税理士の転職
更新日:2024.12.17
公開日:2024.03.11
などの理由で、ワークライフバランスを意識した転職を考える税理士は少なくありません。
税理士は基本的に忙しい職種なので、ワークライフバランスの実現が困難だと思われがちですが、税理士であってもワークライフバランスを維持することは可能です。
税理士業界は深刻な人手不足が続いており、採用側の意識も変わってきています。従業員の働きやすさを真剣に考える職場も増えているため、ワークライフバランスを意識した転職をするにはよい時期です。
では具体的にどんな転職先でワークライフバランスの実現が可能なのでしょうか。この記事では転職先ごと、希望ごとにワークライフバランスの実現可能性について解説します。
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目次
最初に、税理士の労働時間とワークライフバランスに対する考え方について解説します。
税理士は経営者でない限りは雇用されて働くため、勤務時間は一般的な会社員と変わりません。9時~18時の1時間休憩、8時間勤務が典型です。休日もカレンダー通りであることが多いでしょう。
ただしこれはあくまでも規則上の勤務時間や休日であって、税理士の実労働時間はこれよりも長いケースが多いです。とくに決算時期や確定申告の時期は繁忙期にあたり、深夜の帰宅が続くケースも珍しくありません。
新型コロナの拡大に際して、一般企業ではリモートワークやテレワークの導入が増えましたが、会計事務所においては導入事務所は全体の約34%、残り70%近くが導入の予定もないことが『会計事務所白書』の調査でわかっています。
事務所の体制や本人の意向次第ではありますが、ワークライフバランスの一環でリモートワーク導入事務所への転職を希望する方は、増えている印象です。
柔軟な働き方の推進や長時間労働の解消などを目的に、2019年4月から働き方改革関連法案が順次施行されました。
これにともないワークライフバランスという言葉も頻繁に見聞きするようになり、社会全体がワークライフバランスを意識するようになった印象を受けます。
税理士も例外ではなく、働き方改革をきっかけに自身の働き方を見つめ直し、ワークライフバランスを求める人が増えています。
税理士は繁忙期の忙しさもあり、ワークライフバランスの実現は難しいと考える人もいるかもしれません。しかし、税理士であっても転職でワークライフバランスを改善することは可能です。
以前は税理士のキャリアパスといえば会計事務所がメインで、その後は所内で働き続けるか独立するか、あるいはほかの事務所へ転職するかといった選択を迫られるケースが多数でした。
しかし現在、税理士のキャリアパスは多様化しています。転職先の選択肢が豊富にあり、それぞれに業務内容や働き方・労働環境が異なるため、適切な転職先を選べばワークライフバランスの改善は可能です。
少子高齢化による労働力人口の減少や、税理士試験受験者の減少などを背景に、税理士は売り手市場が続いています。
そのため税理士の雇用先では、優秀な税理士を確保するために自社のワークライフバランスを整える必要性が高まりました。
採用側の意識として、「働きやすい環境を提供しないと人材が集まらない」との危機感が強まっているため、以前と比べて制度や仕組みが充実しているのです。
労働力人口の減少や地域経済の衰退、環境負荷などへの有効な対策として、政府はデジタル化やテレワークを進めてきました。そして東京オリンピックや新型コロナウイルス感染拡大を大きなきっかけとして、社会にデジタル化やテレワークが浸透しました。
こうした社会情勢も後押しとなり、税理士業界でもデジタル化やテレワークの導入が進められています。
たとえばオンラインでのコミュニケーションによって移動時間や会議時間が短縮して総労働時間が減る、子育て中のスタッフが柔軟な働き方ができるなど、ワークライフバランスの改善につながるケースが増えています。
デジタル化についても、記帳の自動化などによって業務量を減らし、無駄な残業の削減に取り組む会計事務所などが出てきました。
税理士はワークライフバランスを意識して転職先を選ぶ前に、以下の点を押さえておく必要があります。
まずは自分が求めるワークライフバランスとは何かを定義しましょう。
たとえば残業がまったくないことを希望するのか、残業が月30時間以内であればよいのか、あるいは残業は多くてもよいから休みをしっかり取りたいのかなど人によって捉え方が異なります。
自分の本当の希望を踏まえて定義づけしないと、ワークライフバランスという言葉だけが一人歩きしてしまい、適切な転職先を見つけるのが難しくなってしまいます。
税理士のワークライフバランスは「メリハリ」がポイントです。
税理士は業務の性質上、どうしても繁忙期が発生します。1年を通じて毎日定時に帰宅できれば理想かもしれませんが、仕事柄なかなか難しく、繁忙期を受け入れないと転職先がいつになっても見つかりません。
そのため特定の時期に忙しくなるのはある程度は受け入れる気持ちは必要です。
また育児などを理由に毎日定時で帰りたい場合などは、短時間勤務を選択し、短い時間でも最大限に能力を発揮するよう工夫することも必要でしょう。
いずれにしても優先順位をつけてメリハリのある働き方をすることが大切です。
ワークライフバランスを優先した転職では、残業時間や休日出勤が減ったり業務負担が減ったりすることで、年収は下がる可能性があります。
しかし年収は下がってもワークライフバランスを保てれば長期間働き続けることができ、所内でのキャリアアップも可能です。限られた時間でも結果を残せば同僚や上司から信頼され、自分のやりたい業務をできる可能性も高まります。
転職先を探すにあたり、事前に自分に合う制度や仕組みを整理しておきましょう。たとえば独身で子どもがいない人が子育て支援に力を入れている職場を選んでも、自分が思うワークライフバランスは実現できない可能性があります。
制度や仕組みとしては産前・産後休暇や育児休暇などの法律で定められたものと、テレワークやフレックス、時短勤務など職場ごとに独自で採用しているものがあります。
どんな制度や仕組みがあればワークライフバランスの改善につながるかを考えておくことで、転職先を選ぶ際にブレがなくなります。
ワークライフバランスの実現にITは欠かせない存在です。しかしITに拒否反応を示す税理士も少なからずいて、これまでのやり方を変えることを好まない場合があります。
転職でもITツールを導入している職場は自然と除外してしまうなどして、自ら選択肢を狭めてしまうのです。
ITを避けてばかりいるとワークライフバランスの実現が遠のいてしまうので、ITに苦手意識があったとしても積極的に向き合うことが大切です。やってみたら思いのほか簡単だった、想像以上の業務効率化が叶ったといったケースもあります。
ワークライフバランスを意識した転職では、自身のキャリアにつながる経験を積めるのかとの視点も重要です。
よくあるのは、転職後に残業が減ってしばらくは満足していたものの、一定期間が経過したときに「自分がやりたい業務と違っていた」と後悔するケースです。
ワークライフバランスは大事ですが、それだけでは仕事に対する満足感を抱けない場合が多々あります。働き方だけでなく、業務内容や将来のキャリアといった視点も忘れずに転職先を選びましょう。
税理士の主な転職先別に、ワークライフバランスの取りやすさについて解説します。
大手税理士法人はクライアント規模が大きく数も多いこと、案件が集中することなどから基本的に忙しい傾向が見られます。とくに繁忙期の忙しさはすさまじく、その期間も長めです。
とにかく長時間労働を改善したいと考える人には不向きです。
一方、記帳代行や記帳指導などの日常業務が少ないため、閑散期の休みは比較的取りやすい傾向があります。また個人事務所に比べれば福利厚生や制度が充実しているため、子育て後に復帰しやすいなどのメリットもあるでしょう。
会計事務所や税理士事務所は、確定申告や決算時期を除いて比較的ワークライフバランスは取りやすいケースが多いです。
組織規模が小さい分、柔軟な対応をしてもらえるのはメリットでしょう。所員の家庭環境や事情を気にかけ、働き方に対して細やかな配慮をしてくれる事務所も少なくありません。
ただし、所長の考え方や人員数に左右されるのもまた事実です。所長が「長時間労働=評価されるべき」など前時代的な考え方をもっていると、ワークライフバランスの実現は困難でしょう。
また人員数が少ないと休みたくても休めないといった状況になりやすいため、少しの余裕もないほど人員数を抑えている事務所は注意が必要です。
税理士の転職先としては多くないですが、一般企業でワークライフバランスを実現する人もいます。
一般企業の場合はほかの転職先と異なりクライアントワークではないため、突発的な業務が発生しにくく、業務量の見通しが立てやすいのがメリットです。
決算期などの繁忙期に備えて日頃から準備をしておく、家庭の用事は閑散期に済ませておくなど、ある程度計画的に対策をしておけます。
ただし、ほかの転職先に比べると転職の実現性が低いのが難点です。税理士の専門性を活かせる特殊業務の担当者をピンポイントで募集しているケース等を除き、税理士のニーズは高くありません。
一般企業での経理経験がある場合は別ですが、税理士資格があるからといって採用されるわけではないので、転職活動は苦戦する可能性もあるでしょう。
とくに転職の理由がワークライフバランスの実現となると、税理士資格がありながらあえて一般企業へ転職する意味が薄れてしまうので、応募の際に説得力のあるアピールができなくなります。
そのため一般企業への転職では、その企業でどうしてもやりたい業務があるなど、ワークライフバランス以外の理由でチャレンジすることをおすすめします。
コンサルティングファームは基本的に激務なので、労働時間を減らすという意味のワークライフバランスは実現できない可能性が高いです。
一方、業務がプロジェクトごとに発生するため、プロジェクトがない時期に長期休暇を取りやすい職場が多い傾向にあります。ご自身にとってのワークライフバランスが「長期休暇の取りやすさ」であればフィットする可能性はあるでしょう。
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ワークライフバランスに関する希望別に、どんな転職先がマッチしやすいのかを解説します。
中小規模の会計事務所で実現できる可能性があります。
中小規模の会計事務所はとくに人手不足が深刻なので、税理士を確保するために柔軟な働き方を受け入れたり制度や仕組みを構築したりと工夫しています。
また転職の難易度は高いですが、一般企業の経理も労働時間を抑制できる可能性があります。決算期などの繁忙期はありますが、労務管理上、深夜労働が毎日続くといった状況は避けやすいでしょう。
育児・介護制度があるかはもちろん大事ですが、法律で定められたルールである以上、どの職場でも制度自体は存在します。重要なのは実際の活用状況と、職場の理解があるのかといった点です。
その観点からすると、大手税理士法人や大手企業など規模が大きい職場のほうが叶えやすい傾向があります。規模が小さい職場だと代替要員の確保が難しく、急な早退や休みに対応できない可能性があるためです。
また規模が大きいほうが多様な人材がいる分、家庭の事情に理解を示してくれたり過去に制度を利用した人がいたりする可能性があります。
大手税理士法人やコンサルティングファームで実現できる可能性があります。
総労働時間は長めですが、閑散期やプロジェクトが進んでいない時期に長期休暇を取得するのは組織文化として受け入れられやすい傾向があります。
中小規模の会計事務所等だと仕事が属人化しやすく休暇中の業務が滞ってしまうため、長期休暇の取得は難しいでしょう。一般企業は組織文化として、個人的な長期休暇の取得に理解が得られない場合があります。
自分のペースで働きたい人は、フレックスタイム制度やテレワークなど柔軟な働き方の仕組みを導入している職場が適しています。
中小規模の会計事務所やコンサルティングファームなどで導入しているケースがあるので、求人情報や面接で確認してみてください。
近年は税理士業界全体で高齢化が進み、若手の人材不足が問題視されています。税理士資格を受験・取得する若手が減っていることもあり、資格取得を目指す人材を支援する動きが活発化しています。
そのため、資格取得に対する理解が大きい職場を選ぶことで、仕事と受験勉強の両立が叶えられるでしょう。
具体的には、中小規模の税理士事務所・会計事務所などは所員に資格を取得してもらうメリットが大きいため、理解を得られるケースが多いです。
一般企業やコンサルティングファームは、税理士事務所などと違い税理士資格そのものが評価されるわけではないため、税理士試験を理由に残業をしないというのは難しいでしょう。大手税理士法人も案件数が多く忙しいため難しいケースが大半です。
ここまで紹介したのはあくまでも傾向であって、実際にワークライフバランスを改善できるかどうかは個別の転職先ごとに判断する必要があります。転職先を見極めるポイントを解説します。
離職率は重視したいポイントです。もちろん、離職理由として必ずしも不満が原因だとは限りません。キャリアアップや家庭の事情などやむを得ない理由で離職する人もいるでしょう。
しかし職場全体で見たときの離職率が高ければ、従業員が働きにくいと感じている可能性は高いです。
ワークライフバランスを改善しようと転職した場合は不満を感じるリスクがあるため、離職率が高い職場は避けたほうが無難です。
残業時間を確認するときは、繁忙期と平時の残業時間をそれぞれ確認しましょう。
税理士は繁閑の差が激しい職種なので、1年の平均を聞いてもあまり意味がありません。繁忙期と平時の残業時間を確認することで、人員数や業務量が適正かどうかを判断できます。
女性は家事育児の中心的役割を担うケースが多いため、男性以上に働き方をシビアに判断します。女性が活躍している職場であれば男性も働きやすい可能性が高いでしょう。
人事担当者は必ずしも現場の実情に詳しくないため、実際の残業時間や有給休暇の取りやすさなどについて面接で質問しても、実態にそった答えが得られるわけではありません。
そのため転職してから一緒に働く予定の人からも話を聞けるのが望ましいでしょう。
すべてのケースで叶えられるわけではないですが、転職エージェントから先方に依頼することで現場スタッフとの面談機会を得られる場合などがあります。
実際の残業時間や制度の活用状況、組織文化などは求人情報からはなかなか見えてきません。
面接で質問することもできますが、質問しにくい項目でもあるでしょう。転職エージェントを利用すれば応募先の内部事情を教えてもらえます。
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最後に、ワークライフバランスを意識した転職活動で転職エージェントを使うときの注意点を解説します。
自分が定義したワークライフバランスと希望を具体的に伝えることが大切です。
漠然と「ワークライフバランスを改善したい」とだけ伝えても、エージェントは残業が何時間以内ならよいのか、休みが少なくてもよいのか等を判断できません。
結果的に希望と異なる求人を紹介されてしまう場合があるため、できるだけ具体的に伝える必要があります。
ワークライフバランスを重視する場合、転職先の形態にこだわりすぎず、幅広く探すことが大切です。
たとえば「ワークライフバランス=一般企業」とのイメージをもつ人は多いかもしれません。もちろん、一般的な傾向としてはあるのですが、一般企業といっても多種多様であり、必ずしも残業が少ないわけではありません。
勤務形態にこだわることで希望に合った求人がなかなか見つからなくなるため、固定観念を捨て柔軟に探しましょう。
勤務先の形態よりも「月の残業10時間以内」「勤務地が近い」など譲れない条件を設け、条件に合う求人の中で比較して決めることが大切です。
税理士は忙しい職種ですが、転職によってワークライフバランスを改善することは可能です。
どの転職先が適しているのかは、ご自身が思うワークライフバランスによって異なります。まずは希望や優先順位を整理するところから始めましょう。選択肢を限定しすぎず、柔軟な考えをもつことも大切です。
edit_note この記事を書いた人
一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。
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