理士の平均年収は746万円|規模・年齢・性別毎に比較・年収アップの方法まで

もっとも、税理士法人の場合は役職による年収差も大きいため、マネージャーやパートナーになることで年収が大幅に上がる可能性があります。

税理士法人へ転職するメリット・デメリット

Big4や大手税理士法人は大企業のクライアントが多く、国際税務などグローバルな税務や高度な専門性を要する税務を経験できます。年収が高い、スケールの大きな業務を経験できるといったメリットもあります。

一方で、決算業務や記帳代行など一般的な税務業務は経験できないため、税務の幅が狭くなりがちです。全国転勤がある、ハードワークになりやすいといった点もデメリットでしょう。高度な専門性や問題解決能力、語学力など求められるものが大きく採用のハードルも高いです。

準大手税理士法人や中小規模税理士法人はクライアントの規模や種類が限定されないため、多彩な業務を経験できます。そのため将来独立を考えている人などはBig4や大手よりも実践的な能力の向上に役立つ可能性があります。

デメリットはBig4や大手税理士法人と比べると年収が下がる、案件のスケールが小さくなるといった点が挙げられます。

一般事業会社

数としてはそれほど多くないですが、税理士が一般事業会社へ転職する場合もあります。会社の種類は大企業や上場企業、中小企業にベンチャーとさまざまです。

一般事業会社の経理で税理士を採用する場合、すでにいるスタッフにはない経験や知識をもつ人材を求めているため、専門的な知識が必要です。また、大企業や上場企業では税務や財務を担当するケースが多いですが、中小企業やベンチャー企業ではほかの事務まで非常に広範な業務を担当する場合があります。

一般事業会社への転職で有利な経験

一般事業会社への転職では法人税務や連結決算、税務DD、国際税務などの専門的な経験が評価される可能性があります。また上場企業の経理で働いた経験や語学力があると有利に働くでしょう。

税理士資格があることは必ずしも評価の対象になりません。しかし税理士としての実務経験や知見こそが価値なので、転職の際には応募先が求める業務経験や知識があるかどうかを確認しておきましょう。

一般事業会社の年収相場

経理職の年収相場は400万~500万円ほどです。一般事業会社ではほかの従業員と同じ給与体系が適用されるので税理士資格があっても同程度の年収になるでしょう。ただし、課長職などの役職での採用の場合は600万~800万円ほどの年収を得られる可能性があります

一般事業会社へ転職するメリット・デメリット

一般事業会社で働くメリット

個人経営の税理士事務所などと比べて雇用や給与が安定する点です。職場にもよりますが、有休が取得しやすい、賞与があるなどのメリットもあります。また実績のある税理士であればCFOや課長職といった役職に就ける可能性があります。

上場準備企業を選択すれば、上場した場合に大幅な年収アップに期待できるでしょう。

デメリット

一般事業会社では外部の税理士事務所・会計事務所を顧問としているケースがほとんどなので税理士としての実務能力を磨ける機会は少ないことです。

社内で役職を目指すキャリアを選択するのならよいのですが、将来的に税理士としての経験を活かした働き方をしたい、開業したいといった場合は思うような経験が得られないリスクがあります。

またベンチャー企業に転職する場合は合併:買収などにより経営体制が変動する、年収が変動するなど常にリスクと隣り合わせであることは理解しておく必要があります。

金融機関

銀行・信用金庫・証券会社・リース会社・ファンド会社などの金融機関も税理士の経験を活かせる転職先のひとつです。

業務内容は大きく分けると経理担当(バックオフィス)とクライアント向けの税務アドバイザリー担当の2つがあります。バックオフィス業務は金融機関自身の経理や税務、不動産投資信託の決算・開示業務など、税務アドバイザリー業務は事業継承や組織再編コンサルなどがあります。

金融機関への転職で有利な経験

税理士事務所や税理士法人での税務業務経験に加え、資産税やM&A、事業継承といった特殊業務の経験があると有利にはたらきます。法人向けに税務コンサルをした経験も評価の対象です。

金融機関の年収相場

年収相場は600万~1000万円です。もともとの給与水準が高めなので、まだ経験の少ない20代でも転職直後から600万以上得られる場合があります。

金融機関へ転職するメリット・デメリット

金融機関では複雑な税務処理をする機会が多く、税理士としての経験や知識を活かせる場面が多くあります。給与水準が高いのもメリットです。デメリットとしては金融機関の業務は特殊性が大きいため、一度金融機関へ転職すると再度の転職時にほかの転職先を選ぶことが難しくなる点です。

コンサルティングファーム

税理士の知見を活かしてコンサルティングファームに転職する人もいます。税理士の転職先の候補となるのは税務・会計系、事業再生系のファームや経営コンサルを行うファームです。

コンサルティングファームへの転職で有利な経験

法人向けコンサルを行う場合は事業再生やIPO支援、M&A、組織再編などの経験があると有利です。個人向けでは相続税や事業継承などの知識を活かしやすいでしょう。

コンサルティングファームの年収相場

年収相場は600万~1000万円です。税務の実務に加えて論理的な思考や多様な経験がものをいう仕事なので、税務のみを行う一般的な税理士と比べると年収は高い傾向にあります。ただし成果報酬を採用しているケースが多いので高年収を得るには成果を出し続けることが必要です。

コンサルティングファームへ転職するメリット・デメリット

経営側の経験ができ、やりがいが大きいのがメリットです。年収も上がるケースが多く、大手コンサルティングファームや投資銀行へのキャリアパスにもなります。

デメリットは残業や休日出勤が多く、ハードワークになりやすい点です。ケース面接がよく行われるなど面接難易度も高いため転職は簡単ではありません。

目的・状況別で選ぶ税理士におすすめの転職先とは?

ここからは税理士の目的や状況別にどの転職先がおすすめなのかを解説します。

給与アップを目指したいなら

給与アップが叶いやすい転職先は、Big4・大手税理士法人やコンサルティングファーム、金融機関です。いずれも給与水準が高いため年収が上がる可能性があります。

すでにこれらの職場で働いている方は専門性を磨きつつ今より規模が大きな職場への転職を目指すのが方法です。また税理士法人からコンサルティングファームや金融機関のように、異なる業界への転職でも給与が上がる可能性があります。

安定やワークライフバランスを求めるなら

安定した収入やワークライフバランスを求めるなら一般事業会社への転職がおすすめです。経理や財務部の従業員は固定賃金なので業績によって収入が変動することもなく、労務管理体制が整っているケースが多いため過大な残業や休日出勤などは避けやすい傾向にあります。

とはいえ経理課の繁忙期にあたる決算時期の残業は必至なので毎日定時で帰れるというわけではありません。この点は理解しておきましょう。

スケールの大きい業務に関わりたいなら

スケールの大きい業務を経験できる転職先はBig4や大手税理士法人、大手コンサルティングファームです。クライアントの規模が大きく大型案件や国際案件を扱うケースが多くあります。

業務範囲を拡大させたいなら

業務範囲を拡大させたい場合の転職先は税理士事務所や会計事務所がおすすめです。幅広い規模のクライアントや業種、個人向け案件にも力を入れているので多彩な経験ができます。

将来の独立開業に役立つ経験をしたい

税理士として将来的に開業を目指しているのなら税理士事務所・会計事務所で幅広い業務を経験しておくことが大切です。そのうえで、ビジネスサイドの経験ができるという点ではコンサルティングファームも独立開業に役立つでしょう。

科目合格者、未受験者の場合

科目合格者や税理士試験未受験者で引き続き税理士資格取得を目指すなら、会計事務所・税理士事務所・税理士法人への転職が適しています。受験への理解があり勉強を続けやすく、まわりに税理士が多数いるため受験と実務両方のアドバイスを受けることができます。

一般事業会社や金融機関、コンサルティングファームは科目合格者や受験生であることは特に評価の対象になりにくいため、採用されるには相応の経験が必要となります。ただし、非上場企業やベンチャー企業では科目合格者歓迎の求人がちらほらと見られます。

受験に対する優遇は受けられませんが、今後も一般事業会社でのキャリアを選択するのであれば検討の余地があります。

年代別|税理士がフィットしやすい転職先と注意点

最後に、税理士の年代別にフィットしやすい転職先を挙げていきます。注意点もあるのであわせて確認しましょう。

20代の税理士の場合

20代はまだ税理士試験に合格していない人も多く、経験値も少ないため、税理士事務所・会計事務所で経験を積みながら合格を目指すのが王道のパターンです。受験への理解があり勉強を続けやすく、税理士としての基礎的な業務経験を積むことができます。

税理士の高齢化と受験者数の減少により若手人材は需要が高いため、科目合格や科目合格なしでも採用される可能性はかなり高いでしょう。

Big4や大手税理士法人はポテンシャル採用も行っているため、転職するには20代がもっとも有利な年代です。語学力が求められるため採用のハードルは高めですが経験値が低くても採用される可能性があります。

また一般事業会社でも基本的に若手人材を求める傾向が強いため、一般事業会社での長期的なキャリアを想定しているなら検討の余地があります。組織風土との相性や人柄を重視する会社も多いため実務経験が少なくても採用される可能性があるでしょう。

ただし、税理士としての経験を積むために一般事業会社へ転職しても思うような経験は積めないため、キャリアの方向性はよく検討しておきましょう。

30代の税理士なら

30代は税理士としての実務経験を積み即戦力に期待できるためどの転職先も選択可能ですが、逆にいえばスキルや経験がマッチしないと難しくなります。特に30代後半になるとマネジメントクラスの募集が多いので、部下の育成などに関わってきた経験が必要となります。

税理士事務所や会計事務所では実務経験の内容が重視されるので、応募先の事務所で扱う領域や業界と自身の経験がマッチしているのかが重要です。Big4や大手税理士法人への転職は大規模なクライアントの案件を扱った経験が求められるでしょう。

コンサルティングファームではクライアントとの折衝経験があれば評価される可能性があります。

一般事業会社や金融機関は組織風土に合った人材を求めるため若手を希望するケースが多く、転職するなら30代前半までがチャンスです。一度でも一般事業会社などの組織で勤務した経験があるほうが有利にはたらくでしょう。

40代の税理士なら

40代にフィットしやすい転職先は税理士事務所・会計事務所、税理士法人です。その中でも経営や育成に関わるポジションでの採用可能性が高いため、マネジメント経験が必須です。

一般事業会社や金融機関、コンサルティングファームへの転職は40代になると難しいのが実情です。一般事業会社や金融機関では若手層の採用傾向が強いため、国際税務や移転価格税制など専門性の高い経験がない限りは採用される可能性はかなり低いと考えてよいでしょう。

コンサルティングファームも40代でコンサル未経験だと転職はかなり難しくなります。非常に多忙なので体力面の懸念もあり、40代の採用は敬遠されるでしょう。

まとめ

税理士の転職先は「税理士事務所・会計事務所」「税理士法人」「一般事業会社」「金融機関」「コンサルティングファーム」の5つに分類されます。

それぞれに求められる経験や転職するメリット・デメリットがあるため、どのようなキャリアを築きたいのかをよく考えたうえで、そのキャリアに必要な経験を積める転職先を選びましょう。

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ハイスタ税理士

一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。

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