税理士になるために学歴は影響しない!資格取得までの要件や流れも紹介

未経験の転職

更新日:2024.07.30

公開日:

税理士は国税庁管轄の難関国家資格で、税金や会計の専門家として企業や個人の会計業務や税務相談、提案を行います。令和5年度より税理士資格の受験資格要件が緩和され、以前より受験しやすくなりました。

しかし、受験しやすくなったとはいえ難易度が高い資格なので、学歴が高くないと資格取得が難しいと思っている方もいるでしょう。

本記事では、税理士資格の取得に学歴が影響するのか、必要な要件や取得までの流れを解説します。

税理士に学歴が必要ない理由

結論、税理士試験を受験するにあたって学歴は関係ありません。つまり、税理士になるために学歴は影響しないということです。

まずは、その理由を説明していきます。

令和5年度から受験試験要件が緩和された

受験者数の減少や多様な人材の確保を背景に、税理士試験の受験要件が緩和されました。令和元年から令和5年までの受験者数・合格者数を見る通り、令和5年度の試験は大きく数値が変化していることがわかります。

  受験者数 合格者数 合格率
令和元年 29,779人 5,388人 18.1%
令和2年 26,673人 5,402人 20.3%
令和3年 27,299人 5,139人 18.8%
令和4年 28,853人 5,626人 19.5%
令和5年 32,893人 7,125人 21.7%

参考:税理士試験|国税庁

今回大きな緩和となったのは「簿記論と財務諸表論」です。

以前は、高校生や大学生が会計学の科目を受験するためには、日商簿記1級合格などの要件を満たす必要がありました。しかし、令和5年度から簿記論と財務諸表論の受験資格要件が撤廃され、 誰でも2科目は受験可能です。

また税法科目は、令和5年以前まで法律学または経済学に属する科目を最低1科目履修する必要がありました。そのため、法学部や経済学部以外の学生にとっては受験のハードルが高かったといえます。令和5年度からは必須履修科目を限定せず、「社会科学」と広範囲に改正され、受験資格を得やすくなりました。

参考:税理士試験の受験資格要件の緩和|日本税理士会連合会

学歴は試験合格率に影響しない

令和5年度の試験結果データをみるとおり、高卒~大卒まで毎年一定数の合格者がでています。

学歴 合格率
令和3年 令和4年 令和5年
大学卒 17.7% 18.6% 21.1%
大学在学中 31.1% 29.8% 30.5%
短大・旧専卒 14.3% 13.8% 13.6%
専門学校卒 16.1% 17.9% 16.4%
高校・旧中卒 22.5% 22.1% 23.8%

参考:税理士試験|国税庁

税理士にとって学歴よりも必要な経験・スキル

税理士になるためには、税理士法第三法で定められた「必要な実務経験」があります。具体的には、「会計または租税に関する事務業務に通算して2年以上従事していること」です。

また実務経験や専門的知識以外にも、税理士には以下のようなスキルが求められます。

  • コミュニケーション能力
  • 情報処理能力
  • 分析力
  • 提案力
  • 営業力
  • 語学力

税理士試験を受けられる3つの要件

税理士試験の受験資格は、以下3つのどれかを満たしていれば受けることが可能です。

いずれかの学識を有している

学識を有していることの要件は、以下のとおりです。

  1. 大学、短大または高等専門学校を卒業し、「社会科学」に属する科目を1科目以上の履修
  2. 大学3年次以上で、「社会科学」に属する科目を1科目以上含む62単位以上の取得
  3. 一定の専修学校の専門課程を修了し、社会科学に属する科目を1科目以上の履修
  4. 司法試験の合格者
  5. 公認会計士試験(短答式試験)の合格者

社会科学とは、社会学、ビジネス学、コミュニケーション学、教育学、政治学、行政学、政策学、福祉学、心理学、統計学の科目が該当します。

特定の資格を有している

特定の資格を有している要件は、「日商簿記検定1級」あるいは「全経簿記検定上級」の合格者です。

日商簿記検定1級は2級や3級と比べて学習範囲が広く難易度も上がり、合格率は10%前後です。全経簿記検定上級は、日商簿記検定1級と同じ程度の難易度で合格率は15〜20%程度です。

特定の業務に2年以上従事している

必要な特定業務は、以下のとおりです。

  • 法人や個人事業主の会計事務
  • 銀行や信託会社、保険会社などにおける資金の貸付・運用事務
  • 税理士や弁護士、公認会計士などにおける業務の補助事務

また、以下は実務経験にカウントされる業務内容の例です。

  • 税務官公署での事務や官公署、会社などでの税務事務
  • 貸借対照表や損益計算書を利用した会計事務
  • 仕訳帳などから各勘定への転記事務
  • 日計表または月計表を作成して、記録の正否を判断する事務
  • 決算業務や事務
  • 財務諸表の作成に関する業務や事務
  • 帳簿組織を立案し、記録と帳簿記入の事項を照合する事務

経理実務に携わっていても、単純な事務や電卓を使用した入出力業務は、税理士登録に必要な実務経験として認められない場合があります。また、残業や休日出勤であっても「勤務時間外に行われた業務」はカウント対象となりません。

学歴や職歴によって税理士試験科目が免除されるケース

税理士を目指す方のなかには、学位や職歴によって試験科目が免除になる場合があります。

修士や博士の学位を取得している

税理士試験科目が免除されるケースの1つ目は、修士や博士の学位取得です。

平成14年3月までに大学院に進学し、修士または博士の学位を取得した場合は、免除が適用になります。商学の学位ならば、会計学の「簿記論」と「財務諸表論」、財政学の学位ならば、税法系の科目が免除対象です。

平成14年4月1日以降は免除制度が改正され、以下のようになりました。

修士の学位

要件を満たした場合、各科目の残っている科目が免除となります。

  • 会計系あるいは税法系の修士論文で学位を得ていること
  • 税理士試験のそれぞれの科目で1科目以上合格すること

例1)会計学の学位を取得したケース

財務諸表論(会計学)に合格した場合は、簿記論(会計学)が免除

例2)税法の学位を取得したケース

所得税法の試験に合格した場合は、残りの必要な税法科目が免除

博士の学位

会計学に属する科目の学位を持つ者は、会計系の「簿記論」「財務諸表論」、税法に属する科目の学位を持つ者は、税法系の科目「選択必修科目」「選択科目」が免除となります。

一定期間税務署に勤務している

一定期間税務署に勤務していた場合も、試験科目が一部免除になります。勤務年数が10年または15年以上は税法科目が免除、23年または28年の場合は会計科目が免除です。

最近では、科目免除制度を利用して税理士を目指している方の割合も増えています。1科目の合格だけでも難易度が高いため、5科目合格を目指す人の中には10年以上の期間を必要とするケースも珍しくありません。

税理士になるまでの4ステップ

税理士になるには、次のいずれか1つに該当しなければなりません。また、(1)または(2)に該当する方は、実務経験が通算2年以上必要です。

  1. 税理士試験に合格した者
  2. 税理士試験を免除された者
  3. 弁護士
  4. 公認会計士

税理士になる資格がある方は、所定の流れに沿って登録を進めましょう。

受験資格を満たしているか確認する

弁護士や公認会計士の資格を有していない方は、税理士試験の合格が必要です。

税理士試験の受験資格には、国籍や年齢の制限はありません。令和5年度からは、受験資格の要件緩和により簿記論と財務諸表論は誰でも受験可能となりました。しかし、税法に属する科目においては、学識あるいは資格、職歴のいずれかの要件を満たす必要があります。要件を満たしていない場合、受験できないため事前に確認しましょう。

税理士試験に合格する

税理士試験は、毎年8月上旬に各国税局・国税事務所の所在地で実施されます。試験科目は会計学と税法の計11科目の中から選択します。合格点は各60点以上、会計学2科目と税法3科目合格が必要です。

会計学である「簿記論」と「財務諸表論」は2科目とも必須科目であり、税法の「所得税法」または「法人税法」はどちらかの選択が必須科目になります。

分野 科目 選択/必須 備考
会計学
  • 簿記論
  • 財務諸表論
必須 誰でも受験可能
2科目合格
税法
  • 所得税法
  • 法人税法
1科目以上が選択必須 受験要件を満たす必要がある
3科目合格
  • 相続税法
  • 消費税法または酒税法
  • 国税徴収法
  • 住民税または事業税
  • 固定資産税
選択科目

参考:税理士試験の概要|国税庁

実務経験を積む

税理士試験に合格しても、実務経験を積まなければ税理士になれません。必要な実務経験は、試験合格前からでも取得可能です。

実務経験は最低2年以上が必要で、勤務先は同一でなくても問題ありません。ただし、実務経験の計算期間に含む際には、すべての勤務先で「在職証明書」が必要となるので注意しましょう。

税理士名簿への登録手続きをする

税理士名簿の登録は、日本税理士会連合会が行っています。ただし、登録の申請書類は、地区の税理士会に提出し手続きを行います。登録に際しての実務経験や必要な手続きに関する確認は、各地区の税理士会にお問い合わせください。

税理士として就職する

税理士の登録完了後は、税理士事務所や税理士法人、金融機関、企業の財務部門など自分のやりたい業務内容に合った職場や働き方を選択可能です。

税理士として仕事を続けるには年会費が発生するため、会費を納めなけばなりません。税理士会と各支部会の両方に入会します。会費は地方によって差異があり、費用は平均年間10~15万円程度です。

税理士におすすめの転職エージェント3選

ここからは、税理士への転職におすすめの転職エージェントを3つ紹介します。

ハイスタ税理士

ハイスタ税理士は、税理士や税理士科目合格者の転職支援に特化した転職エージェントです。

エージェント全員が税理士専門であるため業務への理解が深く、キャリアプランを一緒に考え、希望に沿った転職を叶えるサポートをしてくれます。採用企業と求職者の双方を1人が担当する体制であり、ミスマッチの少ない転職が実現できるでしょう。

公式サイト:https://hi-standard.pro/tax/

ジャスネットキャリア

ジャスネットキャリア

ジャスネットキャリアは、「会計」「税務」「管理部門」に特化した転職エージェントです。

取引企業は6,200社を超え、採用実績は業界最大級です。登録者向けの教育や情報サービスが充実しており、キャリア面談の満足度は90%を超えています。正社員や派遣社員、時短勤務、在宅勤務など幅広い働き方を実現できます。

公式サイト:https://career.jusnet.co.jp/

REXアドバイザーズ

REXアドバイザーズは、会計士、税理士専門の転職エージェントです。相談から転職対策、入社まで手厚いサポートが受けられます。監査法人や税理士法人、上場企業、会計事務所、金融機関など会計や財務の求人が豊富です。

公式サイト:https://www.career-adv.jp/

まとめ

本記事では、税理士資格の取得までの要件や流れを解説しました。令和5年度から受験資格要件が緩和されたことで、さらに学歴関係なく受験しやすくなりました。難関資格を突破できれば、自分の目指すキャリアプランや働き方を実現できるかもしれません。

edit_note この記事を書いた人

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ハイスタ税理士

一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。

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