後悔しない会計事務所の選び方|後悔事例と転職前のチェックポイントを解説

税理士の転職

更新日:2024.03.11

公開日:

残業100時間も当たり前といわれる会計業界。ワークライフバランスの改善を求めて転職したもの、改善されないばかりか逆に悪化したケースもあります。

なぜこんなことが起こってしまっているのか、それは転職前に会計事務所の内情をきちんと知る手段が無かったのが大きな要因の一つです。

現在、会社の評判や口コミをしるこのとできるサイトはいくつもありますが、本当に的を得た回答をしている、真実に近いを思えるサービスはほぼありません。単一のサービスだけではなく、複数の口コミサイトを比較して初めて内情の一端が見えてくると言って差し支えないかと思います。

しかし、そんな面倒なことをしなければ内情を知れないのかといえばそんなことはなく、最も確実かつ速いのは、転職エージェントのアドバイザーに聞いてみることでしょう。

また、後悔しない会計事務所への転職をするには、回避すべき求人情報や転職の時期など、様々な要素を考えなければなりません。

そこで本記事では、会計事務所への転職で後悔しように、経理専門の転職エージェント『ハイスタ』が、よくある失敗・後悔するパターンと、会計事務所の失敗しない選び方を解説していきます。

後悔しない会計事務所の選び方

後悔しない転職のためには、求人のチェックのほか面接時に聞いておいたほうが良い質問や、事前にチェックできる会社情報などがあります。しっかりとポイントを押さえ自分に合った会計事務所を探しましょう。

離職率をチェックする

1点目は離職率のチェックです。離職率で見るべきポイントは「離職率の数値」と「就職後3年以内の離職率」、「入職超過率」の3つがあります。

離職率の数値

厚生労働省が発表している資料「平成30年雇用動向調査結果の概況」によれば、日本の離職率の平均は14.6%でした。まずはこの平均値から大きく逸脱した離職率か否かの確認が必要になります。

離職率の定義は、常用雇用者に対して離職した人の割合を示している事が多いです。しかし企業により若干異なる場合もありますので、数値を見る際はよくチェックしましょう。(出典:厚生労働省|平成30年雇用動向調査結果の概況)

就職後3年以内の離職率

就職後3年以内の離職率は、入社後3年以内に離職した人の割合を表します。この数値が高いほど、入社前と後のギャップがあり離れていった人が多いことを指します。

厚労省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)を公表します」には、2020年度の大学新卒から入社した社員のうち、32.8%が3年以内に転職をしているとありました。

事業規模別にみると、1,000人以上の大企業では26.5%、5~29人の零細企業では51.1%が3年以内に転職しています。会計事務所はBig4と呼ばれる事務所が有名ですが、それ以外では10人未満の中小零細の会計事務所が多いとされています。事業規模に応じて3年以内の離職率を比較しておきましょう。(出典:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)を公表します

入職超過率

入職超過率とは、入職率から離職率を引いたものです。プラスであれば離職した人より入社した人の方が多いということになります。会計事務所は比較的小規模の事務所が多く、所長の年齢が高いと後継者不在で倒産といったリスクがあります。入職超過率のマイナスが続いている事務所は、後継者が育たず倒産するリスクが比較的高いので、避けるようにしましょう。(出典:厚生労働省|平成30年雇用動向調査結果の概況

平均年齢をチェックする

事務所の平均年齢もチェックをしましょう。HPに書いてある場合もありますが、もし書いていなければ、エージェントに確認をするか、面接時に聞くなどしてみましょう。

「平均年齢が若い」というのは、よほどのベンチャーでなければ、中堅社員が離職している可能性が高いと判断できます。ある程度設立年から時が経っていて、平均年齢が若かったり、求人情報に「若手が活躍」などといった記載があれば、中堅社員になるころには離職している可能性が高いです。

平均年齢が若い事務所の場合、反対する中堅社員がいなくなりイエスマンしかおいていないケースや、試験合格者がこぞって辞めていき、結果若手しかいなくなっているケースなどが考えられます。

試験合格者の年齢のボリュームゾーンが20代後半~30代前半ですので、平均年齢を尋ねる際はそのくらいの年齢層の人たちがどのように活躍しているか聞いてみるとよいでしょう。

所長等の人柄を観察する

会計事務所の所長の人柄もチェックしましょう。会計事務所は少人数組織が大半です。このため所長の人柄は事務所の雰囲気に直結します。

最近大きくなってきたばかりの「イケイケ」の雰囲気や、逆に小さめの安定志向の雰囲気など、まさに千差万別です。自身のキャリアを考えたとき、どのような事務所のほうが良いかしっかり吟味しましょう。

また、雰囲気を見る際は平均年齢・年齢構成に注意が必要です。例えば、平均年齢が若くなくても、40代以上の有資格者と20代の若手しかいないような事務所もあります。

そうした事務所は、所長のイエスマンしか残れない事務所の可能性があります。税理士・公認会計士資格は、試験合格後3年以上の実務経験が必須ですが、その人たちが所長の方針と合わずに辞めていっている可能性が高いためです。

こうした態度は従業員の資格取得への奨励にもかかわります。後任の育成に積極的で、独立支援などを行う事務所も少なからずあります。一見厳しくワンマンなように見えても、愛情の裏返しということもあります。

しかし、上記のようにある程度ベテランの有資格者しか残っていないような事務所の場合、例え有資格者でもただの作業員ととらえ、その人のキャリアに対して関心がない可能性もあるのです。

福利厚生について聞く

会計事務所では、税理士や公認会計士などの資格を保有するまではどうしても給料が低くなりがちです。しかし給料だけで事務所の良し悪しを判断してしまうのは早計です。

例えば、給与は低くても資格取得を奨励している事務所では、残業をさせずに勉強をさせてくれる事務所もあります。

逆に「経験を積む」といった名目で資格を取得する前から多くの実務を行わせてくれる会社もあります。そうした事務所の中には有資格者が所長しかおらず、後継者の育成を全く考えていないような事務所もあります。

このように従業員のキャリアに対してしっかり考えているかどうかなどは、給与水準以外の部分から考えていく必要があります。チェックすべき点としては、閑散期の有休消化率や平均残業時間、労働保険の加入の有無などです。

会計業界は11月~5月が繁忙期といわれています。この期間の残業時間は100時間を超える事務所も珍しくありません。しかし、6月以降の閑散期でしっかりと有休が取得され、また残業もなく勉強に励める環境ができているかを確認しましょう。

また、労働保険は事業を行う上で必ず加入しなければなりません。しかし、一部の中小零細事業者は労働保険に加入していない場合もあります。求人情報やHPにはわざわざ労働保険の加入有無は書いていませんので、面接の時などに聞いてみましょう。明確な返答がない場合、未加入の可能性があります。

会計事務所に転職して後悔した事例

会計事務所に転職をして後悔してしまうようなあるある事例を紹介していきます。

このような後悔の主な原因は以下です。

  1. 業務内容が合わない
  2. 社内の風土が合わない
  3. 昇給などに不満がある

業務内容が合わない

自分のできることと業務内容が合わない場合転職を失敗と感じてしまいます。会計事務所の仕事の内容は、税務申告などの手続き業務から資金繰りや経営のコンサルティングなど、様々な内容があります。事務所が主に行っている業務内容は必ず確認しましょう。

社内の風土が合わない

小さな組織では、良くも悪くもトップの意向が反映されやすいものです。会計事務所ごとに仕事の進め方や解釈の違いがたくさんあります。特に組織風土については面接・面談などの直接お話をする機会がなければ判断が難しいものです。事務所内の様子や社員同士の雰囲気などはしっかりとチェックしておきましょう。

昇給などに不満がある

多くの会計事務所では有資格者にならなければ給与が増える、重要ポストに就くといった事は難しいとされています。

例えば科目の合格状況などを見えるように張り出し、競わせるような事務所は避けたほうが無難です。もちろんそれが刺激になるという方にとっては良い環境かもしれません。ただ、そうではないという人がいるのもまた事実。人間関係がギスギスしてしまうこともあり得ます。

昇格や昇給の基準などは転職前にチェックしたいポイントです。

人間関係で悩む

会計事務所では、多くの人が資格取得のため働きながら勉強をしています。前述のとおり会計事務所では有資格者にならない限り給与が低く設定されていたり、昇進ができないことが多いです。

このため、働いている人の多くが仕事を早く切り上げ、勉強をしたいと考えています。あまりにも事務所内の競争が激しい場合、仕事を押し付けてでも早く帰って勉強をしようとする人も出てきます。前述のように科目の合格状況や点数を競わせるタイプの事務所ではこうした傾向が顕著になります。

また、転職した時期が悪い場合も注意が必要です。11月以降の繁忙期に転職をした場合、特に優秀な人ほど忙しくなるのでなかなか仕事を教えてもらうということが難しくなります。教えている時間もないのに教えなければならないので、自然と教え方も雑になり、対応も険呑となってしまうことが多いようです。

試験に合格しても安心ができません。むしろ合格することによって人間関係が悪くなることもあります。例えば自分は不合格で後輩が合格した場合などです。後輩として今まで指導してきた人が、今度は上司になります。そうした力関係の変化に精神的疲労を覚える方は少なくありません。

また、逆に自分が合格して先輩が落ちた場合も大変です。自身の上司としてのふるまいもそうですが、嫉妬などで嫌がらせを受けてしまう事も考えられます。

キャリアプランに合わない

入所先の会計事務所の業務内容を正しく把握していないと、自分が思い描いていたキャリアパスのための経験にならないような業務ばかりになってしまうリスクがあります。

書類と向かい合って作業を進めていくイメージが強い税理士ですが、実は会計事務所の仕事には一般的な監査や税務申告のほか、経営コンサルティングやM&Aの実施・デューデリジェンスまで幅広くあります。そうした仕事の中には、むしろ対人関係・コミュニケーションスキルがものをいう仕事もあります。また監査業務においてはチームプレーが求められる場面も多いものです。

資格を取得した後、具体的にどのようなキャリアパスを描いていきたいか、しっかりとイメージしましょう。面接等の段階で「将来こうなりたい」ということをしっかり主張することで、ある程度優遇してもらえるかもしれません。

もしくは、会計事務所によってはキャリアパスが明確に描かれている場合があります。例えば、一般的にスタッフの時は作業、シニアスタッフになってプロジェクトマネージメントを行うようになり、マネージャーになって組織のマネージメントを行うようになります

スタッフ時に報告書のチェックといった会計スキルが活かせる作業もありますが、電話営業などイメージと異なる業務を任されることもあるでしょう。しかし、シニアスタッフになれれば監査チームの一員としてクライアント先に訪問したり、M&Aチームとして明確に役割が与えられるといった事が期待できます。

事業部やチーム名・組織編制図がしっかりしている会計事務所なら、このように自分がどのようなキャリアを進めるのか、今どこにいるのか整理しやすくなるので、入社後のギャップも少なくなるでしょう。

会計事務所へ転職するための心構え

会計事務所は有資格者にならなければ薄給です。試験に合格していても最初のうちはかなり給料を低く抑えられている場合もあります。それらを踏まえて、会計事務所に転職する際に、後悔しないように事前に覚悟しておくべきことをまとめました。

入社当初の収入は期待しない

繰り返しになりますが、入社当初は低賃金もやむなしということをまず受け入れましょう。特に未経験資格なしとなればなおさらです。しっかり実務をこなしながら勉強に励みましょう。

会計事務所は様々な仕事をしますが、その多くはITブームなどの影響で価格競争が始まっています。特に税務申告等に関しては無料のツールが登場するなど、その激しさが増しています。その他の業務についても、実は多くの業種と競合する場面があります。

また、会計のプロである会計事務所には資金繰りの相談・コンサルティングを行う事務所があります。しかし、これらの業務は銀行やFPといった業種と競合することが多いです。

特に日本は中小企業が9割を占める産業構造になります。ある程度の規模の事務所といえども、零細企業のコンサルティングを行わなければ売上がたたないこともあります。しかし中小零細の事業主であれば、銀行から借り入れを行うなどの状況でも自力でできたり、FPへの相談で事足りる場合もあるのです。

監査業務については独占業務のため公認会計士しか行うことができません。しかし、監査業務は「制作された書類が正しい」ということを公に証明する物になります。このためかなり高いスキルレベルが求められることになり、最終的なチェックは有資格者が行うことが通例となります。

つまり、公認会計士業界は様々なライバルとの競争にさらされながら、常に高いレベルの技術が要求され続ける環境にあります。有資格者でかつある程度の経験がなければ高単価の仕事を行うことができないので、どうしても入社当初の給与は低く抑えられてしまうのです。

繁忙期に転職しない

一般的に会計事務所は11月~翌年5月までが繁忙期といわれています。これは正確にいうと、クライアント決算期の翌月から翌々月くらいまでが繁忙期となり、その理由は日本の会社の多くが3月を決算期にしている事が多いためです。

そのため、以下のような過酷な状況に放り込まれる可能性が高まります。例え試験合格をしているような方であっても、この時期の転職は後悔する確率が高くなるでしょう。

残業が多く、新人教育がまともに受けられない可能性がある

後悔する理由の一つが残業時間の増加です。

この時期は残業時間が100時間を超える事務所も珍しくありません。会計事務所は事務所ごとに独特のルールややり方があったりします。このためしっかりと仕事のやり方を教えてもらわなければなりませんが、先輩方は作業に追われている場合が多く、「教えたくても教えている場合ではない」という状況に陥っていることがあります。

こうした中での新人教育は、当然丁寧とは言い難いものになるでしょう。責任感の強い方なら足を引っ張ってはいけないというプレッシャーから精神的な疲弊を引き起こしてしまうケースもあります。この時期の転職はこうした状況でも食らいついていく覚悟が求められることを覚えておきましょう。

さらに繁忙期以外でも税務の申告などは会社によって期日が違いますので、クライアントの申告時期が重なってしまうと残業せざるを得ない場面が出てくるでしょう。

月並み以上の業務量を求められる

「会計コンサル」を売りにしている事務所の場合、月次ごとに小決算を行う場合があります。通常決算は締め日から10営業日程度かけて作成されますが、月次小決算は早ければ翌日までに資料を作成している必要があります。

事務所によってやり方が違う上に、担当になったばかりのクライアントの状況を把握していく作業は月並みの大変さではありません。一般的な繁忙期に加え、事務所の繁忙期というのもしっかり聞き出しておきましょう。

会計事務所の転職をする際におすすめする付加価値

会計事務所への転職について、後悔するポイントとリスクを解説してきました。ここからは、それらのリスクを負ってでも税理士を取るべき2つの理由も解説したいと思います。

IPO業務の経験ができるかどうか

会計事務所に転職するメリットの一つとして、IPO業務があります。中堅以上の会計事務所に入れれば、IPOが経験できる可能性が高まります。IPOは会計事務所の独占業務が求められる場合があるので、税理士になりたいなら絶対一度は経験したい業務です。

そもそもIPOとは、今まで上場していなかった会社が株式市場で売買可能となる「新規株式公開」を行うことです。

IPOで税理士・会計士が活躍する場面は、主に報告書作成の際、その内容が正しいことを証明する時です。具体的には、「四半期レビュー報告書に関する財務諸表が記載された有価証券報告書」等の作成において、内容を証明するために必要となります。

また会社が上場する際、監査法人による上場直前2期間の会計監査が義務付けられています。このため一定程度の規模の会計事務所なら、IPOのための監査チームがプロジェクト単位で編成されます。こうした場面に遭遇できるのは会計事務所に勤務している人の特権といえるでしょう。

もちろん資格がなくても、上場を目指す企業のCFO的な立ち位置を狙ってキャリアを重ねることも可能です。そもそも監査法人による監査を受けるには、監査されるに足る条件を満たしているか、事前審査をされる場合があります。

非上場企業の多くは管理会計ではなく税務会計を基準に行われています。上場会社基準の管理会計を適用すると、実は売上が足りない、債務超過であったといった事例は少なくありません。こうした問題を回避するため、一般企業でも税理士は求められています。

とはいえ、IPOの監査チームとしてクライアント・チームと協力しながら働く経験は大きな宝になるはずです。

最新の会計・監査基準が学べるかどうか

会計事務所に転職する2つ目のメリットは、最新の会計トレンドを学ぶことができる点です。近年の大きなトレンドの一つにIFRS(国際財務報告基準)があります。

IFRSとはEUで使用される会計基準のことで、EUと取引のある会社はこの会計基準も適用するように求められることから、世界的な広まりを見せています。日本の会計基準でも2021年4月以降、収益認識のタイミングがIFARSと同様の基準を採用するように法改正が行われました。

最近では中小企業でも海外に子会社があったり、零細でも海外と取引がある会社が増えてきています。このため、こうした最新のトレンドをキャッチし実務に落とし込んでいくことができなければ、公認会計士・税理士として働くのは難しくなっているのです。

その点会計事務所で勤務していれば、こうした情報がキャッチアップしやすいといったメリットがあるでしょう。

会計事務所に転職するなら転職エージェントがおすすめ

会計事務所への転職は、様々なリスクがありますが、求人票の記載やエージェントへの質問である程度状況を把握し、合わない事務所を回避できる可能性があります。

ハイスタは、会計・税務・経理・財務分野に特化したプロフェッショナルエージェントです。エージェント自身は法曹業界に精通したメンバーであり、その分野に必要なスキルや活かせる知識経験などを把握しているばかりでなく、会社選びの視点や長期的なキャリアの実現といった観点からアドバイスをしてくれます。

まとめ

会計事務所に転職する際に見ておきたいポイントや入社後に後悔しないコツをお伝えしてきました。外から見ると良く見える事務所でも実際は違ったなんてことはざらにありますので、しっかりと事前知識を持って、事務所選びをして頂ければと思います。

edit_note この記事を書いた人

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ハイスタ税理士

一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。

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