税理士の転職
更新日:2024.04.17
公開日:2024.04.17
転職を検討中の税理士にとって、自分の年齢が転職活動に与える影響は気になるところでしょう。税理士の転職では年齢をそれほど気にする必要はありませんが、その年齢にあったアピールをすることで転職の成功可能性を高められます。
本記事では、税理士と年齢との関係を取り上げ、年齢別の転職事情や年収相場、応募先別に有利な年齢などを紹介します。転職活動がうまくいかない場合に見直すべきポイントも解説します。
目次
税理士の転職において年齢が足かせになるケースは、あまりありません。一般的に転職が難しいとされる40代や50代でも転職が可能です。
その理由としては複数ありますが、主に税理士業界で進む高齢化や、税理士試験受験者数の減少による税理士の人手不足が挙げられます。税理士業界では中小零細事務所だけでなく大手事務所でも税理士の高齢化や人手不足が課題となっており、年齢に関係なく積極的に採用しようとする動きが見られています。
税理士は、圧倒的な少子高齢化社会です。
税理士は60代が最も多く、全体の3割を占めます。20代・30代・40代の税理士人数を合算しても、60代に届きません。
20代・30代の税理士は本当に貴重でどの事務所も必要としている人材のため、転職先には困りません。
40代からは経験豊富な税理士が増えるため若干転職の競争率が高まりますが、それでも業界的には若手に分類されるため、40代以上でも転職できないということはないでしょう。
年代 | 人数(人) | 割合(%) |
---|---|---|
20歳代 | 187 | 0.6 |
30歳代 | 3,358 | 10.3 |
40歳代 | 5,599 | 17.1 |
50歳代 | 5,817 | 17.8 |
60歳代 | 9,868 | 30.1 |
70歳代 | 4,343 | 13.3 |
80歳代 | 3,421 | 10.4 |
税理士の転職事情を知ることで、転職活動を戦略的に進めることができます。年代別の転職事情について解説します。
税理士業界での20代の人口は1%にも満たないため、非常に希少な人材です。
そもそも税理士試験は5~10年といった長い年月をかけて合格する人も多いため、20代のうちに資格を取得できる人は少ないのです。試験の特性として科目合格を保持できるため、20代なら科目合格でも転職先を選ぶことができます。
専門知識に加えてフレッシュな視点がある20代の税理士は、多くの事務所や企業にとって魅力的です。実務未経験でも転職できます。
30代税理士は、20代税理士に次いで希少な人材です。税理士業界においてはまだまだ若手の部類に入るため、第二新卒くらいの転職難易度と捉えても差し支えないでしょう。
税理士資格を取得し、30代の時点ですでに3年以上の実務経験があるような人材は、かなり高い確率で転職できるでしょう。
科目合格者でも十分に転職可能性があります。ただし若干転職難易度が上がるため、税理士補助の経験か経理経験を3年以上積んでいるとよいでしょう。
20代であれば実務未経験でも転職可能性は十分にありますが、30代はハードルが上がります。最低限3科目合格以上の合格と経理経験を持っておくとよいでしょう。
40代の税理士にとっては、5年以上の実務経験とマネジメント適性が転職を成功させるための鍵となります。
この年代の税理士は専門的な知識とともに豊富な実務経験を積んでおり、多くの場合でリーダーや管理職としての役割を果たすことが期待されます。
そのため転職を考える際には、これまでの経験をどのように活かし、どのように価値を提供できるかを明確にすることが求められます。
新しい職場での人材育成や組織運営において、これまで培ったマネジメントスキルをいかにして発揮できるかも転職成功の大きなポイントです。
50代の場合はほかの年代に比べて応募できる求人が少なく、求められる要求水準も非常に高いため、人によっては転職が難しくなります。しかし50代の税理士は豊富な経験と専門知識が大きな強みであり、複雑な税務問題の解決や事務所の後進の指導においても重要な役割を果たすことができます。
また深い業界理解とクライアントとの長年の関係構築も高く評価されるものです。このような50代の経験を必要とする事務所は一定数存在しており、そうした事務所を選ぶことで転職は実現可能です。
税理士の転職市場において、応募先の規模や種類によって求められる年齢層には幅があります。応募先別に、転職可能な年齢の目安を解説します。
大手税理士法人では若手の育成体制が整っているため、若手人材の採用に積極的です。ポテンシャル採用もおこなっているため、転職市場では20代の税理士がもっとも転職できる可能性が高いでしょう。
ただし20代での税理士資格保持者は少ないため、一定の実務経験を前提に30代前半くらいまでならチャンスがあります。
30代後半以降の場合、特筆すべき実績や経験があれば相応のポジションで転職できる可能性がありますが、一般的な事務所経験だけでは難しいのが実情です。
中堅の会計事務所では、経験豊富なミドル層の需要が高まっています。
これは中堅事務所が安定した顧客基盤をもちつつも、新しいビジネスの拡大や専門性の強化を目指して多様な経験と知識をもつ税理士を求めているためです。
一方で、精力的に事業拡大を目指す事務所も多いことから勢いのある若手の税理士に対してもポジションが用意されており、幅広い年齢層でキャリアアップの機会が存在します。
相続や事業承継など、特定の専門分野に特化した事務所では、その事務所が扱う業界や専門分野に精通した経験豊富な税理士が求められる傾向にあります。
そのため深い知識と高度な専門性をもつミドル~シニア層の転職可能性が高いです。
即戦力が求められるため若手税理士はやや不利ですが、その事務所が扱う専門分野に関連する合格科目がある場合や、関連業界での経理経験がある場合などにはチャンスがあります。
町事務所では経験豊富なミドル層が重宝される傾向にあります。これは地域密着型のサービスを提供するうえで地元の企業や個人との長年の関係構築や信頼が求められるためです。
また町事務所では一人ひとりの税理士が多岐にわたる業務を担うことから、幅広い知識と経験が必要とされます。職員の数が少なく若手を育成する余裕がないのも、ミドル層が求められる理由です。
ただし町事務所のなかでも、職員の若返りを図りたいと考えている事務所では若手税理士にもチャンスがあります。その場合でも一定の実務経験が必要です。
事業会社では若手人材が好まれやすい傾向があります。これは事業会社では、税理士としての専門性よりも組織への適応や周囲との協力体制の構築が求められることが多いためです。
年齢が上がると経験値や知識は増える一方で、新しい環境へ適応する能力や柔軟性に欠ける場合があるため、ミドル層以降の転職は難易度が高まります。
ただし事業会社での経験がある税理士であれば、ミドル層で管理職ポジションへの転職は可能性があります。
転職時の年収は年齢によって大きく異なります。希望年収を設定する際には、年齢ごとの相場を把握したうえで適正な年収を定めることが大切です。
税理士の平均年収は、一般的に年齢と比例して上昇します。年収アップを狙って転職することもできますが、転職先の規模や既存メンバーの年収も鑑みて希望年収を設定しなければなりません。
年齢 | 年収(万円) |
---|---|
20~24歳 | 475.48 |
25~29歳 | 568.01 |
30~34歳 | 619.19 |
35~39歳 | 722.75 |
40~44歳 | 794.69 |
45~49歳 | 819.59 |
50~54歳 | 868.16 |
55~59歳 | 1071.91 |
税理士の転職を成功させるには、年齢に関係なく求められる要素を磨くことも大切です。とくに求められるのは対人スキルや継続学習力、IT・デジタル関係の知識やスキルです。
年齢を超えて求められる重要な要素のひとつが対人スキルです。このスキルはクライアントとの信頼関係を築き、効果的なコミュニケーションをおこなうために欠かせません。
またクライアントの財務状況を正確に理解し、複雑な税法をわかりやすく説明する能力が求められます。
税理士が税制度の改正や最新の会計基準に迅速に対応し、クライアントに質の高いサービスを提供するには、継続的な学習が不可欠です。これは若手であってもベテランであっても変わりません。
また税理士業界では常に変化する経済環境と技術の進歩に適応する能力が求められます。そのため研修への参加、専門誌や業界ニュースの購読などを通じて常にスキルや知識の向上に努めている人材が評価されます。
現代のビジネス環境において税務申告や会計業務はデジタル化が進んでおり、クラウド会計ソフトやオンライン税務サービスなど、新しい技術を活用することが求められます。
新しい技術は業務効率化や正確性の確保、リアルタイムでの財務分析を可能にし、税理士がクライアントに提供する価値を大きく高めることができます。
したがって、ITやデジタルに関する知識やスキルの習得に積極的な人材が評価の対象となります。
エンジニアのように高度な専門知識が求められるわけではないものの、少なくとも抵抗感や苦手意識をもたないことが大切です。
税理士としての転職活動において不採用が続く場合にはさまざまな要因が考えられますが、とくに以下の点は確認しておきましょう。
転職活動において非常に重要なのは、自身のビジョンと応募先のビジョンの合致です。合致していない場合、自社にはマッチしない人材として採用が見送られてしまいます。
自分自身が何を成し遂げたいのか、どのような価値を提供できるのかを明確にし、それが応募先の企業文化や目指す方向性と一致しているかを見極める必要があります。
転職条件の見直しも必要です。転職条件が多すぎる・高すぎる場合には応募できる求人がなかなか見つからず、転職活動が長期化します。
給与や勤務地、研修制度の有無や自己成長できる環境などすべての条件を満たす求人は残念ながらありません。
そのため条件は優先順位をつけ、とくに重要なものに絞ることが大切です。そうすることで転職の軸が明確になり、より適切な職場を見つけることができます。
不採用が続く場合、面接での自己表現を見直すことも重要です。とくに、「扱いにくい」という印象を与えてしまう要因を理解し、改善することが求められます。
面接官にそのような印象を与えがちな要因としては、柔軟性の欠如や過度の自信、コミュニケーションスタイル(相手の話を真摯に聞かない、話が長すぎるなど)が挙げられます。
これらを改善するためには面接の振り返りをおこない、次の面接に向けてしっかりと準備することが大切です。
転職エージェント経由で応募した場合は面接のフィードバックを受けられるため、それをもとに改善に努めることが有効です。
転職活動全体を客観的な視点で振り返ることも大切です。まずは、これまでの経験やスキルが、募集ポジションと合致しているかを評価することが必要です。
また、応募書類の内容が明確かつ具体的であるか、面接時に強みを適切に伝えられているかも見直すべき点です。
これらのポイントをもとに転職活動を客観的に分析し、改善策を講じることで、転職成功の可能性を高めることができます。
税理士が転職活動を進める過程で年齢がネックになっていると感じたら、転職エージェントへ相談してみましょう。
転職支援のプロの視点から、転職活動で改善すべき点や選考でアピールすべきポイントをアドバイスしてもらえるため、転職成功の可能性が高まります。
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スピード感重視の転職を得意としているため、できるだけ早く転職したい人や転職時期を決めている人に利用をおすすめします。
税理士の転職市場では20代・30代の若手人材だけでなく40代・50代のミドル・シニア層も一定のニーズがあります。
年齢にあったアピールをするとともに、年齢関係なく求められる要素を磨き、転職の成功を収めましょう。
edit_note この記事を書いた人
一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。
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