税理士の転職
更新日:2024.12.13
公開日:2024.03.10
近年の税理士試験受験者・合格者の減少や税理士法人の増加などを背景に、税理士業界では人手不足が続いています。
税理士の高齢化も進んでいるため、20代・30代の税理士を求めている職場が多数あります。とくに30代は即戦力になり成長性にも期待できるとあって、かなりの売り手市場です。
ただし、30代といっても30代前半と後半では需要の高さや転職の難易度、フィットしやすい転職先が異なります。この記事では30代税理士の転職事情に触れながら、キャリア・転職先の選択肢について解説します。
税理士におすすめの転職エージェント3社
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目次
最初に、30代税理士のニーズや転職・キャリアの考え方について解説します。
税理士業界は高齢化が進んでいるため30代は貴重な人材です。30代の税理士はキャリアをスタートさせてから数年~10年ほど経っている人が多く、実務経験があるため即戦力に期待できます。
また業界内ではまだ若手に位置づけられる年齢なので、伸びしろや成長性といった点に期待できる部分もあります。30代税理士は業界内でもっともニーズが高い年代なのです。
20代の頃は税理士資格を取得してまだ間もないか、資格取得を目指している段階であるなどで、キャリアの方向性が定まっていない方も多いでしょう。
一方、30代はある程度の実務経験を積む中で自身の得意分野や専門性を高めたい分野が見えており、私生活も落ち着く頃です。キャリアの方向性が定まっているため、キャリアプランに沿った転職先を選びやすい時期だといえます。
30代税理士は多くの職場から引き合いがあるため、転職自体はそれほど難しくないでしょう。しかし40代になると転職難易度が一気に上がるため、30代のうちが転職のチャンスです。
40代の税理士は一般的な税務会計業務はもちろん、それ以外にもマネジメントスキルやプラスαの知識・経験が求められます。採用ハードルがぐっと上がるため、人手不足の税理士といえども転職は容易ではありません。
新たな業務経験を積みたい場合も30代のうちに叶えておきたいところです。
同じ30代でも30代前半と後半では転職市場におけるニーズの高さが異なります。30代前半は20代に近いニーズがあり、30代後半は40代に近いニーズがあると考えればよいでしょう。
もっとも、前半と後半といっても明確な線引きがあるわけではありません。前半でも30歳であれば若手扱いされるケースが多いですが、34歳だとそろそろマネジメント経験が必要になってくるなどの違いがあります。
ここからは30代を前半と後半にわけて、転職事情を解説します。まずは30代前半です。
30代前半の税理士はまだまだ若手として扱われるため、転職のハードルは高くありません。ただし30代後半になると転職に条件がつくケースが増えるため、それほど時間があるわけでもありません。
税理士は働きながら資格取得する人が多い職種なので、30代になってから税理士としてのキャリアをスタートさせるケースも少なくありません。
そのため30代前半で実務経験者は貴重な存在であり、転職先の選択肢は豊富にあります。希望に合った転職先を選びやすいでしょう。
30代前半は有資格者に限らず、科目合格者のニーズも高いです。3科目以上の合格が有利ではありますが、1~2科目でも歓迎する法人・事務所も存在します。
ただし、20代とは異なり、まったくの未経験だと転職が難しくなります。会計事務所での勤務経験や、一般企業での経理経験などが必要です。
大手企業への転職を希望するなら30代前半までに実現しておきましょう。
実務経験がある人でも同様です。一般企業は組織とのフィット感を大事にするため、若手人材を好む傾向があります。
大手税理士法人への転職も年齢が上がるごとに求められる経験値が上がります。できるだけはやい段階で動き出すことが大切です。
キャリアチェンジの場合ははやければはやいほど有利にはたらきます。30代であれば前半のうちに叶えておきたいところです。30代後半になるとキャリアチェンジは難しく、これまでの経験を活かせる転職先を選ぶ必要があります。
あああ
税理士のキャリアのスタート時期を考えると、30代後半とはいえ税理士経験はそれほど長くないという方もいるでしょう。しかし年齢の面からいえば30代後半は前半に比べて求められる要素が増え、転職の難易度も上がります。
30代後半になっても税理士のニーズは高いです。
しかし未経験での採用は難しくなり、年齢に見合った経験が必要とされます。ご自身の経験と応募先が求める経験・スキルがマッチするのかをよく見極めて応募しましょう。
30代後半になると一般的な税務実務のほかにマネジメント経験を求める求人が増えてきます。近年は税理士事務所等でもチーム制で業務にあたるケースが多くあります。
そのため複数名の部下がいた、大きなチームのマネジメントを経験したといった場合は有利にはたらくでしょう。
科目合格者については、30代後半になると資格試験の勉強と経験のバランスを意識して転職先を選ぶ必要があります。
20代や30代前半であればまだ、試験に合格しやすい環境を優先するのもありかもしれません。
しかし30代後半は試験に合格しても必要な経験がないと今後のキャリアの選択肢が狭まってしまいます。少なくとも、試験を優先したために業務経験を積めず、そのまま40代になることは避けたいものです。
したがって、30代後半では試験勉強を続けることが可能で、かつ業務経験を積める転職先を選ぶ必要があります。
具体的には税理士資格を必須としない一般企業やコンサルティングファームよりも、会計事務所や税理士事務所のほうが適していると考えられます。
30代税理士が転職できる転職先は具体的にどこなのでしょうか。ここからは30代税理士の転職先の選択肢を紹介します。
会計事務所や税理士事務所はメジャーな転職先のひとつです。税務申告や決算支援、巡回監査など税理士としての基本的な業務をすべて経験できるため、一度は経験しておくのが望ましくあります。
採用条件として、30代は主担当を任せることを想定しているため、会計事務所経験が3年以上は求められるケースが多いでしょう。ただし人手不足が深刻なので30代前半であれば未経験でも採用される可能性があります。
その場合は記帳や申告など基本的な業務からスタートします。30代後半になると会計事務所経験に加えてマネジメント経験を求められるケースも多いです。
なお、会計事務所と税理士事務所の違いは単に呼称の違いであって、業務内容に変わりはありません。
税理士法と照らせば正式には税理士事務所ですが、税務以外に会計処理や会計コンサルなどを行う場合は会計事務所とする事務所も多いようです。
税理士法人も会計事務所・税理士事務所と並んでメジャーな転職先です。ベンチャー企業支援や若年層の雇用創出を背景に近年は税理士法人が増えているため、税理士が転職するチャンスも広がっています。
中規模の税理士法人では中小企業からベンチャー、個人まで幅広い層のクライアントがいます。会計事務所や税理士事務所と業務内容は大きく変わりません。
一方、大規模の税理士法人になるとクライアント規模も大きくなり、連結納税やM&Aなど特定分野での経験をもつ人が優遇される傾向が見られます。またクライアントにグローバル企業が多いため英語力があるのかもポイントです。
なお、税理士法人と税理士事務所の違いは、組織形態の違いです。税理士が個人事業主として経営しているのが税理士事務所、2人以上の税理士が所属して法人化した組織が税理士法人です。
税理士の転職先としては多くありませんが、一般企業の経理へ転職するケースもあります。税理士資格を直接活かすことはできないものの、税理士として得た経験や知識を活かせる可能性があるでしょう。
一般企業は転職難易度が高めです。組織になじめるかどうかを重視する傾向が強いため、年齢は30代前半までが目安になるでしょう。
また連結納税やM&A・組織再編にともなう税務などの専門性の高い税務経験が求められるケースも多く、国際税務や移転価格などBIG4系の出身でないとなかなか難しいスキルを必要とする求人もあります。
逆にいえば、これらの経験が豊富な税理士は30代前半でも後半でも転職できる可能性が高まります。
会計系や資産税系のコンサルティングファームに転職する税理士もいます。少子高齢化や企業倒産などを背景に、一般的な税務業務だけでは生き残れないといった危機感をもつ税理士はコンサルティングファームを選びやすい傾向があります。
会計系ではM&AアドバイザリーやIPO支援、決算早期化業務などのサービスを、資産税系では事業継承や相続税のアドバイザリーサービスを提供します。
コンサルティングファームは即戦力性に加えてマネジメントスキル、コミュニケーションスキルが必要となり、総じて転職難易度が高めです。応募書類や面接対策はもちろんのこと、場合によってはケース面接への対策も必要となります。
銀行や証券会社などの金融機関も、税理士の転職先のひとつです。大きく分けると、金融機関自身の経理ポジションとクライアント向けの税務アドバイザリーポジションがあります。
金融機関は一般企業と同様に若手を好む傾向があるため、30代前半までにチャンスがあるでしょう。加えて相続・事業継承、M&A等の経験があると評価される可能性があります。
30代税理士のキャリアプランごとに、希望を叶えられる転職先はどこなのかを解説します。
30代になるとクライアントの規模を上げて業務範囲を広げたいとの理由で転職する人が増えてきます。クライアントの規模が大きいのはやはり大手税理士法人です。
また税理士業務の枠は超えますが、大手のコンサルティングファームでも規模感の大きい案件を扱える場合があります。
いずれも採用基準が高いため30代前半でも後半でも転職は簡単ではありません。求められる経験があることに加え、学歴や論理的思考力といった点も見られます。
一般的な税務を経験したうえで、特定分野の専門性を高めたいと考える税理士もいるでしょう。
その場合はやはり、自身が希望する分野を得意とする税理士事務所への転職が向いています。資産税や相続、国際税務など特定分野に特化した事務所があるため、そうした事務所へ転職することで専門性を高めて自身の強みを作れるでしょう。
注意点として、特定分野に強い税理士事務所に転職すると、その後のキャリアの選択肢は限定されます。したがって、その分野の将来性やニーズをよく調査のうえ、どの道に進むのかを慎重に検討することが大切です。
グローバルに活躍したい、英語力を活かしたいなどの希望があるのなら、国際税務を専門に扱う会計事務所や税理士事務所がおすすめです。
ほかにはグローバル展開する一般事業会社や外資系企業でも、英語力やIFRSの知識が必要とされるためグローバル志向の方には向いています。
キャリアチェンジしたい、税理士の枠を超えて活躍したいといった場合はコンサルティングファームや一般企業がフィットする可能性があります。
どちらも転職は簡単ではありませんが、応募先が求める経験があれば採用される可能性はゼロではありません。
独立開業を目指すなら法人税実務をマスターすること、ほかの税理士にはない強みを持つことが重要です。営業スキルや経営スキルも備えておく必要があるでしょう。
転職先としては一般的な税理士事務所や、特化型の税理士事務所が候補です。自分がどんな方向性の事務所を開業したいのかをよく整理したうえで転職先を選びましょう。
30代になると結婚や出産で家族が増えるなどして、キャリア選択において私生活を無視できなくなってきます。
そのため仕事内容以外に、ワークライフバランスや年収が気になる人も多いでしょう。また年齢的にあまり転職リスクを取れなくなってくるため、職場の人間関係なども気になるところです。
長時間労働の抑制や休暇の取得などワークライフバランスを改善したいと考える場合は、特定分野を扱う税理士事務所がおすすめです。
特殊性が強く報酬単価が高いため効率よく稼ぎやすく、残業が少ない事務所が多いためです。
ほかには一般的な税理士事務所でもワークライフバランスを維持しやすいケースが増えているため、実態をよく確認のうえ選べば改善できる可能性があります。
一般企業の経理も繁忙期の予測が立てやすく、労務管理体制が整っているため、深夜残業や休日出勤などはほとんどありません。
ワークライフバランスを重視する場合の注意点として、BIG4からの転職だと年収が下がってしまうケースが多いので、家族のことを考えて身動きが取れない場合があります。
BIG4での激務を今後も続けられるのかという長期的な視点も必要となるので、ワークライフバランスが気になるのなら年収ダウンもある程度受け入れる覚悟をもちましょう。
少しでも年収ダウンの幅を狭くしてワークライフバランスの改善を目指すなら転職エージェントに相談して、希望に近い求人を紹介してもらうことをおすすめします。
年収を上げたい場合、単純に年収水準でいうとBIG4系の税理士法人やコンサルティングファームが高めです。しかし採用基準が高いため転職自体ができるのかとの問題があります。
そうなると、利益率が高い専門特化型(資産税・国際税務・SPC等)の会計事務所・税理士事務所へ転職することも選択肢に入るでしょう。中堅規模の会計事務所や一般企業のマネージャークラスポジションでも年収が上がる可能性があります。
人間関係の問題についてはどの転職先でも発生する可能性があるため一概にはいえません。ただ、規模が小さいほど人間関係が濃くなる=逃げ場がなくなる傾向があるため、スタッフが少人数の税理士事務所などは避けたほうが無難かもしれません。
職場の規模が大きければ、ある程度の距離感を保って同僚や上司と接することができるため、人間関係の悩みを軽減できる可能性があります。
また規模が大きい場合は採用活動に資金を投入する余裕があるため転職エージェントを使うケースが多いです。エージェント経由で職場の内情・雰囲気を確認できるのはメリットでしょう。
最後に、30代税理士が転職活動を行う際に意識するべきポイントを解説します。
年齢を重ねると軌道修正がききにくくなるため、40代に向けてキャリアプランに沿った転職先を選ぶことが大切です。
すでにキャリアの方向性が定まっている場合でも、改めて整理値することをおすすめします。それにより転職の軸にブレがなくなり、応募の際にも一貫性のあるアピールができます。
30代の税理士はニーズが高いため転職活動を有利に展開できますが、40代を控えていることを考えると時間的な余裕はありません。
また大手税理士法人や一般企業など30代前半のうちでないと難しい転職先もあり、その意味でもそれほどゆっくりしている時間はないでしょう。
「いつか転職を」という考えではなく、転職するなら積極的に行動することが大切です。希望のキャリアから逆算すれば、できるだけはやいうちに転職する必要性が高いことが分かるでしょう。
税理士のキャリアは多様化しており、ニーズが高い30代ともなれば選択肢が豊富にあります。
選択肢が多い分、どの転職先が自身の希望や経験とマッチするのかを見極めるのが難しくなっているため、転職エージェントのキャリア相談を利用しましょう。
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30代税理士はもっともニーズが高い年代です。税理士事務所や税理士法人、一般企業など転職先の選択肢は多数あります。
しかし年齢を重ねるごとに年齢に見合った経験が必要とされ、転職難易度も上がってきます。ニーズの高い30代とはいえのんびり構えてはいられないため、転職を考える場合ははやめに動き出しましょう。
edit_note この記事を書いた人
一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。
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