税理士の転職先としてBIG4税理士法人を選ぶメリットと転職成功のポイント

税理士の転職

更新日:2024.03.11

公開日:

税理士であれば一度はBIG4税理士法人で働いてみたいと憧れを抱くのではないでしょうか。BIG4税理士法人とは、海外の四大会計事務所のメンバーファームである以下の法人を指します。

  • EY税理士法人
  • KPMG税理士法人
  • デロイト トーマツ税理士法人
  • PwC税理士法人

いずれも何百人もの従業員を抱える規模の大きな税理士法人であり、一般的な税理士法人や会計事務所とはクライアントの種類や業務内容、仕事の進め方などさまざまな違いがあります。

BIG4税理士法人ならではの業務経験を積めるため、税理士としての市場価値が高まります。

この記事ではBIG4税理士法人への転職を希望する税理士に向けて、BIG4税理士法人の特徴や転職の難易度、転職メリットなどについて解説します。転職を成功させやすい人の特徴や転職後のキャリアパスなども確認しましょう。

目次

BIG4税理士法人の転職事情

まずは、BIG4税理士法人の採用基準や応募可能な年齢、転職難易度について解説します。

転職難易度は高いが若干ハードルが下がってきている

BIG4税理士法人への転職難易度は高めです。実務経験に加えて英語力が必要ですし、体力的にも精神的にも激務に耐えられるタフな人材が求められます。税理士からの人気が高い転職先なので優秀なライバルたちにも勝たなければなりません

しかし、昨今は人手不足の影響もあり、税理士の転職市場全体で売り手傾向が続いています。BIG4税理士法人についても採用のハードルは若干下がってきており、チャンスは広がっています。

科目合格者についても、以前は3科目必須でしたが、現在は2科目でも採用されるケースがあります。もっとも、その場合は突出した英語力がある、あるいは20代でポテンシャルに期待できるといった条件がつきます。

年齢は30代前半くらいまでが目安

BIG4税理士法人へ転職できる可能性が高い年齢は30代前半までが目安です。競合大手税理士法人からの転職など、求められる分野での経験値が高い場合は30代後半以降の人にもチャンスがあります。

科目合格者については30代だと少しハードルが上がり、合格科目数も3科目以上は必要になるでしょう。できれば法人税法の合格が含まれているのが理想です。

一方、20代なかばくらいまでの人材は希少性が高いため、合格科目数が2科目や実務未経験でも採用される可能性があります。

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売り手市場の今はBIG4税理士法人へ転職するチャンス

税理士業界では高齢化が進み、税理士試験の受験者・合格者が減少していることなどから、人手不足が深刻です。

税理士を求める法人・事務所では20代・30代の若手を中心に人材の確保に苦戦するケースが散見されています。

人気が高いBIG4税理士法人も例外ではなく、売り手側有利の状況が続いています。採用基準が若干下がっていることも考えると、BIG4税理士法人にチャレンジするにはよい時期といえるでしょう。

BIG4税理士法人の特徴

BIG4税理士法人は一般的な会計事務所などとは異なる特徴があります。

クライアントの種類

BIG4税理士法人のクライアントはグローバルに展開する大企業や上場企業、外資系企業、メガバンクなどがメインです。

外資系企業を除くと基本的に規模が大きいクライアントが取引先となります。外資系企業については、グループは大規模でも日本法人の規模が小さい場合があるため、企業の規模感は幅広いです。

サービス内容

BIG4税理士法人で提供するサービスは以下のような内容です。

  • 税務コンプライアンスサービス……税務申告書の作成代行、税務相談、税務代理 など
  • 税務コンサルティング……M&A関連や組織再編、事業継承などに関する税務コンサルティング など
  • 国際税務……タックスヘイブン税制や移転価格、関税・間接税、海外事業支援 など 
  • 非居住者向けの所得税サービス……海外への出向者や日本に赴任中の外国人向け

業務内容

業務内容は税務申告書の作成およびレビュー、税務相談が中心です。一般的な会計事務所のように記帳代行や決算業務などは基本的に行いません。

特徴としては、国際税務や連結納税など専門性の高い業務や高度な論点を扱う場面が多いことでしょう。なぜそのような処理になるのかクライアントから原因の説明を求められるケースが多いため、条文に紐付けた解釈を行う場面もあります。

仕事の進め方

プロジェクトやクライアントごとにチームを組み、ひとりが複数のチームに所属するかたちで仕事を進めます。チーム制なので業務の幅が限定されますが、その分専門性を高めることができます。

採用活動

BIG4税理士法人の採用活動の特徴は、業務部門別の採用を行っている点です。

一般的な採用活動では、人事が一括で採用活動を行い、その後に適性がある部署へ人材を配置します。しかしBIG4税理士法人では専門性を高めるために部門が細分化しており、部門ごとに必要な人材を確保します。

転職した後はその部門で業務に従事することになり、ほかの業務を担当することは基本的にありません。なお、採用活動は業務閑散期にあたる6月~10月に実施され、入社時期は9月~12月頃になります。

税理士が転職先としてBIG4税理士法人を選ぶメリット

BIG4税理士法人は転職先として非常に人気があります。人気が集中するのは働くメリットが大きいからです。

BIG4ならではの高度な業務を経験できる

一般的な会計事務所ではあまり扱わない高度業務を経験できるのは大きなメリットです。BIG4税理士法人では、記帳代行等の派生業務はアウトソーシングしているため、高度業務に専念できます。

人材としての市場価値が高まる

BIG4税理士法人での勤務経験があると人材としての市場価値が高まります。

転職するときはBIG4経験があると有利にはたらき、独立の際にもクライアントの信用や安心を得やすいでしょう。実際、BIG4税理士法人出身者が中規模の税理士法人を展開するケースは珍しくありません。

理由として、BIG4税理士法人では高度かつ専門的な業務を行うため実際にスキルレベルが高いのと、単純にBIG4のネームバリューが高いので税理士業界に詳しくない人からも信頼されやすいためです。

またBIG4税理士法人への入所条件として英語力が前提になり、国際税務なども扱うので、グローバル人材としての価値も高まります。

年収水準が高い

年収は職位や残業時間、業績などによって異なります。

  1. スタッフレベルで500万~700万円
  2. シニアスタッフだと700万~800万円
  3. マネージャークラスになると1,000万円、
  4. パートナー1,500万円以上

一般的な会計事務所等に勤務する税理士の年収水準は600万~700万円ほどといわれているため、BIG4税理士法人の年収はかなり高いことが分かります。

福利厚生も充実しており、待遇面では税理士業界の中でもっとも条件がよいでしょう。

その分仕事はハードですし、正確性に加えて効率やスピードも求められますが、それに見合った年収を手にできるのはメリットです。

税理士が転職先としてBIG4税理士法人を選ぶデメリット

BIG4税理士法人への転職を希望する場合は、以下のデメリットも押さえておく必要があります。

税務全般のスキルアップは望めない

BIG4税理士法人では特定分野に関する専門性を深められる一方で、幅広い業務は担当できません。「税務全般のスキルアップを目指す」「横断的に業務に関わり仕事の全体像を俯瞰したい」人には向いていません。

独立開業に必要な業務は経験できない

BIG4税理士法人では、記帳代行や決算業務など一般的な会計事務所で受ける業務は基本的にやりません。

高度業務に専念するためにアウトソーシングしていること、BIG4税理士法人のクライアントは大企業や上場企業などが中心なので決算業務等は自社で完結しているケースが多いことなどが理由です。

また、会計事務所だと中小企業の経営者と顔を合わせて直接話をする機会に恵まれますが、BIG4税理士法人ではマネージャー以上にならない限りは経営者と直接話をする機会もほとんどありません。

税理士が独立開業する場合、どのような方向性の事務所にするのかにもよりますが、記帳代行や決算業務などの基本的な業務は経験しておくのが望ましいでしょう。

BIG4税理士法人の業務は特殊性が強いため、独立開業に必要なスキルを得るのは難しくあります。

忙しい時期が長い

一般的な会計事務所や中小規模の税理士法人では、確定申告時期の2月中旬~3月中旬と、企業の決算時期である4月~5月が繁忙期にあたるのが一般的です。

繁忙期の期間としてはだいたい3ヶ月~4ヶ月になるでしょう。一方、BIG4税理士法人の繁忙期は12月~6月までのおよそ半年と、一般的な会計事務所などよりも長いです。

これはBIG4税理士法人では外資系企業の日本法人案件も多く扱っており、外資系企業の決算は12月決算が多いためです。

もちろんBIG4では日系企業も多く扱っています。日系企業の決算は3月のケースが多く、外資系企業の決算が終わるとすぐに日系企業の決算時期が到来します。そのため一般的な会計事務所や税理士法人の倍くらい忙しい時期が長いのです。

繁忙期の間は帰宅するのもままならず、職場近くの宿泊施設に寝泊まりする人などもいます。1年の半分も繁忙期にあたるのは想像以上にハードなことであり、家族との時間が取れない、年齢が上がるにつれて体力面に不安が出てくる等で離職のきっかけにもなります。

BIG4税理士法人への転職が成功しやすい人の特徴

BIG4税理士法人の転職難易度は高いですが、以下の特徴があれば成功する可能性があります。

英語に苦手意識がなく、グローバルに活躍する意欲が高い人

BIG4税理士法人は世界的会計事務所のメンバーファームであり、国際税制も扱う外資系税理士法人です。そのため英語力があるのはもちろん、国際感覚が豊かな人、グローバルに活躍する意欲が高い人が有利です。

英語力の目安としてはTOEIC700点以上です。会話ができなくても読み書きができるレベルであれば採用される可能性があります。

税理士としての実務経験がある30代前半までの人

税務実務の経験がある30代前半までの人であればチャンスがあります。実務経験年数の目安は30歳前後で3年~5年ほどが目安です。

実務経験の内容については、個人経営の会計事務所等ではなく、競合の大手税理士法人での経験があると有利にはたらきます。

BIG4税理士法人では国際税務やM&A関連など特殊性が強く、クライアント規模がまったく違うと経験を活かせないためです。

特定分野での専門性を高めたい人

幅広い業務経験が積めない一方で、特定分野での専門性は高められます。BIG4税理士法人でしか経験できない専門的な業務も多いため、一度は経験しておいて損はないといえるかもしれません。

今より忙しくなっても問題ない人

BIG4税理士法人への転職では、コンサルティングファームなどからの転職は別として、基本的には今より忙しくなる可能性が高いです。体力面、精神面ともにきつくなる可能性があるため、ご自身のキャパも踏まえて判断する必要があります。

とにかくバリバリ働きたい、忙しいのは大歓迎といった人には適した環境です。

若いうちにハードな環境に身を置き、経験値を一気に上げたいと考える人にも向いているでしょう。

チームでの業務に慣れている人

BIG4税理士法人ではクライアントごと、プロジェクトごとにチームが組まれ、ひとりが複数のチームに所属して業務にあたります。そのためチームでの業務に慣れている人に向いています。

中小規模の会計事務所だとひとり一人がクライアントを受け持ち、自分の裁量で仕事を進めるのが一般的です。チーム制のBIG4税理士法人だとそれは難しく、ほかのメンバーと協力し合いながら業務に取り組む必要があります。

またチーム制だと業務の一部しか経験できないため、その点にも納得できることが必要です。

BIG4税理士法人へ転職した後のキャリアプラン

BIG4税理士法人へ転職した後は、経験を活かし、多様なキャリアを展開できます。

BIG4税理士法人内でキャリアアップする

まずは税理士法人内でキャリアアップする方法があります。最終的には得意領域でスペシャリストとしての道を極めるか、昇進してパートナーを目指す方向の2つがあります。

法人内でのキャリアアップについては、BIG4税理士法人では以下のように段階的な職位があり、経験を積むごとに職位が上がっていきます。

  • アソシエイト
  • シニアアソシエイト
  • マネージャー
  • ディレクター
  • パートナー

※法人によって職位の数や呼称に違いがあります。

職位が上がれば業務内容も変わります。マネージャー以上の職位になると実務に携わることはほぼなく、部下のマネジメントやレビュー、新規クライアントの獲得などを中心に行います。

ディレクター以上になると一般企業でいう役員にあたるため、部門の業績に責任をもつ立場となります。

職位が上がるにつれて年収も上がります。最上位のパートナーになるまでには少なくとも15年程度の経験が必要ですが、中には3,000万円以上稼ぐ人もいますので、目指す価値は十分にあるでしょう。

大企業へ転職する

一般企業は税理士の転職先としてはメジャーとはいえませんが、近年は企業内部に税務部門を設ける大企業が増えており、経理や税務部門で税理士のニーズがあります。

大企業は税理士について、BIG4税理士法人での業務経験を求める傾向があります。

それは大企業の場合、すでに日常業務を対応できる従業員がいるので、税理士についてはほかの従業員にはない専門性の高い知識やスキルの保有者を求めているからです。

とくに国際税務や移転価格などの業務経験を求めているケースが多いため、経験によってはフィットする可能性があります。

コンサルティングファームへ転職する

新たな領域にチャレンジしたいと考える人に人気の転職先はコンサルティングファームです。BIG4税理士法人での経験を活かす場合は財務・会計系のコンサルティングファームが適しています。

主な業務には、業務プロセス改善や投資戦略立案、M&Aに関するアドバイスなどがあります。

コンサルティングファームでは論理的思考力やクライアントへのヒアリング力、発信力など税務以外のスキルも必要とされるため、転職難易度は高めです。

しかし、BIG4税理士法人からの転職であれば高度業務の経験やハードワークへの耐性が評価され、転職できる可能性は十分にあるでしょう。

ほかの税理士法人・会計事務所へ転職する

ほかの税理士法人や会計事務所へ転職するケースもあります。BIG4税理士法人から転職する理由としては「激務を避けたい」「業務の幅を広げたい」などが多く見られます。

希望をバランスよく叶えやすいとして人気があるのは、準大手税理士法人や中堅会計事務所です。BIG4からの転職でも年収の下落幅が小さく、経験できる業務範囲が広がることなどが人気の理由です。

またBIG4以外の大手税理士法人も、クライアント規模がやや小さくなる分、業務の幅が広いという点で選ぶ人が多いようです。

ほかの税理士法人や会計事務所ではBIG4税理士法人出身者を歓迎しています。相性の問題などはありますが、基本的には転職は難しくないでしょう。

BIG4税理士法人への転職は税理士に強い転職エージェントの利用が必須

BIG4税理士法人の求人はマネージャークラスまでであれば公開求人もあるため、自己応募も可能です。しかし難易度が高いBIG4税理士法人への転職を成功させるためには、転職エージェントの利用をおすすめします。

BIG4ごとの特徴や採用傾向を教えてもらえる

税理士の転職事情に詳しいエージェントであれば、BIG4税理士法人ごとの特色や得意領域、採用傾向などの情報を提供してくれます。詳細な情報を整理しておくことで、応募先の選定はもちろん、応募時に説得力のあるアピールができます

キャリア相談を通じて、税理士としての現在の市場価値や業界全体の流れなども知ることができます。そもそもBIG4への転職が可能か、転職のタイミングは今でよいのか等の判断にも役立ちます。

非公開求人を紹介してもらえるので公開求人よりも倍率が下がる

自己応募の場合は誰でも応募できることから倍率が高いため、転職エージェントの非公開求人を利用して倍率を下げることが大切です。

非公開求人に応募できるのは転職エージェントを利用した人だけなので、その分応募者数が限定され、倍率は下がります。

BIG4税理士法人への転職は難易度が高いため、少しでも倍率が低い状態で応募することの意味は大きいでしょう。

BIG4へ転職した後のキャリアまで見据えた相談に乗ってもらえる

転職市場の最前線にいるアドバイザーにキャリアの相談ができるのもメリットです。これまでに多くの税理士のキャリアに触れ、転職支援を行ってきたエージェントだからこそ、税理士のキャリアについて的確なアドバイスをもらえるでしょう。

BIG4への転職の実現可能性や、BIG4へ転職した後のキャリアまで相談に乗ってもらえるため、キャリア相談だけでも利用価値があります。

税理士が選ぶおすすめの転職エージェント3社を比較

ハイスタ税理士

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大量の求人を送ってくるだけのエージェントとは違い、ひとりひとりに合った、『活躍できる環境』の提供に重きを置いているため、ミスマッチのない転職をすることができます。

転職が初めての人のためのサポートにも優れているので、初めての転職活動で不安のある方でも効率よく転職活動を進めることができます。完全無料で利用できるので、公認会計士の転職において登録して損はない転職エージェントです。

公式サイト:https://hi-standard.pro/tax/

マイナビ税理士

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マイナビ税理士は、大手マイナビが運営する税理士の転職に特化した転職エージェントです。

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特にミドル・シニア層、マネージャーや幹部候補のサポートを得意としています。経験年数が長くキャリアアップを目指す方は利用を検討しましょう。

まとめ

BIG4税理士法人へ転職することで専門性が高い業務を経験でき、税理士としての市場価値を高められます。

転職難易度は高いですが、税理士業界全体が売り手市場である今、BIG4税理士法人についても採用基準が緩やかになっており、以前より転職のチャンスが広がっています。

転職エージェントへ相談して戦略的に転職活動を進めることで、採用の可能性をさらに高められるでしょう。

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ハイスタ税理士

一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。

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