公認会計士の転職
更新日:2023/11/30
公開日:2022/01/14
近年、公認会計士から『CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)』にキャリアアップする方が増えてきました。
CFOといえば、CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)の次ぐ存在で会社の中心人物です。
近年の日本でも、CFOはCEOに次ぐ重要なポジションとして認知されていますが、CFOと経理・財務との明確にされているとまでは言えず、単純な経理人材の延長と考えている企業も多くあります。
CFO人材必要として必要とされているスキルや知識がまずは『ファイナンス』ということもあり、公認会計士が目指す到達点の一つになっていますが、企業サイドとの意識のギャップを埋めることが、CFOへのキャリアアップ ・転職を成功させるひとつのポイントといっても良いでしょう。
また、CFOになるだけではなく、企業の財務のパフォーマンスを高め、持続的な企業の成長を担い続ける(活躍し続ける)には個々の能力を高めていくことも求められます。
本記事では、公認会計士からCFOにキャリアアップするために必要な知識、そしてCFOとしての価値を高め続けるために、転職後に必要な知識などをまとめました。
CFOに求められる役割や年収、CFOになるためにアピールしたいスキルなどを解説しているので、CFOに興味のある方はぜひ参考にしていただければと思います。
目次
まず、CFOに求められる基本的な役割について解説します。
CFOに求められる役割のひとつが、資金の調達です。具体的には以下の3つの方法があります。
最もスタンダードな資金調達方法は、期限付きで融資を受けるというもの。融資を受けて、事業を軌道にのせてから利息と元本を毎月あるいは毎年返済していきます。他には、株式の発行が考えられるでしょう。
株式発行の最大のメリットは、調達した資金を返済する義務がないというところです。例えば、1株1万円の価値を持っていたものが事業の不振により1株100円までに価値が下がっても企業は補償義務を負いません。
また、集めた資金は使用用途を自由に決められます。しかし、株式を発行すると、買収や合併の可能性が発生するので、十分考慮する必要があるでしょう。
そして、持っているものを売って現金化する方法は、手早く資金調達ができるというメリットがあります。ただし、現金化する際は、もともとの価値よりも低い価格で売らなければいけないことが多いでしょう。
CFOはCEOらと協議して資本配分を決定します。投資家は資本配分決定の際のプロセスや経営陣が重視する点について気にしているので、きちんと説明しなければいけません。
また、株式会社であれば株主に対する利益還元を重要な経営課題のひとつとして位置づける必要があるでしょう。成長拡大時は、利益を還元しにくいですが、経営基盤が強化できたらしっかり考えていかなければいけません。
また、CFOは最高財務責任者であるため、財務状況を常に管理および指揮する立場にあります。事業を継続できるように短期的・中期的・長期的な視点で考える必要があるでしょう。
CFOは、企業価値の向上に取り組まないといけません。具体的には以下のような視点が必要でしょう。
常に成長して業績を拡大させ、利益を上げていかなければいけません。
次に、企業規模別でみたCFOに期待される役割の違いを解説します。ベンチャー・スタートアップと上場企業とでは、求められる役割が違ってくるので、公認会計士から転身するときは十分考慮してください。
まず、ベンチャー・スタートアップ企業の場合、IPOと継続的な利益の向上が重視されます。
企業によっては何年か以内にIPO(Initial Public Offering:新規株式公開)を目指しているところもあります。CFOはその目標を達成するために奮闘しなければいけません。上場するためには事業を根本的に変えたり上場準備を継続的に行ったりする必要があるでしょう。
実際のところは、上場準備が整わず、何度も延長している企業も少なくありません。CFOの強いリーダーシップが求められます。
また、利益が不安定になりがちなベンチャー・スタートアップ企業の安定化が必要です。事業の軸を確立させるためにはどういった取り組みができるかをCEOらと協議します。
一方、上場企業の場合、優良な株主に株式を持ってもらうことや、海外進出を考慮する必要があるでしょう。
優良な株主に株式を持ってもらうためにIR活動にも力を入れます。企業説明会や決算説明会などを定期的に開催し、株主や投資家に向けて自社の経営理念や方針を伝えるのです。事業年度終了後には、財務状況や今後の経営戦略をまとめたレポートを作成し、公表することもあります。自社のアピールも非常に大切なポイントです。
上場企業によっては事業のさらなる拡大のため、海外進出を目論むこともあるでしょう。そういったときにCFOはリーダーシップを発揮する必要があります。管理体制を整えて、グローバルな構築を目指すわけです。とくに会計知識の面で尽力します。
続いて、CFOに転身した場合の年収について解説します。
まず、経理・財務人材の年収に関してですが、『一般社団法人人材サービス産業協議会』の転職賃金2021によれば最低年収中央値の範囲は250万円〜600万円の間、最高年収帯に関しては1200万円という結果になっております。
これは首都圏の数字であり、地方にいくほど中央値は下がっていく傾向にあるのはわかります。
監査法人に勤め始めた1年目でも月給30~35万円ほどあるので、他の職種と比べて高給取りというイメージがあるでしょう。15年以上勤務して実績を上げると、年収が1,500万円を越えることあります。
年収(万円) | 決定者・決定求人内容の特徴(定性情報) |
1000~ | ・規模や業種を問わず、財務・リスク管理・IFRS・IRの責任者や部長以上の案件が中心。 ・経理経験10年以上、公認会計士資格・経験、上場支援など高度な財務業務の経験、上場企業での決算経験、管理職経験、監査法人・会計コンサル企業での会計関連業務経験。英語力が求められる場合もある。 ・40代~50代、同職種からの転職が多く、転職経験は2回以上が多い。20代~30代でコンサルティング業界から専門職としての転職もある。 |
800~999 | ・経理・IRの責任者、マネージャー、リーダー。企業規模が小さくなると総務、広報などの責任者と兼任の場合も多い。 ・経理経験5年以上、上場企業での経理財務経験、決算経験、IR経験、管理職経験、公認会計士、簿記2級以上。英語力が求められる場合もある。 ・30代後半~50代、同職種からの転職が多く、転職経験は2回以上が多い。 |
600~799 | ・経理の部長候補、課長、リーダー、スペシャリスト候補。 ・経理財務・IRなどの経験3年以上、上場企業での経験、管理職経験、簿記2級以上、英語力が求められる場合もある。 ・30代~40代前半、同職種からの転職が多く、転職経験は2回以上が多い。 |
400~599 | ・経理のリーダー候補や担当者、経営分析の担当者など。 ・ほとんどが経験者で、経理財務、IRなどで3年以上の経験、簿記2級以上。英語力が求められる場合もある。 ・20代後半~40代、他職種からの転職も多い。 |
300~399 | ・役職なしの担当者レベル。 ・多くは経験者だが未経験者も多い。簿記3級もしくは2級以上。 ・20代後半~30代前半、他職種からの転職が多い。 |
CFOはCEOの右腕的な存在になることが多く、CEOと一緒に企業価値の向上を考えます。CEOが立案した経営方針に対してどのような財務的戦略が必要になるのかを意見し、財務面で計画を執行する必要があるのです。そのため、経営企画のポジションを兼任するケースも多いため、下記では経営企画ポジションの年収についてもご紹介します。
最低年収中央値の範囲は375万円〜650万円の間、最高年収帯に関しては1500万円と、より経営に関わる人間の方が年収も比例して高くなることがわかります。
年収(万円) | 決定者・決定求人内容の特徴(定性情報) | |||||||||
1000~ | ・エキスパート、部長以上の管理職。 ・経営コンサルタント、同業界での責任者経験、M&A経験。 ・30代後半~60代、他職種からの転職が多い傾向。 |
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800~999 | ・エキスパート、マネージャーなど管理職。 ・大手企業での予実管理、会計の知見、経営企画経験。 ・30代後半~40代前半。 |
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600~799 | ・経営企画のリーダー、リーダー候補、担当者。 ・同業種もしくは同企業規模での経営企画、経理財務など経営企画に関連する業務経験。 ・30代~40代。 |
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400~599 | ・経営企画のリーダー、リーダー候補、担当者。 ・経営企画、経理財務など経営企画に関連する業務経験、経営コンサルタント経験。 ・20代後半~30代前半、他職種からの転職が多い。 |
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300~399 | ・経営企画の担当者。 ・経営企画、経理財務経験者。未経験者も多い。 ・20代後半~30代、他職種からの転職者が多い。 |
一方、CFOの年収は企業規模や業界によって大きく違ってきます。例えば、2021年時点で会長兼社長CEOであるソニー株式会社の吉田憲一郎氏はCFO時代から年収4億円を稼いでいました。
吉田氏は公認会計士出身ではありませんが、ソネット株式会社の社長CEOを経て、抜本的な構造改革を行い、長年にわたり業績が低迷していたソニー株式会社を見事に復活させています。その功績を評価すると妥当な評価と言えます。
参考:「年収1億円超」の上場企業役員ランキングTOP500 | 賃金・生涯給料ランキング | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
一方、ベンチャー・スタートアップ企業ではそれほどの高年収にはならないでしょう。証券会社や監査法人出身者だとしても、平均年収は1,000~2,000万円のあいだまで下がり、企業によっては年収800万円クラスなど、業界や業績によって大きく変わるケースは多いです。
続いて、CFOになるために公認会計士がアピールできるスキルについて解説します。CFOは狭き門ですので、今までのスキルや経験をしっかりアピールしなければいけません。
最も重視されるのが、経営管理に関する知識かもしれません。一般的な経理部長とは違い、CFOには経理管理に関する知識が必要ですので、その点をアピールできるとよいでしょう。
自社の資金状況を把握したうえで、業界内でのポジションを正確に判断し、企業価値を高めていくためのスキルを持っていることを証明します。
また、財務戦略の提案力や実行力もアピールしましょう。CFOは財務を統括する責任者であるため、財務戦略をリードしなければいけません。その提案力や実行力が強く求められます。
M&Aや合併などに備えて、企業価値の評価方法についての理解があることもアピールすべきでしょう。企業価値の評価方法には、時価純資産法(コストアプローチ)や取引事例比較法(マーケットアプローチ)、収益還元法(インカムアプローチ)などがあります。
それぞれの特徴やメリットデメリットを理解し、正しく企業価値を評価できる人間だと思ってもらえると、CFOに抜擢されるかもしれません。
CFOの大切な役割のひとつが、資金調達です。とりわけベンチャー・スタートアップ企業では資金調達に苦戦することもあるでしょう。
そういった場合にも、データを用いて、論理的に交渉しなければいけません。ときには、金融機関と交渉することもあるでしょう。金融機関はドライに判断することも多いので、確実に返済できることを論理的に伝える必要があります。
そういった交渉力は話していると相手に伝わるものです。自社のCFOにふさわしい人間か、しっかり判断されるでしょう。
交渉力と関連するスキルとしてプレゼン力も欠かせません。たとえば、投資家や金融機関から資金を調達するときに熱意を持ったプレゼンをすることになります。自社が秘めている可能性を具体的に伝える力が必要なのです。
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▶︎ IPO準備企業における経理・財務の役割と実務とは|IPO経験キャリアの市場価値についても解説
CFOになるために活かせる公認会計士としての経験やキャリアについて解説します。多くの公認会計士が監査法人に勤めているのではないでしょうか。その監査法人での経験は存分に活かせます。
まず、株式を投資家に売って証券取引所に上場し、株取引を開始するためのIPO支援や、株式上場を検討している企業に対して実現するための課題を抽出する調査を行うショートレビューの経験は役立ちます。
ベンチャー・スタートアップ企業の中には株式上場を目指しているところも少なくありません。自社に株式上場を達成するための機動力がないのなら、公認会計士の豊富な知識を借りたいと思うのも自然なことでしょう。
外部から支援を受けるだけでなく、CFOという立場で自社のメンバーとして受け入れたいと考えることもあります。IPO支援の経験はそう簡単にできるものではありません。だからこそ、貴重な人材だと判断してもらえます。
IPO支援と同様にショートレビューの経験もCFO候補になるために活かせるでしょう。株式上場するためには証券取引所の審査基準をクリアしなければいけないわけですが、財務基盤や内部管理体制、事情計画、ディスクロージャーなどを整備し、課題を洗い出し、課題を克服するのは容易ではありません。
優れた社長であっても一人で実行するのは困難でしょう。そこで、社長の右腕となるCFOを探すことはよくあることです。実際のところ、監査をこなしながらIPO支援やショートレビューの経験をしている公認会計士はいます。将来的にCFOになりたいなら、積極的にこういったチャンスを拾っていきたいところです。
また、M&Aや合併、投資、企業取引などの際に、対象となる企業の価値やリスクを正確に把握するためのデューデリジェンスの経験も活かせます。
対象企業を多角的な視点で審査できる分析力はそう簡単に身に付くものではないので、能力があると判断されたら、CFOとして迎え入れられる可能性が高まります。
具体的には下記のようなデューデリジェンスの経験があるとよいでしょう。
とくに、M&Aにおいては、合併や買収前の税務申告に関わるものと、合併や買収後の再編の際にかかる税についての調査があります。そのような対応をきちんと行えると評価されるような経験やキャリアがあるのが望ましいでしょう。
ベンチャー・スタートアップ企業にとっても上場企業にとっても、事業を拡大させるために資金調達が必要不可欠です。そこで、数多くいる公認会計士の中でも資金調達の経験を持っている方が求められます。
「監査業務×資金調達」といったイメージで、経験やスキルを掛け算していくと、需要のある人材になれるわけです。CFOになるのも夢ではありません。
最後に、公認会計士がCFOになるための4つの方法を解説します。闇雲に経営者や経営幹部との出会いを求めても仕方ありません。戦略を持って行動する必要があるわけです。
最もスタンダードなのが、管理職系の転職エージェントを利用することです。本サービスハイスタ会計士では、公認会計士を専門とした転職支援サービスですので、CFO待遇求人のご紹介が可能です。
公式サイト:https://hi-standard.pro/cpa/
ほか、管理部門系のエージェントと言えば、『MS Agent(旧MS-Japan)』なども有名でことろです。
実際企業の経営者層求人を多数保有していますので、登録すれば多数の求人紹介をうけることはできるでしょう。また、外資系企業への転職であれば、ランスタッドも良いと言えます。
キャリアカーバ―は、リクルートキャリアが運営する、ハイクラス・エグゼクティブ限定の会員制転職サイトです。ヘッドハンティング型転職サイトとして高い知名度を誇ります。
独自のコネクションやネットワークが豊富ですので、時間をかけてでもCFOになりたいという方にぴったりです。
ランスタッドは、本社をオランダに構え、世界39か国で人材ビジネスを展開する世界最大級の外資系転職エージェントです。
保有する求人のうち、半数が年収800万円以上で、年収2,000万円以上のハイクラスな求人も容易に見つけられます。まずは登録してみて非公開求人をチェックしてみたいところです。
ms-japanは、管理職や専門職、次世代リーダーなどのハイクラス向け転職サイトです。ハイクラス人材に特化した転職サイトとしては国内最大級で、豊富な求人がそろっています。公開求人でも12万7,000件あるので、ぜひチェックしてみたいところ。
また、監査法人や証券会社経由の紹介という方法もあります。監査法人だけでなく証券会社の選定がIPOの成否を握っているといっても過言ではありません。とくに、IPO実務の経験を有する監査法人や証券会社とのコネクションを持っておくのは大切です。
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▶︎ IPO準備企業における経理・財務の役割と実務とは|IPO経験キャリアの市場価値についても解説
現在、事業会社で働いているなら社内で実績を積み上げて、CFOに抜擢されるのを狙うという方法もあります。ハイレベルな会計知識やリーダーシップ、交渉力などを高く評価されるとCFOになるのも夢ではありません。
事業会社としても、あまり知らない外部からCFOを招き入れるより、よく知った公認会計士をCFOに昇格させるほうが安心で組織としての結束力も固まると考えるかもしれません。
CFOに興味を示しつつ、愚直に実績や信頼を積み重ねていきましょう。
他には、スカウトサービスに登録してチャンスをうかがう方法もあります。具体的には、「MS-Japan」や「dodaスカウトサービス」などがおすすめです。とくに、MS-Japanは、管理部門の特化型ですので、多くのチャンスが広がっています。大手上場企業や金融機関など幅広い求人があり、扱う求人数は業界トップクラスです。
今回は、公認会計士からCFOに転身するために必要な情報をまとめました。CFOに求められる役割や年収、CFOになるためにアピールしたいスキルなどを解説したので、CFOになるイメージを具体化させられたでしょうか。
公認会計士の仕事もやりがいがあり高収入で魅力あるものです。しかし、企業の中心人物であるCFOの魅力も多くあるので、興味があるなら転職エージェントサービスに登録するところから始めてみませんか。
【参考文献】
edit_note この記事を書いた人
一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。
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