国税専門官におすすめの転職先は?アピールできるスキルや注意点を解説

税理士の転職

更新日:2024.07.24

公開日:

国税専門官は、納税者が納税義務を円滑に履行するための調査や指導を実施する国家公務員です。

以下の3つの職種に分かれています。

  • 適正に申告されているか調査・指導する「国税調査官」
  • 税金の督促や滞納処分、納税指導をおこなう「国税徴収官」
  • 悪質な脱税者への強制調査や告発をおこなう「国税査察官」

国税専門官は法律や会計に関する高度な専門性を有する職種なので、その専門性と経験を活かして民間へ転職することが十分に可能です。

本記事では、国税専門官の転職をテーマにアピールできるスキルやおすすめの転職先、転職活動のポイントや注意点を解説します。

国税専門官が転職を考える主な理由

国税専門官が民間への転職を希望する理由は人によって異なりますが、主には以下のような理由が挙げられます。

転勤が多い

国税専門官は全国12の国税局管内で、国税庁や税務署に勤務します。

職務の性質上、癒着を防ぐ必要があるため管轄内での異動が実施されます。転勤のサイクルは2~3年に1回なので、その都度引っ越すことになり、新しい場所で生活環境や人間関係を築き直さなければなりません。とくに家族がいる人にとっては、家族も赴任先に連れていくのか、単身赴任をするのかは悩みどころです。ワークライフバランスを考えて、転勤のない仕事への転職を考える人もいます。

クレーム対応や単調な仕事に不満がある

適正な申告や納税ができていない個人や法人が、自己の行為を正当化するために理不尽なクレームをつけてくることがあります。国家公務員も自分が働くことで報酬を得ているにもかかわらず、その原資は国民から徴収した税金なので、その点に怒りの矛先が向かうことも少なくありません。

また、国税専門官の仕事は使命が明確であるがゆえに、仕事内容が単調に感じることもあります。民間のサービスのようにアイデアを出し合ったり裁量権を高くもって仕事をしたりする機会が少ないため、やりがいを感じられなくなる人もいます。

チームプレーが苦手

国税専門官の仕事は、上司の指示に従ってチームで協力しておこないます。よくも悪くも組織構造が明確で、体育会系の職場です。縦社会になじみやすく、不満もないという方なら問題ありませんが、チームプレーがどうしても肌に合わない方もいるでしょう。その場合、民間の自由な風土に惹かれて転職を考えることになります。

民間の場合もチームプレーが求められることは多いですが、多種多様な仕事や職場があるため、個人プレーで成り立つ仕事や上下関係がなく誰もがフラットに活躍できる職場も多く存在します。

国税専門官が転職でアピールできるスキルセット

世間では、民間で役立つスキルがないなどの理由から「公務員から民間への転職は難しい」と言われることがあります。しかし、国税専門官は高度な専門性とコミュニケーションスキルを備えた職種なので、民間への転職が十分に可能です。

税金に関する専門知識

国税専門官になるには教養試験に加えて会計(簿記を含む)や民法、商法などの専門試験で合格基準を超えなければなりません。

勉強時間は1,000時間~1500時間とされており、難易度が高いです。試験に合格したあとも税務大学校での研修(3ヶ月)と税務署での実務経験(1年)、専攻税法研修と専科研修を受けてようやく国税専門官に任用されます。このような厳しい試験を突破した国税専門官は税金・会計・法律・経済に関する幅広い知見と専門知識を有しています。

これらの知見は民間企業でもおおいに発揮でき、転職でも評価の対象となります。

高い倫理観や責任感

国税専門官に限らず、国家公務員は国民全体の奉仕者として、公正な職務の遂行が求められます。そのためには高い倫理観や責任感が必要となり、国民の不信や疑惑を招くような行為は許されません。

そのため国税専門官である・あったという事実は、採用担当者に対して「倫理観・責任感が高い人材」という印象を強く与えることができます。国税専門官の転職先は主に税理士事務所や企業の経理部など、とりわけ倫理観や責任感が求められる職種が多いため大きなアピールポイントとなるはずです。

コミュニケーション能力

国税専門官は、相手の話をよく聞いて説得する場面が多くある仕事です。無知識で申告や納税を誤った相手に対しては、専門的な内容をわかりやすく説明し、納得したうえで納税してもらいます。悪質な脱税や滞納に対しては毅然とした態度で接しつつ、的確かつ冷静に追及し、納税を求める必要があります。また、チームプレーが重要なので、上司や先輩・同僚と適切にコミュニケーションをとり、厳しい上下関係にも対応するスキルが必要です。

このように、国税専門官は相手に応じて適切なコミュニケーションをとるスキルが欠かせません。民間でも業種を問わずコミュニケーションスキルが求められるため、強くアピールできるポイントです。

国税専門官からのおすすめの転職先

国税専門官が民間へ転職するチャンスは大きいですが、とくに以下の転職先では知見やスキルを活かしやすく、マッチする可能性が高いでしょう。

会計事務所や税理士法人

まず考えられるのが会計事務所・税理士法人です。マッチする大きな理由は、税務・会計に関する専門知識を活かせるためです。顧問先に税務調査が入った際にも税務署がチェックするポイントを理解しているため、税務署との交渉に役立てることができます。

加えて、国税専門官として一定年数以上働くと税理士試験の科目免除が受けられます。そのため会計事務所や税理士法人で税理士として働きたい場合にも、国税専門官であることは大きなアドバンテージになります。

事業会社のバックオフィス

事業会社のバックオフィスも転職先候補のひとつです。主に経理や財務部がマッチしやすいですが、一部の企業では内部監査でのニーズもあります。これらの部署では税務・会計の知識を活かしやすく、税務調査対応も可能です。会計事務所や税理士法人のような外部専門家としての立場とは異なり、自社の一員として法令遵守と利益の向上を目指すことができます。国税専門官として培った調査や検査のノウハウは、内部監査で活かすことが可能です。

金融機関

銀行や証券会社などの金融機関でも、国税専門官としての知見を活かせます。金融機関は民間であっても公共性・公益性が高く、高い倫理観と専門性のある人材を求めているため、国税専門官出身であれば評価される可能性があります。クライアントの決算書の分析や融資判断、自行・自社のバックオフィス業務など幅広い場面で知識や経験を活かせるでしょう。

財務系のコンサルティング会社

財務系のコンサルティング会社へ転職し、財務・会計コンサルタントとして活躍する人もいます。仕事内容は資金調達や投資戦略、節税方法など多岐にわたりますが、いずれも税務や会計に関する専門知識が不可欠です。国税専門官の場合は人脈を活かした情報収集が可能というメリットもあります。

また、コンサルタントは基本的にアナリストやプロジェクトマネージャーなどとチームを組み、協力してプロジェクトに取り組みます。そのため、国税専門官時代にチームプレーを経験してきたことは大きな強みになるでしょう。

商工会議所

商工会議所は、地域の企業が抱える経営課題の解決や地域振興に取り組む民間の団体です。

地元の中小企業の経営支援をおこなっており、たとえば税金の申告や帳簿の書き方、節税のアドバイスなどの場面で税務や会計の知識が役立ちます。全国に500以上の商工会議所が存在しています。求人も多くはありませんが、各商工会議所の採用サイトのほかハローワークなどでも出ていることがあります。

国税専門官から転職する場合の注意事項

国税専門官からの転職では、以下の点を理解しておく必要があります。

年収は下がることが多い

人事院の「国家公務員給与等実態調査の結果」によると、税務職の平均給与月額は428,330円、年間で約510万円です。賞与は6月期、12月期の年2回でいずれも2.25ヶ月分なので、約190万円となります(令和6年度)。ざっと計算するとだいたい年収700万円くらいということです。

参考:人事院|令和5年国家公務員給与等実態調査の結果

国家公務員の諸手当の概要

年収700万円を民間企業で得るのは容易ではありません。もちろん企業規模や役職によっても異なりますが、転職時の年収は下がることも多い点は覚悟しておきましょう。

前職での知見を活かして成果を出せば、昇進して将来的に年収を上げることは可能です。将来的に税理士になって独立すれば、努力次第では大きく稼ぐことも夢ではありません。

志望動機の伝え方に注意

公務員は母体が国や地方自治体であるのに加えて、年功序列で昇給していくことや解雇のリスクが低いことなどを理由に安定性が高いと言われます。したがって、採用担当者の大きな関心事のひとつは「なぜ安定した公務員という立場を捨てて民間企業に転職するのか?」という点なので、志望動機の伝え方には注意が必要です。

たとえば「前職ではやりがいを感じられなかった」などのネガティブな理由は、税金を使って仕事をしている性質上、よく思わない担当者もいます。民間でしか成し遂げられず、かつその企業だからこそ実現できると思った前向きな理由を伝えましょう。

国税専門官の転職活動のポイント

国税専門官からの転職では、転職活動の時期や転職のタイミングを見極めることがスムーズな転職のポイントとなります。

繁忙期の転職活動は難しいから時期を考慮する

2月~3月の確定申告の時期は国税専門官の繁忙期にあたります。この時期は仕事が忙しく休暇を取得することも難しいので、面接の日程調整などスケジュールが組みにくくなります。また、会計事務所や事業会社の経理部など応募する先も繁忙期で対応できないため、人材募集は繁忙期が過ぎてからと考えている場合も少なくありません。転職活動の時期はできるだけ繁忙期を避けて始めたほうがよいでしょう。

税理士になるなら勤務10年以上が最初のタイミング

税理士として働きたいなら、国税専門官のメリットである試験免除制度を活かせるタイミングで転職するのも有効な方法です。勤続10年以上で3科目が免除されるので、会計事務所などで実務経験を積みながら残り2科目の合格を目指していくといった方法が考えられるでしょう。

転職エージェントを利用する

国税専門官として働きながらの転職活動は可能ですが、転職活動では基本的に平日に仕事を休んで面接に臨む必要があり、日程調整が難しい場合があります。エージェントに依頼すれば休める日を伝えたうえで日程調整をしてくれるため、調整に時間や労力をかける必要がありません。

また、希望にマッチしたキャリアの提案や志望動機の書き方のアドバイス、面接対策など転職活動全体をサポートしてくれます。転職の不安が大きい場合でも安心して活動を進められます。

国税専門官が相談するべき転職エージェント

国税専門官は専門性が高い職種なので、その専門性を活かせる求人を扱う「特化型」と呼ばれるエージェントの利用がおすすめです。

ハイスタ税理士

ハイスタ税理士は、税理士や科目合格者の転職に特化したエージェントです。会計業界の転職市場に精通しており、専門性の高いアドバイスを受けられます。税理士資格を取得して民間で活躍したい国税専門官におすすめです。

公式サイト:https://hi-standard.pro/tax/

BEET-AGENT

BEET-AGENT

BEET-AGENTは、経理や財務、内部監査などの管理部門人材に特化して転職をサポートしています。とくに、リーダーやミドルクラスの支援を得意としているため、経験豊富なミドル層の国税専門官は相談してみましょう。

公式:https://beet-agent.com/

MS Agent

MS Agent

MS Agentは、管理部門と税理士や会計士などの士業を専門に扱うエージェントです。特化型として30年以上の実績がある老舗のエージェントなので、蓄積されたノウハウや企業とのコネクションを活かした希少性の高い情報を提供してもらえます。

公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/

ジャスネットキャリア

ジャスネットキャリア

ジャスネットキャリアは、税理士・会計士・経理人材に専門特化したエージェントです。専門性が高いエージェントなので的確なアドバイスとサポートに期待できます。単なる求人紹介にとどまらないキャリアサポートを得意としているため、国税専門官としてのキャリアを活かす方法を相談してみましょう。

公式サイト:https://career.jusnet.co.jp/

REXアドバイザーズ

REXアドバイザーズは税理士・会計士・経理・財務人材向けの転職エージェントです。

会計事務所・税理士法人から事業会社、コンサルティングファームまで多彩な求人を扱っています。シニア、マネージャークラスの支援が得意なので、経験豊富な国税専門官におすすめです。

公式サイト:https://www.career-adv.jp/

まとめ

国税専門官は高度な税務や会計の知識を活かして、会計事務所や事業会社のバックオフィス、財務系コンサルなどさまざまな場所での活躍が可能です。

公務員から民間への転職となるため志望動機の伝え方などに注意する必要があるため、転職エージェントのサポートを受けながら活動を進めましょう。

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ハイスタ税理士

一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。

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