税理士の転職
更新日:2026.02.28
公開日:2026.02.28
「税理士なのに営業が必要なの?」「どうやってクライアントを獲得すればいい?」「営業職出身だが、税理士業界に転職できるのか?」
税理士は専門資格職でありながら、近年は営業力がキャリアを大きく左右する時代になっています。独立開業して顧問先ゼロからスタートする場合はもちろん、会計事務所や税理士法人に勤務する場合でも、新規顧客の開拓や既存顧客の関係強化は避けて通れない課題です。
一方で、営業職・法人営業・個人営業の経験を持つ方にとっては、そのスキルが税理士業界で高く評価されるという事実はあまり知られていません。営業力を武器に税理士事務所・税理士法人への転職を成功させ、年収アップを実現するケースも増えています。
この記事では、以下の内容を網羅的に解説します。
税理士として営業に取り組みたい方も、営業経験を活かして税理士業界へ転職を考えている方も、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
かつて税理士は「看板を出せばクライアントが来る」と言われた時代がありました。しかし現在は、税理士の登録者数が増加し続ける一方で、記帳代行ソフトや確定申告アプリの普及によって中小企業・個人事業主が自力で処理できる範囲が広がっています。そのため、選ばれる税理士になるためには、専門知識と同様に営業力が不可欠な時代になっています。
税理士業界において営業力が重視されるようになった背景には、主に以下の3つの構造的変化があります。
1. 税理士の供給過多
日本税理士会連合会の統計によると、税理士登録者数は年々増加しており、2024年時点で約8万人を超えています。一方、税務申告が必要な法人・個人事業主の数は大きく増えているわけではなく、同じパイを多くの税理士で奪い合う構造になっています。
2. 会計・税務ソフトの普及
freee・マネーフォワードクラウド会計などのクラウド会計ソフトの普及により、記帳や確定申告を自社で完結する事業者が増加しました。従来の「記帳代行+申告」だけでは差別化が難しくなり、付加価値の提案力・顧客関係構築力が求められるようになっています。
3. 顧問契約の価格競争
インターネット上での税理士比較サービスや紹介サービスの台頭により、顧問料の透明化・低価格競争が進んでいます。価格だけで選ばれないためには、信頼関係の構築と継続的な提案活動、すなわち営業力が差別化の鍵となります。
こうした背景から、独立開業税理士だけでなく、税理士法人や会計事務所に勤務する税理士にも「営業」への意識と行動が求められるようになっています。
一口に「税理士の営業」といっても、開業税理士と勤務税理士では求められる営業の役割と内容が大きく異なります。
| 項目 | 開業税理士 | 勤務税理士 |
|---|---|---|
| 営業の目的 | 新規顧問先の獲得・事務所の経営維持 | 所属事務所・法人への貢献・評価向上 |
| 主な営業活動 | Web集客・紹介・セミナー・広告など | 既存顧客のフォロー・アップセル提案・紹介依頼 |
| 営業の裁量 | 高い(自分で戦略・予算を決定) | 低め(事務所方針に従う) |
| 営業スキルの影響 | 収入に直結する | 昇給・昇進・評価に影響する |
| 求められる人材像 | セルフマネジメント力・提案力 | コミュニケーション力・顧客維持力 |
開業税理士にとっての営業は、事務所の存続に直結する経営活動そのものです。顧問先ゼロからのスタートとなる独立開業初期は特に、積極的な営業活動なしには経営が成り立ちません。
一方、勤務税理士にとっての営業は、既存顧客との関係維持や追加サービスの提案が中心です。また、近年は税理士法人や大手会計事務所において「顧問先開拓担当」「営業担当」として採用されるポジションも増えており、営業スキルを持つ税理士の市場価値は年々高まっています。
次章では、開業税理士・勤務税理士それぞれが活用できる具体的な営業手法を10種類に絞って解説します。
税理士が顧問先を獲得・維持するための営業手法は多岐にわたります。ここでは、実際に多くの税理士が活用している代表的な手法を10種類に整理し、それぞれの特徴・メリット・デメリット・向いている人を解説します。自分のフェーズや強みに合った手法を選ぶことが、営業成功の第一歩です。
最も成約率が高く、コストもかからない営業手法です。既存の顧問先から「知り合いの会社も税理士を探している」と紹介してもらうケースや、友人・知人ネットワークを通じて顧問先を獲得するケースが含まれます。
メリット
デメリット
実践のポイント
紹介を待つだけでなく、「知り合いで税理士を探している方がいれば、ぜひご紹介ください」と明示的に依頼することが重要です。日頃から顧客満足度を高めることが、紹介の土台となります。
地域の銀行・信用金庫・信用組合、または弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士などの士業との連携により、顧問先を相互に紹介し合うネットワークを構築する手法です。
メリット
デメリット
実践のポイント
まずは地域の異業種交流会や士業勉強会に参加し、顔を覚えてもらうことからはじめましょう。金融機関については、担当者との定期的な情報交換が関係維持のカギです。
事務所のホームページを制作し、「地域名+税理士」「業種+税理士」などのキーワードで検索上位表示を目指す手法です。長期的に集客できる「資産型」の営業手法として、多くの税理士事務所が取り組んでいます。
メリット
デメリット
実践のポイント
地域密着型(「渋谷区 税理士」など)または業種特化型(「飲食店 税理士」「不動産 税理士」など)のキーワード戦略が有効です。専門ブログ記事を定期的に更新することで、SEO評価を高めることができます。
X(旧Twitter)・Instagram・YouTube・TikTokなどのSNSプラットフォームを通じて税務・会計に関する有益な情報を発信し、フォロワーを顧問先候補として育てる手法です。
メリット
デメリット
実践のポイント
プラットフォームの特性に合わせた使い分けが重要です。Xは税務情報の発信・同業者との交流、Instagramは事務所の雰囲気・スタッフ紹介、YouTubeは節税・確定申告解説など、目的に応じて活用しましょう。
「創業者向け節税セミナー」「相続対策勉強会」「インボイス対応説明会」など、見込み客が関心を持つテーマでセミナーや勉強会を開催し、参加者を顧問先候補として育てる手法です。
メリット
デメリット
実践のポイント
テーマは「参加者が今すぐ知りたい内容」に絞ることが重要です。インボイス制度・電子帳簿保存法・相続税改正など、法改正タイミングに合わせたセミナーは集客効果が高い傾向にあります。セミナー後の個別相談会を設けることで、顧問契約につながりやすくなります。
税理士ドットコム・ミツモア・税理士紹介センタービスカスなど、税理士と顧問先をマッチングする紹介サービスに登録し、問い合わせを獲得する手法です。
メリット
デメリット
実践のポイント
プロフィールや対応業種・得意分野を詳細に記載することで、マッチング精度を上げられます。価格だけで選ばれないよう、自分の専門性や実績を具体的にアピールすることが重要です。
新規開業した企業や特定エリアの事業者に対して、直接訪問・電話・郵送によるダイレクトメールで営業をかける手法です。古典的な手法ですが、地域密着型の事務所では今でも活用されています。
メリット
デメリット
実践のポイント
法人設立登記のタイミング(法務局の登記情報を活用)でアプローチするのが有効です。ただし、誇大表現・虚偽表示・品位を損なう勧誘は税理士法で禁止されているため、内容には十分注意が必要です。詳しくは後述の「禁止されている営業行為」をご確認ください。
Google広告・Yahoo!広告などのリスティング広告や、地域のフリーペーパー・ポスティングチラシによる広告を出稿し、問い合わせを獲得する手法です。
メリット
デメリット
実践のポイント
リスティング広告は「地域名+税理士 無料相談」「創業 税理士 相談」などの検索意図が明確なキーワードに絞ることで、費用対効果を高められます。少額でテスト出稿し、効果を測定しながら予算を調整するアプローチが有効です。
税務・会計に関する専門記事を外部メディアへ寄稿したり、新聞・雑誌・ウェブメディアの取材に応じることで、専門家としての認知度と信頼性を高める手法です。
メリット
デメリット
実践のポイント
まずは自社ブログや専門情報サイトへの寄稿からはじめ、実績を積むことで大手メディアへの露出機会につながります。特定の業種・テーマに特化した「専門家」として一貫した発信を続けることが、認知拡大の近道です。
すでに顧問契約を結んでいる既存顧客に対して、追加サービス(相続税対策・事業承継・資金調達支援・経営コンサルなど)を提案するアップセルと、新規顧客の紹介依頼を組み合わせた手法です。
メリット
デメリット
実践のポイント
顧問先の経営状況・課題・将来計画を日頃から把握しておくことで、タイミングの良い提案が可能になります。「先生に相談してよかった」という体験の積み重ねが、自然な紹介につながります。顧問先の決算期の3か月前など、定期的なフォロー面談を設けることが有効です。
以上10種類の営業手法を紹介しました。どれか1つに集中するよりも、自分のフェーズや強みに合った手法を複数組み合わせることで、安定した集客につながります。次章では、これらの営業活動で押さえるべき重要なポイントを解説します。
営業手法を知るだけでなく、実際に成果を出すためには、いくつかの本質的なポイントを押さえる必要があります。どれだけ多くの手法を実践しても、以下の基本を外すと成約につながりません。
税理士の営業で最も重要なのは、「自分が提供できるサービスを売り込む」のではなく、「顧客が抱える課題を解決する提案をする」という姿勢です。
顧問先となる事業者が税理士に求めていることは、申告書の作成だけではありません。資金繰りの改善、節税対策、事業承継の準備、補助金・融資サポートなど、経営上の様々な悩みを抱えています。まずは顧客の状況と課題をヒアリングし、その課題に対して自分がどのような価値を提供できるかを示すことが、成約率を高める最大のポイントです。
実践のポイント
税理士の数が増加し続ける現在、「何でも対応できる税理士」としての訴求は埋没するリスクがあります。見込み客が複数の税理士を比較検討する際に選ばれるためには、明確な専門性・特徴・強みの打ち出しが不可欠です。
差別化の軸として有効なものには以下があります。
差別化の軸が明確になると、ホームページのコンテンツ・SNSの発信・紹介ネットワークの方向性もすべて一致させやすくなり、営業活動全体の効率が上がります。
見込み客が税理士との契約を躊躇する理由は、大きく「4つの不」に集約されます。営業トークの事前準備では、この4つの不安・不満・不信・不急をそれぞれ解消する準備をすることが重要です。
| 4つの不 | 内容 | 解消策 |
|---|---|---|
| 不安 | 本当にこの税理士に任せて大丈夫か | 実績・資格・対応事例を具体的に示す |
| 不満 | 現在の税理士・状況への不満が解消されるか | 課題ヒアリングを徹底し、改善点を明示する |
| 不信 | 言っていることが本当か、信用できるか | 第三者の評価・口コミ・紹介者の存在を活用する |
| 不急 | 今すぐ決める必要はないか | 決算期・法改正対応など「今動くべき理由」を提示する |
初回面談前に想定Q&Aを用意し、顧問料の説明・サービス範囲の明確化・契約後の流れを丁寧に説明できるよう準備しておくことで、見込み客の意思決定をスムーズに後押しできます。
税理士の営業活動は、税理士法および日本税理士会連合会の会則・倫理規定によって一定の制限が設けられています。違反した場合には懲戒処分の対象となるため、営業活動を行う前に必ず把握しておく必要があります。
税理士法第48条の16(準用する弁護士法の規定を含む)および税理士法施行規則により、事実と異なる内容や誇大な表現を含む広告は禁止されています。
具体的に禁止される表現の例は以下の通りです。
事実であっても、受け手に誤解を与える可能性のある表現は禁止されています。たとえば、一部の条件下でのみ適用される節税効果を、すべての顧客に適用されるかのように表示することは、誤解を招く表現に該当します。
他の税理士・税理士法人・会計事務所と自分のサービスを比較する広告表現は、品位を損なうとして禁止されています。
税理士の品位および税理士業界全体の信用を損なうおそれのある表現も禁止されています。
上記の禁止行為に違反した場合、以下のリスクが生じます。税理士として活動する以上、営業活動においても高い倫理観を維持することが求められます。
| リスクの種類 | 内容 |
|---|---|
| 懲戒処分 | 戒告・業務停止・登録取消(税理士法第45条・第46条) |
| 信頼失墜 | 顧問先・紹介者からの信頼を損ない、既存顧客の離脱につながる |
| 景品表示法違反 | 誇大広告・優良誤認は消費者庁による措置命令・課徴金の対象となる |
| レピュテーションリスク | SNS・口コミサイトでの炎上・拡散による事務所イメージの低下 |
営業活動を始めたにもかかわらず思うように成果が出ない場合、特定のパターンに陥っていることが多いです。ここでは代表的な3つの失敗例と、それぞれの対策を解説します。
失敗例
「紹介だけで何とかなっている」「SEOだけに注力している」など、特定の集客チャネルに依存した結果、そのチャネルが機能しなくなった途端に新規顧問先の獲得が止まってしまうケースです。紹介元が廃業・引退した、SEO順位が急落した、といった外部要因で一気に集客がゼロになるリスクがあります。
対策
失敗例
差別化のために専門分野を絞ることは有効な戦略ですが、絞り込みすぎた結果、市場規模が小さくなりすぎて十分な顧問先を確保できないケースがあります。たとえば、特定の業種かつ特定のエリアのみに絞った場合、潜在顧客数が数十社しかない状況になることもあります。
対策
失敗例
「税務業務が忙しくて営業に時間を割けない」「ホームページは作ったが更新していない」「広告費をかけたくないのでSNSだけ試したが効果がない」など、営業活動への投資(時間・コスト・労力)が慢性的に不足しているケースです。営業活動は継続的な投資があって初めて成果が出るものであり、片手間での対応では効果が出にくいのが現実です。
対策
A. 事務所・法人によって異なりますが、明示的なノルマを設けているケースは少数です。
中小規模の税理士事務所では、スタッフに対して数値目標を課す慣習はあまり一般的ではありません。ただし、大手税理士法人や成長中の会計事務所では、顧問先開拓担当・マーケティング担当として採用する場合に、新規顧問先獲得数・問い合わせ件数などの目標を設定するケースがあります。面接時に確認しておくことをおすすめします。
A. 転職自体は可能ですが、営業スキルがあると評価が上がります。
税理士事務所・税理士法人の多くは、スタッフに対して積極的な営業活動を求めるわけではなく、まず税務・会計業務をこなせる人材を求めています。そのため、営業未経験でも税理士資格・科目合格・簿記資格があれば転職は可能です。ただし、事務所が顧問先開拓に力を入れている場合は、営業経験があると明確な差別化になります。
A. 税理士資格または科目合格と組み合わせることで、非常に有利になります。
税理士業界では、税務・会計の専門知識を持つ人材は多くいますが、営業・顧客開拓のスキルを持つ人材は少ない傾向にあります。そのため、「税理士資格(または科目合格)+営業経験」という組み合わせは、採用担当者から見て非常に魅力的なプロフィールとなります。特に、法人向け営業・金融営業・士業関連業務の経験がある場合は、業界ネットワークの持ち込みも期待され、一層高く評価されます。
A. 必ずしも自分で全てを行う必要はありませんが、初期は自分で動くことが基本です。
開業初期は外注できる営業予算も少なく、税理士紹介サービス・Web集客・知人への声かけなど、自分で動くことが中心になります。事務所が成長してきたら、Webマーケティングの外注・営業担当スタッフの採用・紹介ネットワークの委任などを組み合わせ、自分が営業に割く時間を段階的に減らしていくことが可能です。
A. 得意な手法を選べば、営業が苦手でも顧客獲得は可能です。
「対面での売り込みが苦手」という場合でも、ブログ・SNS・YouTubeによるコンテンツ発信(プル型営業)や、税理士紹介サービスへの登録など、直接的な売り込みを必要としない手法が多くあります。まずは自分の強みや得意なコミュニケーション手段に合った手法から始め、徐々に他の手法を組み合わせていくことをおすすめします。
本記事では、税理士の営業について、基礎知識から具体的な手法・注意点・転職活用まで幅広く解説しました。最後に重要なポイントを整理します。
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