公認会計士の転職
更新日:2023.04.12
公開日:2022.05.26
30代をひとつの節目として転職を検討する方は多く、公認会計士も例外ではありません。
ただし公認会計士は専門性・特殊性が高い職種なので、ほかの職種とは異なる点が多くあります。一般に難しいと言われる30代以降のキャリアチェンジであっても、公認会計士であれば十分にチャンスがある場合が多いため、公認会計士に特有の転職事情を知っておく必要性が高いでしょう。
また30代だからこそ求められるスキル・経験もありますので、転職を成功させるためにもこれまでのキャリアをじっくりと振り返ることが大切です。
この記事では30代公認会計士の転職状況や転職先の選択肢、転職でチェックされるポイントなどについて解説します。あわせて、30代で公認会計士試験の合格を目指す方の転職に関しても見ていきましょう。
目次
まずは30代公認会計士が転職市場でどのくらい求められているのかを確認しましょう。
公認会計士市場における30代のニーズは非常に高いです。求人も多いため好条件で興味のある求人を見つけられる可能性が高いでしょう。特に30代前半はもっとも人気があるといってもいい年代です。30代後半でもスキル次第では幅広い業種でニーズがあります。
公認会計士市場は、リーマンショックや公認会計士試験の見直しなどの影響から、2012年頃までは買い手傾向でした。その後は好景気や少子高齢化による人材不足も影響して売り手市場が続いています。中でも即戦力となる30代のニーズが高く、転職しやすい年代となっています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、転職市場全体では有効求人倍率が下がるなどの悪化がありました。しかし公認会計士に関しては、コロナ禍であっても中途採用に積極的な姿勢を示している監査法人や企業が多く、依然として求人は豊富にある状況です。
独占業務である監査は景気にかかわらず必要であること、事業譲渡や助成金申請支援など不景気だからこそ生じる業務があることなども影響しているでしょう。
日経新聞の報道によれば、BIG4監査法人の2020年度決算では4法人とも業務収入が前期を上回ったようです。新型コロナウイルスの影響で監査工数が増え、監査単価が引き上げられたことなどが影響したと見られています。こうした状況からも、コロナ禍でも経験豊富な30代の公認会計士はニーズが高いと考えられます。
参考:日経新聞|4大監査法人の前期、業務収入6%増 4年ぶり高水準
ただし新型コロナウイルス感染拡大が景気に与える影響はリーマンショック以上とも言われており、今後は公認会計士市場も悪化する懸念があります。その意味では、まだ転職しやすい今の段階で将来のキャリアを見つめ直すことが重要になるでしょう。
転職を考え始めるタイミングは人それぞれですが、公認会計士の場合は以下の理由から30代で転職を考える人が多い傾向にあります。
30代になったのをきっかけに将来のキャリアを見つめ直す機会にしようと考える方は多くいます。特に監査法人一筋でやってきた方は将来のキャリア形成について考える節目になるようです。
たとえば将来的に一般企業のCFOとして活躍したい、独立開業したいといった場合には監査法人の経験だけでは難しい場合がありますので、コンサルティングファームや会計事務所等で経営に近いポジションの経験を積むという選択肢が視野に入ります。
キャリアチェンジをする場合は年齢も関係しますので、30代のうちに別の経験を積んでおきたい、だから転職しようと考えるわけです。
多くの公認会計士が勤務する監査法人は、近年こそ就業環境の改善が進んでいますが、基本的に激務なのでワークライフバランスを保つのが難しい職場です。30代になると結婚や出産などライフスタイルにも変化が生じるため、「そろそろ私生活のことも考慮したい」と、この時期に転職を考え始める方が多くなります。
公認会計士はほかの職種と比べると年収が高い職種ですが、勤務先によって大きく差が出ることも事実です。特にBIG4監査法人に勤めている場合は30代でもマネージャーに昇級し、1000万円クラスになっている方もいます。
そのため同世代の公認会計士の年収を見聞きした場合などには、自分ももっと年収を上げたいと考え始めるようになります。
30代は公認会計士が転職するにはよい時期だといえます。その理由を解説します。
公認会計士試験に合格する方の平均は大体26歳くらいなので、そこから就職して5年ほど経つと多くの方が30代に突入しています。就職してから5年というのは転職市場での価値がもっとも高まる時期です。
つまり、30代の公認会計士は非常に価値の高い人材として転職活動に臨める年代になります。選択の幅が広いため、納得できる転職につながりやすいでしょう。
新卒で入所した監査法人でずっと勤めてきた方の場合、30代になるとインチャージ経験を経てマネージャーになっている方も多いでしょう。この頃になると監査経験も10年近くになりますので、転職市場で評価される経験値としては申し分ないと判断できるレベルです。
豊富な経験を活かして新たなキャリアにチャレンジできるよいタイミングだといえます。
近年は企業会計のグローバル化が進み、M&Aも増えるなどして経営が複雑化してきています。財務やコーポレートファイナンスの高度な知識を持ち、十分なキャリアを積んだ30代の公認会計士はニーズが高いため、高年収を提示されるケースが少なくありません。
ただし大手監査法人から転職する場合、転職先にもよりますが、年収は据え置きかダウンということもあり得ます。もともとの年収相場が高いからですが、年収アップを目的とした転職であれば、現在の年収と希望する転職先の年収相場を確認することをおすすめします。
20代ががむしゃらに目の前の仕事に取り組む年代であるのに対し、30代になると今の職場での立ち位置や将来性、自分はどの専門分野に興味・適性があるのかといった判断がある程度できるようになります。
明確なキャリアプランをもとに転職活動を進められるため、志望動機の作成や面接でも迷いのない説得力のある言葉でアピールできるでしょう。
30代の公認会計士は市場価値が高い一方で、40代になると求人数が減り、選択肢が狭くなってきます。そうなると辞めたくても選択肢がなくて辞められないという状況に陥ってしまうため、市場価値が高いうちに転職するか、少なくとも今後のキャリアについてよく考えておく必要があります。
公認会計士が30代で転職する場合、どのような選択肢があるのでしょうか?
監査法人への転職としては、大手監査法人から中小監査法人、またはその逆というパターンもあります。監査業務をするのは変わりませんが、監査の手法や就業環境が全く違うため新たな気持ちで監査に取り組める可能性があります。
もちろん一般企業やコンサルティングファームなどから監査法人へ転職するパターンも考えられます。監査法人から別の業種へ転職したけれど、やはり自分には監査法人が合うと考えて戻る公認会計士は少なくありません。
なお、30代で公認会計士試験に合格した方の場合、公認会計士として登録するには2年以上の実務経験を積む必要があります。ほとんどの方が監査法人で経験を積むことになるため、このケースであれば監査法人に転職する必要性は高いでしょう。
監査法人以外での勤務でも実務経験の要件を満たせる場合があります。たとえば資本金5億円以上の企業で経理職として働き、財務分析や内部監査に従事した場合などが考えられます。ただし実務経験と認められる業務が限定的で注意点も多いため、事前によく確認しておく必要があります。
監査法人でのキャリアは基本的に入社した順です。一般企業では年齢が考慮される場合がありますが、監査法人ではそのような風潮がありません。30代から監査法人のキャリアをスタートさせた場合、出世にはあまり期待できないでしょう。
もちろん監査法人での出世に興味がないのなら問題ありません。ただし自分よりも年下の人が上司になり指示を受けて業務にあたるケースは当たり前にあるため、そのようなことは嫌だという方は向いていないでしょう。
一般企業の経理や財務部門、監査室などに転職して経理や内部監査などを行う方法もあります。組織内公認会計士のニーズは増えており、ワークライフバランスを保ちやすいなどの理由から人気が高い転職先です。
またベンチャーやスタートアップなどIPOを目指す企業でも公認会計士のニーズが高く、資金調達やM&AのデューデリジェンスなどIPO準備のための業務を行える人を求めています。CFOとして公認会計士を置く場合も珍しくないため、経営に携われるという意味でやりがいは大きいでしょう。
コンサルタントとしてクライアントの課題を解決する業務に興味があるのなら、コンサルティングファームも選択肢に入ります。公認会計士が転職する際のコンサルとは一般にFASを指し、BIG4系FASや国内の独立系FASといった選択肢があります。
財務デューデリジェンスやバリエーション業務の経験を活かせること、監査と比べてやりがいを感じやすいことなどから人気が高い転職先です。FASでは英語力がある方のニーズも高いため、英語力を活かしたいという希望がある方にも向いています。
中小企業の決算業務や税務申告などを行う税理士法人・会計事務所への転職も選択肢のひとつです。税務スキルが身につくため、将来独立して会計事務所を開業したいと考えている方に人気があります。
監査法人で十分な経験を積んだ方であれば、監査+税務のスキルを活かし、将来的には一般企業の管理職に転職できるキャリアも展開できるでしょう。
30代の公認会計士が転職活動をする際、採用側はどのような点をチェックしているのでしょうか?
公認会計士は勤務先の業種にかかわらずチームで働く場合が多いため、チームにフィットする人材かどうかが重要なポイントとなります。チームで監査にあたる監査法人はもちろん、大手企業では組織内のチームワークを重視しますし、コンサルティングファームでもほかの職種とチームを組んで業務に取り組むのが通例です。
ただし勤務先によってはプロジェクトによってチームが変わるため、その場合はピンポイントでチームにフィットするかどうかを転職の段階で判断することは難しくなります。そのためほかのメンバーや上司の価値観、考え方を読み取れる観察眼があるかどうかといった点が見られるでしょう。
公認会計士として働くと、対象企業の担当から必要な情報を引き出すためのヒアリングや交渉を行う場面や、複雑な会計基準を分かりやすく説明する場面などがあります。かなり高い水準でのコミュニケーション能力が求められるため、対人スキルがなければ難しいでしょう。
30代は折衝業務やマネジメント業務を任されるケースも多いため、対人スキルがあるかどうかは必ず見られます。
30代であればマネジメント経験が求められます。監査法人からの転職であればインチャージの経験、一般企業であれば管理職経験やプロジェクトチームのリーダー、管理システムの導入などの業務改善を行った経験などがマネジメント経験として評価されやすいでしょう。
ここからは、30代で公認会計士試験に合格してキャリアチェンジをしたい場合について解説します。
まずは30代で公認会計士試験に合格する人がどれくらいの割合でいるのかを確認しましょう。
令和2年の公認会計士試験における30代の合格者は、
でした。あわせると受験者全体の約12.9%の方が30代で合格していることが分かります。
20代の合格者が約82.2%なので、20代に比べると圧倒的に少ないことは事実です。しかし30代は仕事をしながら勉強する方も多く、勉強環境や時間の確保という点で20代よりも不利であることを考慮すれば、30代で合格できる可能性は決して低いとはいえません。
一般に転職では30代以降のキャリアチェンジは難しいと言われます。しかし公認会計士は独占業務を持つ国家資格であること、景気に左右されにくい職種であることなどを踏まえると30代でも遅すぎることはありません。
30代前半であればBIG4監査法人でのキャリアをスタートさせることもできます。前職の経験を活かせる場合には30代後半でもチャンスがあるでしょう。もちろん一般企業の経理・財務部、コンサルティングファーム等のキャリアも考えられます。
公認会計士として転職するメリットはさまざまな業種・規模の事業に触れて多くの学びを得られる点、クライアント企業に貢献できてやりがいを感じられる点などがあります。30代以降のキャリアの選択肢が広がる、年収を上げられることなどもメリットでしょう。
一方で転職先によっては激務となる場合があり、ワークライフバランスを保ちにくい可能性があるのは、人によってデメリットとなるかもしれません。
30代から公認会計士になることのもっとも大きな強みは、前職を活かした転職ができる点にあります。社会人としてのビジネススキルはもちろんですが、前職の経験+公認会計士としての知見が加われば、公認会計士としてしか働いたことがない人よりも活躍の場が広がります。
たとえば公認会計士の転職では対人スキルが高い人が求められているため、前職で法人営業の経験がある方などはアピールできます。ほかにもマーケティングや新規事業開発といった業務で成果を出した経験がある場合なども、評価を得られる可能性が高いでしょう。
30代の公認会計士にはさまざまなキャリアの選択があるため、転職の方向性が定まらずに立ち止まってしまう方が多くいます。そもそも転職すべきかどうかの判断に悩む場合もあるでしょう。こうした場合は転職エージェントに相談することをおすすめします。
特に公認会計士の転職に特化した転職エージェントであれば、リアルタイムでの転職市場の状況を判断しながら、これまでのキャリアをどのように活かせるのか的確なアドバイスが受けられます。
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edit_note この記事を書いた人
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