監査法人から転職
更新日:2025/05/26
公開日:2025/05/26
公認会計士の登録にあたり、試験合格後に2年間の監査業務実務を積む必要があることから、公認会計士の多くは監査法人からキャリアをスタートさせます。
監査法人内では、スタッフ・シニアスタッフ・マネージャー・パートナーなどの職階が設けられており、法人内で昇級できる仕組みが整っている一方で、そのキャリアを選ばずに監査法人から転職したいと考える公認会計士は多くいます。
では実際監査法人から転職する場合、どのような選択肢があるのでしょうか?
本記事では、監査法人からの主な転職先を挙げながら、それぞれの場所に転職するメリット・デメリット、業務内容や求められるスキルについて解説します。
転職を成功につなげるために、本格的な転職活動に入る前に整理すべきポイントもお伝えします。
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目次
転職を成功させるには、基本的にこれまでの経験や知識を活かす方向で転職活動を進めるのがセオリーです。
公認会計士も同じなので、監査法人から転職する場合は監査法人での経験や知識を活かせる以下の転職先が主な選択肢になるでしょう。
それぞれの選択肢について、業務内容や転職メリットなどを解説します。
近年、公認会計士の転職先として多く挙げられているのが「事業会社」です。
高度化する会計業務への正確な対応や経理・財務部門の強化などの理由から、専門的な知見を持つ人材の確保を目的として公認会計士を募集する事業会社が増えています。
一般事業会社の業務内容は、経理部門での単体決算や連結決算、IFRS対応、経営企画室での事業戦略の企画・実行、監査法人への対応などです。
採用ポジションによっては、マネジメント業務が加わる場合もあります。
募集ポジションとしては、経営企画・財務部でのメンバーや管理職候補、内部監査やM&Aのためのスペシャリスト採用などがあります。
公認会計士資格をもっていれば、管理職として募集するケースも多いです。
監査法人では、外部の立場で決算書が適正かどうかを評価しましたが、事業会社では内部から会計業務を支える立場となるため、企業への貢献ややりがいを感じやすい点がメリットです。
福利厚生が充実している、労務管理体制が整っているなどワークライフバランスを保ちやすいのもメリットでしょう。
ただし、事業会社といっても会社ごとに風土や残業時間などは全く違うので、転職前に確認が必要です。
公認会計士とはいえ、企業独自の給与レンジに当てはめる必要があり、監査法人の年収が高水準であることを踏まえても多くのケースで年収は下がります。
また、人間関係の面でも監査法人とは違う悩みが生じる場合があります。
監査法人ではクライアント先や在宅で仕事をするなどの理由から、人間関係はそれほど密になりません。
対して、事業会社の場合は一緒に仕事をする同僚が固定で、リモートワークを導入していなければ毎日同じデスクで仕事をするのが一般的なので、同僚や上司と相性が合わない場合には苦労する可能性があります。
監査法人対応に関しては、監査法人の指導の意図を理解しているので経験を活かしやすいでしょう。
監査法人時代に、その業界の監査を担当した経験があると有利です。
また、IPO経験やM&Aなどのコンサル経験、IFRS(国際財務報告基準)への理解と決算書の作成経験なども評価されやすくなっています。
企業のグローバル化にともない、英語をはじめとする語学力のある人材が求められる傾向も強いです。
若手公認会計士を中心に人気なのが、コンサルティングファームへの転職です。
ファームの種類はいくつもありますが、公認会計士の転職先としてはFAS(財務・会計)系のコンサルティングファームが中心となります。
業務内容は財務デューデリジェンスやバリュエーション(企業価値評価)、ファイナンシャルアドバイザリーなどです。
会計システム・内部統制の統合や、フォレンジック(不正調査)にあたるケースも増えています。
募集ポジションについては、公認会計士の知識を活かせるといっても監査とは異なるフィールドなので、基本的に新人コンサルタントからのスタートが多くなります。
監査法人と似たような人事制度があるので、経験を積むと昇級することが可能です。
コンサルに転職した人からよく聞くのは「監査業務よりも面白い」「やりがいを感じる」といった声です。
監査意外の業務で専門性を高められる点をメリットに感じる人も多くいます。
また、監査法人からの転職では年収が下がるケースが多いところ、コンサルティングファームへの転職であれば年収維持もしくは上げることも可能です。
年収が高めである一方で、ハードワーク・残業時間が長くなる傾向にあります。
複数のプロジェクトを並行すると一気に忙しくなるという生活が続くため、心身が疲弊して早いタイミングで再転職を目指す人もいます。
コンサルタントとしての問題解決能力や高度なコミュニケーション能力が必要です。
また、TOEICの点数基準を設けて、一定の英語力を応募条件に掲げる求人も多いです。
税務に興味がある、将来的な独立を見据えて税務業務の経験を積みたいなどの理由から税理士法人や会計事務所へ転職する公認会計士も多くいます。
中小企業向けの決算や税務申告などの税務サービス、組織再編やM&Aに関する業務などが中心です。
募集ポジションとしては「クライアントの経営支援全般ができる人」といった形で募集されるケースが多くあります。
昨今の税理士法人・会計事務所では、クライアントから経営アドバイザリーを依頼されるケースが多いため、コンサルタントとしての業務を担う場合もあります。
税務業務を経験できるのが大きなメリットです。
監査だけでなく税務もできる公認会計士になれば、将来的な選択肢はぐっと増えるでしょう。
また、クライアントとの距離が近くてじっくり向き合える点や、一人で一社を担当するので全体像が見えやすい点などもメリットです。
独立プランがある方にとっては、所長との距離が近いので経営に触れられる点もメリットでしょう。
良くも悪くも所長の性格や考え方をダイレクトに受ける職場環境なので、所長と相性が合わないと働きにくさを感じてしまう場合があります。
細かな数字を正確に扱えるスキルが求められます。
中小企業の経営者とのコミュニケーションをとるケースが多いため、コミュニケーション能力も必要です。
FASを提供する会計事務所では、財務デューデリジェンスやバリュエーションの経験があると有利になるでしょう。
刺激的な環境ややりがいを求めて、ベンチャー企業へ転職する公認会計士もいます。
業務内容はIPO対応や資金調達・資金繰り、経営に関するアドバイスなどです。
ベンチャー企業では会計知識を持つ人材が不足しているため、募集ポジションとしてはCFO(最高財務責任者)や候補者が多くなります。
上場直後のベンチャー企業では内部監査部門でのポジションを募集するケースもあります。
上場に至れば高年収に期待できる点とやりがいが大きい点です。
短期間で濃い経験が積めて大きくレベルアップできるのもメリットでしょう。
IPOの知識や経営の視点も身につくため、将来的に独立を視野に入れている場合によい経験を積むことができます。
ハードワークである点、一人で何でもこなさなければならない状況になる点です。
監査法人は先輩の会計士が周囲にいて指導やフォローをしてくれる環境ですが、ベンチャー企業では相談相手や頼れる仲間がいない場合が多くあります。
また代表との人間関係の悪化で辞めてしまうケースも少なくないので、人間関係で大きく方向転換を余儀なくされるリスクがある点もデメリットでしょう。
投資家目線で転職先を選ぶ必要があり、会社を見る目が求められるのも難しい部分です。もちろん上場に失敗するリスクは常にあります。
上場に向けた社内統制や書類作成のスキルが必要です。
監査法人でIPO支援に関する業務を経験していた場合は評価されやすいでしょう。
また心身ともにタフであること、財務・会計の知識にとどまらず多様な知識を吸収しようとする意欲があることなどもベンチャー企業への転職には必要です。
監査法人という同じフィールドでも、大手監査法人と中堅監査法人では異なる点も多いため、法人規模を変えて転職するケースがあります。
業務内容は基本的に監査ですが、大手監査法人が縦割りの分業制であるのに対し、中堅監査法人では一人で幅広い業務を担当するという違いがあります。
募集ポジションはスタッフなのかシニアスタッフなのか、監査法人の欠員状況などによって異なります。ただしマネージャーの市場価値は非常に高いため、大手監査法人にいた公認会計士を管理職として募集するケースも多いです。
大手監査法人と比べると昇格しやすいので、比較的早い段階からインチャージ(現場責任者)やマネジメント経験を積めます。
先のキャリアを見据えて早くに経験を積みたい方には適しています。
また中堅監査法人はワークライフバランスの向上に力を入れているケースも多く、大手監査法人と比べると比較的残業が少ない傾向が見られる点もメリットでしょう。
大手監査法人と比べて年収が下がる点です。
また残業が少なく、ワークライフバランスが整った「ホワイト」な監査法人は欠員も出にくいので、そのような中堅監査法人に関しては求人が少ない点がデメリットといえるかもしれません。
大手監査法人で監査業務を経験したのなら、そのまま中堅監査法人でも活かせます。
ただし、一人で幅広い業務を担当するので、ひとつの分野の専門職というよりもオールラウンダーとしての能力が求められます。
監査法人は待遇がよく、教育・指導やキャリアアップの仕組みが整っているなど、あらゆる面から考えて恵まれた環境にあります。
そのため監査法人から転職したいと思ったら場当たり的に転職活動を始めるのではなく、以下の点を整理して慎重に転職活動をすることをおすすめします。
まずは、自分は何をしたいのか、将来どんな姿になっていたいのかを整理しましょう。
つまり転職の目的を明確にすることです。面接で「あなたはなぜ転職するのですか?」と聞かれたときに、はっきりと意思をもって答えられるかどうかをイメージしてください。
目的がなければ今後のキャリアのために必要な経験を把握できないため、応募先の選定基準がぼんやりしてしまい、法人・企業のネームバリューや年収といった表面的な基準で選んでしまうことになりかねません。
転職に法人の知名度や年収は関係ないとはいいませんが、それだけが軸だと転職して壁にぶつかったときに乗り越えるのは困難でしょう。
また転職の目的が曖昧なままに転職しても、いざ転職してから何のために転職したのかが分からなくなる可能性があります。
転職はしたものの将来のキャリアに必要な経験が積めずに大事な経歴に傷がついてしまい、結果的にキャリアの選択肢が狭まっていくリスクがあります。
本格的な転職活動を始める前に、監査法人で何を学んだのか、どんな経験ができたのかといったキャリアの棚卸しをしましょう。
担当会社の規模や担当業務、どんな貢献をしたのかまで細かく棚卸しを行います。
キャリアの棚卸しをすることで、監査法人で多くの経験を積めたのだという気づきを得られる場合もあります。
そのときは転職を思いとどまる選択肢をとってもよいでしょう。実際のところ、監査法人から転職した後に、「やっぱり監査法人がよかった」と考える人もいます。
転職活動を開始した後も、面接でこれまでのキャリアについて必ず聞かれるため、キャリアの棚卸し作業は無駄にはなりません。
どんな方でも、転職に際して条件があるはずです。
家族との時間を持ちたいので残業は少なめがいい、現職では人間関係によるストレスが大きいので雰囲気のよい職場で働きたいなどさまざまです。
条件を整理することでどんな転職先が適しているのかが見えてきて、応募先の選定に役立ちます。
まずは思いつくままに、気になる条件を書き出していきましょう。
そのうえで譲れない条件に優先順位をつけます。すべての条件を満たす転職はなかなか難しいものです。
条件に固執しすぎると選択の幅が狭まり応募にすら至らないので、どうしても譲れない条件に絞り、選択の幅に余裕を持たせたうえで適切な選択をすることをおすすめします。
公認会計士は難関試験を突破した優秀な人材なのは間違いないのですが、転職活動においてはつまずくケースが多くあります。
大半の公認会計士にとって、監査法人からの転職が初めての転職になるからです。
まともに自己分析すらしたことがない、転職活動は何をすればよいのか分からないという方も大勢います。
そのため監査法人からの転職を実現するためには転職エージェントに相談しましょう。
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会計士は働く場所にあまり困らない職種です。
そのため、会計士が転職活動をする際に、転職エージェントを利用する必要あるのかなと、疑問を持っている人もいるかもしれません。
この項目では、会計士の転職で転職エージェントを利用したほうがよい理由を紹介します。
非公開求人とは、何らかの理由に人材募集していることを知られたくない求人のことです。
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そうした情報を事前に確認できるため、転職後のミスマッチを避けられるのです。
また、異なる業界への転職を考えている場合、将来性について気になる方も多いはず。実際に働いている人たちの生の声は、転職活動で大いに役立つでしょう。
転職エージェントを利用すれば、さまざまなサポートが受けられるため、効率的に転職活動が行えます。
特に働きながらの転職活動だと、準備をする時間が取れないという場合も少ないでしょう。
転職活動の準備が不十分だと、ミスマッチにつながる可能性は高くなり、貴重な時間を無駄にしています。
前述したように、企業・業界の詳しい情報や面接日程の調整、履歴書の添削など、転職活動に役立つサポートが受けられます。
高度な専門性を持つ公認会計士は監査法人以外にもニーズがあるため、転職先の選択肢は豊富です。
ただし転職先によって業務内容や求められるスキルが異なるため、それぞれの特徴を把握し、自分にあったキャリアを選ぶようにしてください。
まずはなぜ転職したいのか、その目的を掘り下げて考えるところからスタートしましょう。
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edit_note この記事を書いた人
一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。
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