税理士に将来性はある?将来性が高い税理士の特徴や専門分野を解説

税理士の転職

更新日:2024.07.03

公開日:

技術革新が世界的に進み、今まで人間が担ってきたさまざまな職業が、AIに取って代わられようとしています。近い将来、AIが人間の知能を超えるとされる「2045年問題」は、いま人類が真剣に向き合うべき重要なトピックです。

2045年問題を語るとき、もっとも大きな論点となるのは「AIに仕事を奪われる危険性」についてでしょう。税理士については、その業務すべてが完全に奪われることはないだろう、との見方が一般的です。しかし、最新技術に適応し、うまく共存するスキルは間違いなく必要になってきます。

また、不景気や高齢化といった社会情勢も、税理士の将来性に少なからず影響を与えています。個人の力ではコントロールできない事情もありますが、通常の税務に「プラスα」の能力を身につけることで、税理士の将来性を高めることは可能です。

そして、税理士としての将来性を高めて長く活躍したい方は、転職エージェントの利用も視野に入れることをおすすめします。記事のさいごで、税理士におすすめの転職エージェントを紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

税理士に将来性がないと言われている3つの理由

税理士の平均年収は約835万円と、他の職業と比較して高水準で、生涯年収は3億円超になるとも言われています。しかし近年、「税理士には将来性がない」「一生食べていける時代は終わった」といった声も囁かれています。以下で要員を見ていきましょう。

AIやITなどのテクノロジーの台頭

2013年、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン氏が発表した論文『THE FUTURE OF EMPLOYMENT(雇用の未来)』は世界中に衝撃を与えました。オズボーン氏は論文中で「コンピュータの進化によって、10年後には半分以上の職業が消滅するだろう」と述べたのです。

彼は同時に、消滅する可能性が高い職業を具体的に挙げています。そのリストには、テレマーケターや保険事務員といった職業が名を連ねる中「税務申告書類作成者」も含まれていました。消滅確率は「99%」と大胆な予想を立てています。

オズボーン氏の主張に対しては、当初から賛否両論ありました。それから実際に10年が経過しましたが、現在のところ、税務申告書の作成は完全に自動化されてはいません。

しかし、高機能のクラウド型会計ソフトやRPAツールが次々に登場し、税理士が人の手でおこなってきた業務は、少しずつAIが代行できるようになっています。

オズボーン氏の予想が的中したとは言えませんが、AIをはじめとする技術の台頭に、早くから警鐘を鳴らしたことには大きな意義があります。それに加えて、ルーチンワークが多い税理士のイメージが相まって、将来性に関する漠然とした不安が高まっているようです。

不景気により需要と供給のバランスが崩れた

少子高齢化や新型コロナウイルスの影響で、日本経済は不景気の時代へ突入しました。景気の悪化は多方面に影響を及ぼしていますが、税理士にとって最も痛手なのは、メインターゲットである中小企業の数が減少している点です。

中小企業庁によると、2016年から2021年の間で、中小企業は約21万社減少しました。実に、一年あたり約4万3千社も減少している計算になります。深刻な人手不足や物価高騰も相まって、中小企業数減少の流れは今後も続くと予想されます。

インターネット上で無料の情報が増えた

現代は、インターネット上で疑問や不安を解消できる便利な時代です。専門家が監修した税務や会計に関するノウハウも無料で手に入るようになりました。

あちこちで手に入る情報を統合すれば、わざわざ大金を払って税理士に依頼しなくても、ある程度の税務をカバーできるようになったのです。これは税理士の需要に直結するので、情報の発信とアクセスが容易になったことで起きた弊害と言えるでしょう。

税理士業界の今後

続いて、今後の税理士業界がどのように移り変わっていくのか、今後の動向を考察します。

税理士の高齢化が進み若い働き手・後継者が求められる

日本税理士会連合会が行った調査によると、税理士全体のうち54%が、60歳以上であることがわかりました。つまり、税理士の2人に1人は、キャリアの終盤に差し掛かっているシニア層なのです。なお、この調査は2014年に実施されたもので、現在はさらに高齢化が進行していると予想されます。

このような実態もあり、税理士業界の未来を担う若い人材のニーズは高まっています。税理士として長く活躍するうえで、「若さ」は最大の武器になるでしょう。

税制が年々複雑化しているため専門家が必要

日本の税制は、年を経るごとに複雑化しています。

中でも顕著なのは消費税にまつわる制度です。2019年10月の軽減税率制度導入に伴い、2023年10月にはインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートしました。

また2024年は、物価上昇への対応策として、所得税・個人住民税の定額減税制度導入や、賃上げ促進税制の強化が行われます。特に後者については、中小企業も税額控除の恩恵を受けやすくなり、控除率も上がりました。

知識の量や時間の制約により、税務への対応が難しい企業や個人事業主にとって、税理士は頼みの綱です。あらゆる依頼に対応すべく、税のプロである税理士は、税制の新設・改正の動向をくまなくチェックして正しく理解する必要があります。

AIや会計ソフトにも結局は使う人が必要

AIをはじめとするテクノロジーは、高度なレベルに達しています。税務・会計業務に役立つ、便利なツールも数多く登場しており、実際に使用した経験のある方もいらっしゃるでしょう。

しかし、それらのツールはすべて「人間ありき」です。これは忘れられがちなポイントですが、どんなツールも「作る人」「使う人」がいてはじめて成り立つものであることは、常に覚えておきましょう。

そのうえで大切なのは、これらのテクノロジーを正しく活用する力です。優れたツールでも、基本的な使い方を理解していなかったり、そもそもの要件定義が間違っていたりすると正しく動作しません。間違いに気づかないまま放置してしまっていると、取り返しがつかない事態に発展するおそれもあります。

特にお金が絡む税務・会計分野では、数字一ケタの間違いも許されません。最新技術によって、税理士の仕事が楽になるのは間違いありませんが、それはツールを「正しく」使えることが大前提なのです。

高度な会計や税務のノウハウ蓄積のため企業内税理士の採用が増えている

企業内税理士とは、一般企業に所属しながら、税務・会計に関する諸業務へ従事する税理士です。「インハウス税理士」と呼ばれるときもあります。一般的な税理士と比較すると、業務内容こそ似通っていますが、企業内税理士はいち社員として「いかに自社の利益を最大化するか」を考える必要があります。

企業内税理士が求められる背景は「機密保持がしやすい」「コストがおさえやすい」などさまざまですが、最近特に注目されているのが「自社にノウハウを蓄積できる」ことです。日々の業務を任せるのと並行して、自社内で税務・会計に関するノウハウをある程度固めておけば、長期的にはコストや生産性の面でプラスになると考えられます。

また企業の経営層にとっては、誰よりも自社の事業に理解がある税理士から、税務・会計の観点から助言を得られる点もメリットです。企業内税理士としての貢献が認められれば、将来的に要職へのステップアップも狙えます。

将来性がある税理士の3つの特徴

今後の業界を生き抜いていく力がある税理士とは、どのような税理士なのでしょうか。ここでは以下の3点を挙げます。

AIやITなど最新の技術やツールに適応できる
専門分野をもっている
コンサルティング能力が高い

AIやITなど最新の技術やツールに適応できる

AIやITツールを、私たちの仕事を奪うものとみなすのではなく、むしろ助けてくれる「味方」として認識することが重要です。人間には人間の得意分野が、AIにはAIの得意分野があります。その前提を理解したうえで、互いの欠点を補完し合いながら、棲み分けできるようにすることが大切です。最新技術に適応し、うまく付き合っていく能力こそが、税理士の将来性に直結するといえるでしょう。

専門分野をもっている

例えば本社がアメリカにあり、海外拠点も複数ある企業に勤めていると仮定します。この場合、二重課税や移転価格税制、過少資本税制など、複雑な税務問題に直面する可能性があります。これらの問題は、企業内だけで対応するのは困難であり、「国際税務」を専門とする税理士のサポートが不可欠です。

このように顧客の事情や希望に応じて、何らかの専門分野を持っておくと、他の税理士と差をつけられます。

コンサルティング能力が高い

税理士業務の中で必ず作成する財務諸表は、企業の経営状況を把握するための書類です。特に「財務三諸表」と呼ばれる、賃借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の3つからは、収益や財産、金銭の流れといった詳細な情報がわかります。

つまり税理士には、企業の経営コンサルティングを行うための材料が揃っているのです。財務データから経営状況を分析し、課題の発見・対応策の提案を行える「経営コンサルにも強い税理士」は活躍の場が広く、将来性が高いと言えます。

ただし専門家の立場上、助言を送る際は、具体的な根拠をもとに、正しい情報を提供しなければなりません。クライアントが取り組んでいる事業についての理解はもちろん、業界知識や、最新の社会情勢に対する幅広い知見も求められます。

税理士の将来性を高める専門分野3選

それでは、具体的にどのような専門分野を身につけるとよいのでしょうか。ここでは、次の3つをピックアップしました。

  1. M&A(事業承継)
  2. 国際税務
  3. 資産税

以下でそれぞれの概要を解説します。

M&A(事業承継)

M&Aは企業の合併・買収のことです。買い手・売り手双方にさまざまなメリットがあるため、近年は特に中小企業の間で、M&Aを実施する動きが広まっています。

買い手側のメリット 新規事業をローリスクで始めやすい。オープンイノベーションを創出できる。
売り手側のメリット 事業をさらにグロースさせられる。創業者利益を確保できる。

M&Aにおける税理士の役割は、税務・会計に関する豊富な知識をもとに、買い手・売り手に対して、さまざまな手続きをサポートすることです。主に、以下に挙げたシーンでの活躍が想定されます。

  • 金銭の授受にともなう節税対策
  • 資産の管理や負債処理
  • デューデリジェンス(=買い手から売り手へ、税務・財務状況のチェックを行う)
  • バリュエーション(=企業価値を客観的に評価し、売買価格を決定する)

また、M&Aの相手探しや交渉、スケジュール管理なども総合的にサポートできるとなおよいでしょう。よりM&Aに強い税理士として、将来性を高められます。

国際税務

国際税務とは、個人や法人が海外進出した先での取引、および国境をまたぐ取引の際に生じる諸税務の総称です。近年、アジアをはじめとする諸外国に拠点を設ける企業が増加し、逆に海外企業が日本に法人を建てて進出するケースも多くみられるようになりました。今後、グローバル化がさらに進む中で、国際税務を専門分野とする税理士のニーズはますます高まっていくでしょう。

国際税務においてもっとも重要なのは、単一の所得に対して日本と現地両国から課税されてしまう、二重課税を軽減または排除することです。そのためには、次に挙げるいくつかの税制について理解しておく必要があります。

租税条約 二重課税や脱税を防ぎ、国同士の課税関係を良好化するために結ばれる二国間条約
移転価格税制 海外にある子会社等に対する、節税を目的とした意図的な利益の移転を防ぐ制度
過小資本税制 海外企業の日本法人が、親会社からの出資を過小資本(過大な借入れ)として受け取ることで、租税を回避しようとする動きの規制制度
タックスヘイブン対策税制 海外にある子会社等の所得を、日本にある親会社に合算して課税する制度
額国税額控除 国内居住者が納める外国所得税について、その一部を一定の割合で控除して二重課税を解消する制度

資産税

資産税といえば、一般的には土地や建物、償却資産にかかる税、固定資産税を指します。固定資産税は地方税、つまり国ではなく地方自治体に対して納める税です。税率の決定権も自治体にありますが、特別な理由がない限りは、標準税率1.4%が適用されます。

一般的に固定資産税の税額は「課税標準額×1.4(標準税額)」で求められます。課税標準額のベースとなるのは「固定資産税評価額」です。固定資産税評価額は、土地や建物の価値の「70%」が基本で、3年に一度、評価替え(価格の見直し)が行われます。

オフィスを持っていないなどの特殊な場合を除き、固定資産税の問題は必ず付きまといます。顧客からの需要が高い分野でもありますので、税理士として長く活躍したい方はぜひ力を入れるべきでしょう。

将来性を高めたい税理士におすすめの転職エージェント3選

最後に、税理士として長期的に活躍したい方へおすすめの転職エージェントを紹介します。今回は以下3選のエージェントをピックアップしました。

  1. ハイスタ税理士
  2. ジャスネットキャリア
  3. レックスアドバイザーズ

ここから各エージェントの強みや特徴、紹介実績などを一挙解説します。

ハイスタ税理士

ハイスタ税理士は、税理士・科目合格者・税務経験者の転職に特化したエージェントです。業界を知り尽くしたプロのアドバイザーによる、求人紹介から履歴書・職務経歴書添削、面接対策まで、充実したサポートを受けられます。

もとより、ハイスタ会計士では弁護士の集客支援や人材採用に力を入れていました。そのため、他のエージェントからは得られない業界情報・転職ノウハウを得ることが可能です。アドバイザーがあなたの希望や経験を丁寧にヒアリングし、ぴったりの求人を厳選して紹介するため、ミスマッチのリスクを最小限に抑えながら、理想の転職を実現できます。

そして最大の特徴とも言えるのが、取り扱っている求人がすべて非公開求人である点です。公開すると応募が殺到するような、人気企業の求人も多く取り扱っています。

運営会社 株式会社アシロ
サービス対象 税理士・科目合格者・日商簿記資格保有者・税務経験者
取り扱い求人 税理士法人・会計事務所・事業会社・コンサルティングファーム
利用料 無料

ジャスネットキャリア

ジャスネットキャリアは、経理・会計業界での「価値ある転職」をめざせるエージェントです。主に税理士・公認会計士・経理職のビジネスパーソン面談満足度は91%と高水準です。「すぐに入社したい」「時間をじっくり考えたい」といった希望にも柔軟に応じてもらえます。

中には、時短勤務やリモートワーク、フレックスタイムなどの制度を導入している企業もあるため、自分に合った働き方を実現できます。

運営会社 株式会社ジャスネットコミュニケーションズ
サービス対象 税理士・公認会計士・経理職
取り扱い求人 経理・監査法人・会計事務所・コンサルティングファーム
利用料 無料

レックスアドバイザーズ

レックスアドバイザーズは、「転職して終わり」ではなく、長期的に満足できる転職を叶えるエージェントです。転職検討段階から入社後まで一貫した支援で、これまで多くの税理士・会計士が、税理士法人・監査法人・会計事務所、一般事業法人への転職を成功させています。

特にマネージャー、幹部候補クラスへの転職に強いのが強みで、シニア層からの厚い支持を受けています。もちろん、30代や40代のサポート実績も豊富なため、若くしてキャリアプランを練り直したい方にもおすすめです。

運営会社 株式会社レックスアドバイザーズ
サービス対象 税理士・公認会計士・経理・財務
取り扱い求人 会計事務所・税理士法人・コンサルティングファーム・事業会社・監査法人
利用料 無料

まとめ

税理士として、不確実性に満ちた21世紀を生き抜いていくためには、AI・ITリテラシーやコンサルティング能力など、プラスαのスキルが不可欠です。年を経るごとに、税制も複雑になってきており、今まで以上に素早く、正しく対応する必要があります。

また専門分野に強くなる、特に「M&A」「国際税務」「資産税」といった分野を極めるのは、将来性を高めるのにうってつけです。日々の業務で実務経験を積みながら、常に学び続ける姿勢を忘れず、税理士としてのステータスをアップデートしましょう。

edit_note この記事を書いた人

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ハイスタ税理士

一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。

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