税理士の転職
更新日:2026.05.13
公開日:2026.05.08
税理士としてのキャリアを次にどこで積むか。これは資格の活かし方そのものを左右する選択です。
税理士の有効求人倍率は2.31倍と、全産業平均の1.25倍を大きく上回っています。つまり、1人の税理士に対して2件以上の求人がある状態です。売り手市場であることは間違いありません。ただし、選択肢が多いからこそ「どこに行くか」を間違えると、数年後に同じ悩みを抱えることになります。
この記事では、税理士の転職先を7つに分類し、それぞれの業務内容や年収水準、向いている人の特徴を整理しました。目的別、年代別、科目合格段階別の選び方や、転職で失敗しやすいパターンについても踏み込んでいます。
「年収を上げたいのか」「働き方を変えたいのか」「独立の準備をしたいのか」。自分が転職で何を手に入れたいのかを明確にしながら読み進めてみてください。
無理な転職は勧めません。年収の適正診断や、今の事務所に残るべきかの判断から、業界特化のプロが徹底サポートします。
目次
税理士の資格を活かせる転職先は、大きく分けて7つあります。同じ「税理士」でも、どこで働くかによって担当する業務、年収水準、キャリアの伸び方がまるで違います。まずは全体像を押さえたうえで、自分に合う場所を絞り込んでいきましょう。
税理士事務所は、個人の税理士が所長として運営する事務所で、「会計事務所」という名称で看板を出しているケースも多いです。規模としては所長を含めて数名から十数名程度のところが中心になります。
業務の中心は、中小企業や個人事業主の記帳代行、月次巡回監査、決算・申告業務です。ひとりの担当者が顧問先を20〜30件ほど抱え、経理から税務申告、年末調整、場合によっては経営相談まで幅広く対応します。
この転職先の最大の特徴は、業務範囲の広さです。法人税、所得税、消費税、相続税と、税目を横断して経験を積めます。大手の税理士法人では担当領域が分業化されていますが、小規模事務所では一人で全工程を見ることになるため、独立開業を見据えた修行の場として選ぶ人が多いです。
一方で、年収水準は300万〜600万円程度と、税理士の転職先の中ではやや低めの傾向にあります。所長の方針や事務所の顧客基盤に依存する部分が大きく、同じ「会計事務所」でも待遇に差が出やすい点には注意が必要です。教育体制が整っていない事務所もあるため、入所前に業務の進め方や指導体制を確認しておくことをおすすめします。
税理士法人は、2名以上の税理士が社員となって設立する法人組織です。2001年の税理士法改正で設立が可能になり、日本税理士会連合会のデータによると、2026年2月末時点で主たる事務所の届出数は5,284法人に達しています。個人事務所と違い、組織として運営されるため、福利厚生や研修制度が整っている傾向にあります。
税理士法人は規模によって特徴が大きく異なります。
BIG4税理士法人は、デロイト トーマツ税理士法人、KPMG税理士法人、PwC税理士法人、EY税理士法人の4法人を指します。世界的な会計ファームの日本法人で、国際税務、移転価格、M&A関連の税務アドバイザリーなど高度な案件を扱います。初年度の年収は450万〜600万円程度ですが、マネージャークラスで1,000万円を超えるケースも珍しくありません。クライアントは上場企業やグローバル企業が中心で、専門領域を深めたい人には魅力的な環境です。ただし、繁忙期の業務負荷は相当なもので、ワークライフバランスを優先する人には合わない場合があります。
国内の大手・中堅税理士法人は、従業員数が数十名から数百名規模のところです。BIG4ほどの専門特化ではないものの、法人税務、資産税、事業承継など幅広い領域をカバーしています。年収は500万〜800万円程度が相場で、大手になるほど研修や評価制度が整備されています。
中小規模の税理士法人は、3名〜20名程度の組織です。業務内容は個人の税理士事務所に近く、顧問先の中小企業を中心に法人税務から個人確定申告まで幅広く対応します。代表社員との距離が近く、経営判断のプロセスが見えやすいのは小規模組織ならではのメリットです。
一般企業の経理部門や財務部門、税務部門で働く「企業内税理士」という選択肢もあります。いわゆるインハウスの税理士です。
業務内容は、法人税・消費税の申告、税効果会計、税務リスクの管理、税務調査への対応などです。上場企業であれば連結決算や有価証券報告書における税務注記への関与もあります。近年はグループ内再編や海外子会社との取引に伴う移転価格の論点が増えており、社内に税務の専門家を置くニーズは高まっています。
年収は企業規模と業種で大きく変わります。東証プライム上場企業の税務担当であれば600万〜900万円程度、管理職になると1,000万円を超えることもあります。中堅企業の場合は450万〜700万円あたりが目安です。
企業内税理士の大きなメリットは、福利厚生や勤務体制の安定性です。会計事務所や税理士法人に比べて、残業時間が少なく、土日祝日が確実に休めるケースが多いです。一方で、税務以外の経理業務を兼任するポジションもあり、税務の専門性だけを深めたい人にとっては物足りなさを感じることもあります。
また、企業内税理士は「社内で税理士資格を持っているのは自分だけ」という状況になりやすく、税法改正のキャッチアップや判断の相談相手がいない孤独感を覚える人もいます。この点は入社前に、税務部門の人員構成や外部の税理士との連携体制を確認しておくと安心です。
銀行や証券会社、信託銀行、保険会社などの金融機関も、税理士の知識を活かせる転職先です。
銀行であれば、法人融資の審査部門で財務分析や税務DD(デューデリジェンス)を担当したり、富裕層向けのプライベートバンキング部門で相続・事業承継のアドバイスを行ったりするポジションがあります。証券会社ではM&Aアドバイザリー部門での活躍が期待されます。信託銀行は遺言信託や資産承継に関する業務で税理士の知見が直接役立ちます。
年収水準はメガバンクや大手証券会社であれば600万〜1,000万円以上が見込め、税理士法人と比較しても遜色ないか、それ以上になることが多いです。金融機関特有の賞与水準の高さが、年収を押し上げる要因になっています。
ただし、金融機関への転職は税理士資格だけでは十分ではありません。金融商品の知識、コンプライアンスへの理解、営業的なスキルも求められます。「税務の専門家」としてだけでなく、「金融のプロフェッショナル」としての成長が必要になるため、純粋に税務をやりたい人には向かない環境です。
FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)系のコンサルティングファームや、事業再生、事業承継に特化したコンサルティング会社も、税理士の転職先として近年人気が高まっています。
ここでの業務は、税務申告そのものではなく、M&Aにおける税務DDや、組織再編スキームの検討、事業承継プランの策定、企業価値評価など、より上流の意思決定に関わる仕事です。クライアントの経営層に直接提案する場面が多く、税務知識を「コンサルティングの武器」として使う働き方になります。
年収は500万〜1,200万円と幅が広いです。成果報酬やインセンティブの比率が高いファームもあるため、実力次第で若くても高い報酬を得られる可能性があります。
向いているのは、税務申告の作業から離れて、もっと経営の意思決定に関与したいと考えている人です。ただし、コンサルティングファームの仕事は「正解が決まっていないテーマに向き合い続ける」ことが求められます。ルーティンの申告業務とは仕事のスタイルが根本的に異なるため、この違いに適応できるかどうかが転職成功のカギになります。
税理士の転職先として見落とされがちですが、官公庁や公的機関で働く道もあります。
たとえば、独立行政法人中小企業基盤整備機構では中小企業支援の一環として税務・会計の専門家を募集しています。地方自治体の税務課で嘱託職員として働く形態もあります。また、税務大学校の教官や、日本税理士会連合会をはじめとする業界団体での勤務も選択肢のひとつです。
年収水準は民間と比較すると低めで、400万〜600万円程度のケースが多いです。ただし、公的機関ならではの安定した勤務環境と福利厚生、定時退社しやすい雰囲気は大きなメリットです。
注意点として、官公庁への転職は求人数自体が少なく、公募のタイミングも限られています。常時募集しているわけではないため、興味がある場合は各機関のウェブサイトを定期的にチェックしておく必要があります。
税理士としての専門性を深めるというよりは、「公益的な仕事をしたい」「安定した環境で働きたい」という動機が強い人に向いています。
転職ではありませんが、独立開業も税理士のキャリアにおける主要な選択肢のひとつです。
独立すれば、顧問先の選定、報酬の設定、業務の進め方、すべてを自分の裁量で決められます。うまく軌道に乗れば、勤務税理士時代の年収を大きく上回ることも十分に可能です。日本税理士会連合会の第7回税理士実態調査でも、開業税理士の収入は所属税理士と比較して高い水準にあることが示されています。
ただし、独立には顧客の獲得、事務所の運営、資金繰り、採用、マーケティングと、税務以外のスキルが幅広く求められます。開業直後に十分な顧問先を確保できず、収入が不安定になるリスクもあります。
独立を見据えて転職する人は、「開業後にどんな分野で勝負するか」を先に決め、それに必要な経験を積める転職先を逆算して選ぶのが得策です。相続・事業承継に特化したいなら資産税案件の多い事務所、中小企業の経営支援をしたいなら顧問先との関係が密な小規模事務所や中堅法人が候補になります。
税理士の転職市場は活況ですが、「なんとなく環境を変えたい」で動くと、転職先でも同じ不満を抱えることになります。まず、税理士が転職を考える主な理由を整理しておきましょう。自分の転職動機がどこにあるのかを把握することが、適切な転職先を選ぶ出発点になります。
転職理由として最も多いもののひとつが、年収・待遇への不満です。
厚生労働省の2024年「賃金構造基本統計調査」から推計すると、勤務税理士の平均年収は約856万円です。ただし、これはあくまで平均であり、小規模な会計事務所で勤務する場合は400万〜500万円台にとどまることも珍しくありません。税理士試験の勉強に数年以上を費やし、難関資格を取得したにもかかわらず、同年代の大手企業勤務者と年収が変わらない、あるいは下回るとなれば、不満を感じるのは当然です。
特に、事務所の規模が小さいほど昇給のペースが緩やかで、「このまま5年いても年収が50万円も上がらないのでは」という将来への不安が転職を後押しするケースは多いです。
同じ事務所で3〜5年働くと、担当業務がルーティン化し、新しいスキルが身につかなくなる時期が来ます。記帳代行と申告書作成の繰り返しで、「このままでは税理士としての市場価値が上がらない」と感じる瞬間です。
特に、顧問先が中小企業中心の事務所では、組織再編、国際税務、M&A関連の税務といった高度な案件に触れる機会がほとんどありません。資産税の案件が少ない事務所で相続税のスキルを磨くことも難しいです。自分が伸ばしたい領域と、今の事務所で経験できる業務にギャップがあるなら、転職で環境を変えるのは合理的な判断です。
会計事務所や税理士法人は、繁忙期の負荷が集中しやすい業種です。1月から3月の確定申告シーズン、5月の3月決算法人の申告期限前後は、深夜残業や休日出勤が常態化している事務所も少なくありません。
20代や独身のうちは気力で乗り切れても、結婚や出産、介護といったライフイベントを機に「このペースでは続けられない」と感じる人は多いです。一般企業の経理部門や、比較的ワークライフバランスが取りやすい中堅税理士法人への転職を検討するきっかけになります。
小規模な会計事務所では、所長との相性が業務の満足度を大きく左右します。所長の経営方針に共感できない、指導スタイルが合わない、そもそも所長以外に税理士がいないため相談相手がいない、といった問題は、組織が小さいゆえに解消が難しいです。
また、税理士業界は高齢化が進んでいます。日本税理士会連合会の第7回税理士実態調査によると、60歳以上の税理士が全体の半数以上を占めています。所長が高齢で後継者が決まっていない事務所に勤めている場合、「この事務所はあと何年続くのか」という不安が転職の動機になることもあります。
将来の独立を視野に入れている税理士にとって、「今の環境で独立に必要な経験が積めているか」は切実な問題です。
独立後に必要になるのは、顧問先との関係構築力、営業力、幅広い税目の実務経験、そして経営者としてのマネジメント能力です。大手税理士法人の分業体制の中では、特定の税目に関する深い知識は得られても、顧問先とのコミュニケーションや事務所経営のノウハウは身につきにくいです。
逆に、小規模事務所にいる場合は「もっと高度な案件の経験を積んでから独立したい」という動機で転職を考える人もいます。独立というゴールから逆算して、足りない経験を補うための転職です。
無理な転職は勧めません。年収の適正診断や、今の事務所に残るべきかの判断から、業界特化のプロが徹底サポートします。
転職先を選ぶうえで最も重要なのは、「転職で何を実現したいのか」を明確にすることです。年収を上げたいのか、時間の余裕がほしいのか、専門性を高めたいのか。目的が違えば、最適な転職先もまったく異なります。
年収アップを最優先にするなら、BIG4税理士法人、国内大手税理士法人、またはコンサルティングファームが候補になります。
BIG4税理士法人はマネージャー以上に昇格すると年収1,000万円を超える水準に達します。コンサルティングファームも成果次第で高い報酬を得られます。金融機関も、メガバンクや大手証券であれば税理士法人と同等かそれ以上の年収が見込めます。
ただし、年収が高いポジションは業務負荷も高い傾向があります。年収800万円と年収1,200万円の差が、労働時間や精神的なストレスに見合うかどうか、冷静に考えることも大切です。
働き方を優先するなら、一般企業の経理部門が最有力です。上場企業やそのグループ会社であれば、フレックスタイム制やリモートワークを導入しているところも増えています。決算期以外は残業が少なく、年間を通じて安定した働き方がしやすいです。
もう少し税務の実務に関わっていたいなら、中堅以上の税理士法人で、労務管理がしっかりしているところを探すのもひとつの方法です。法人の規模が大きいほど人員に余裕があり、繁忙期の負荷が分散されやすい傾向があります。
官公庁や公的機関も安定性では突出しています。ただし求人が少ないため、「見つけたら即応募」くらいの心構えが必要です。
特定の税目で専門性を磨きたいなら、その領域に特化した税理士事務所や税理士法人を選ぶのがおすすめです。
資産税を極めたいなら相続税・贈与税の案件を多数扱う事務所、国際税務に強くなりたいならBIG4税理士法人や国際税務に力を入れている中堅法人が適しています。移転価格税制やタックスヘイブン対策税制といったニッチな分野は、扱っている事務所自体が限られるため、求人情報を幅広くチェックする必要があります。
専門特化のデメリットは、その領域以外の業務経験が薄くなることです。将来的に独立を考えている場合は、専門特化の期間を区切ったうえで、「何年後にどこまでのスキルセットを揃えるか」をプランニングしておくと軸がぶれにくくなります。
税務申告書を作る側から、経営の意思決定を支援する側に回りたい。そう考えている人には、コンサルティングファームへの転職がフィットします。
FAS系ファームではM&Aの税務DDや企業価値評価、事業再生系ファームでは再生計画の策定支援など、税理士の知識をベースにしながらコンサルタントとして働くことになります。クライアントの経営層と直接やり取りする場面が多いため、コミュニケーション力やプレゼンテーション力が問われます。
一般企業でも、経営企画部やCFO直轄のポジションであれば、経営の意思決定に近い場所で仕事ができます。ただし、こうしたポジションは求人数が限られるため、ピンポイントで狙う必要があります。
独立を見据えた転職で最も重要なのは、「開業後に扱いたい業務を、今のうちに一通り経験しておくこと」です。
中小企業向けの顧問業務で独立するなら、中小規模の税理士事務所で顧問先を直接担当し、経営者との信頼関係の築き方や営業のコツを学ぶのが近道です。資産税分野で独立したいなら、相続税申告の実績が豊富な事務所で数年間集中的に経験を積むのが効率的です。
もうひとつ見落とされがちなのが、「事務所経営の裏側」を見る経験です。顧問先の管理方法、スタッフの採用・教育、業務効率化のしくみなど、実務スキルとは別に経営のノウハウを学べる環境かどうかも転職先選びの判断材料に入れてください。
税理士の転職は、年齢によって市場からの評価や求められる経験が変わります。20代と40代では、同じ「転職」でも戦い方がまったく違います。
20代の税理士は、市場からの評価が非常に高いです。税理士業界は60歳以上が全体の半数超を占めており、若手人材は慢性的に不足しています。科目合格の段階であっても、20代というだけで歓迎する事務所は多いです。
この時期はポテンシャル採用が通用する最後のタイミングでもあります。未経験の領域への挑戦、BIG4税理士法人やコンサルティングファームへのキャリアチェンジなど、多少背伸びをした転職が成立しやすい年代です。
一方で、「とりあえずどこかに入れればいい」と安易に転職先を決めると、短期離職を繰り返すことになりかねません。20代のうちに2〜3年腰を据えて実務経験を積むことが、30代以降の市場価値に直結します。
30代は、税理士として最も転職の選択肢が広い年代です。実務経験が5年以上あれば即戦力として評価されますし、まだ柔軟性も期待される年齢帯です。
この年代で意識すべきなのは、「何の専門家としてキャリアを積むか」の方向づけです。30代後半に差しかかると、「法人税務に強い人」「資産税に強い人」「国際税務ができる人」といった形で、市場からの評価が専門領域に紐づくようになります。30代前半のうちに、自分が勝負する領域を見定めておくと、転職活動でもアピールの軸が定まります。
年収面では、BIG4税理士法人のシニアスタッフやマネージャークラス、あるいは一般企業の税務マネージャーポジションを狙える年代です。700万〜1,000万円の年収レンジが現実的なターゲットになります。
40代の税理士は、「何ができるか」だけでなく「何を率いたか」が問われます。マネジメント経験、チームの育成実績、大型案件のプロジェクトリーダー経験など、「個人の実務力+組織への貢献」がセットで求められる年代です。
転職先としては、中堅以上の税理士法人の管理職ポジション、一般企業の税務部長クラス、コンサルティングファームのシニアポジションなどが候補になります。年収は800万〜1,200万円程度を目指せるレンジです。
40代で気をつけたいのは、「転職の回数」と「在籍期間」のバランスです。短期離職が複数あると、「組織に馴染めない人では」という印象を持たれやすくなります。40代の転職は「最後の転職」にするつもりで臨むくらいの覚悟があるほうが、結果的にうまくいきます。
50代以降は、転職のハードルが上がるのは事実です。ただし、税理士は国家資格である以上、資格を持たない人材と比べれば選択肢は圧倒的に多いです。
50代の転職で多いのは、中小規模の税理士事務所で後継者候補として迎え入れられるケースです。所長の高齢化が進む事務所では、「将来的に事務所を引き継いでくれる経験豊富な税理士」を求めているところがあります。これは50代ならではのポジションです。
独立開業も50代からでは遅くはありません。長年の実務で培ったネットワークと信用は、若手にはない武器です。ただし、体力面やIT環境への適応力を自覚したうえで、無理のない事業計画を立てることが前提になります。
税理士試験は5科目合格で資格取得となりますが、全科目に合格していなくても転職は可能です。科目合格の段階に応じて、評価されるポイントと現実的な転職先が変わります。
簿記論や財務諸表論に合格している段階であれば、中小規模の税理士事務所や会計事務所への転職が現実的です。特に簿記論は実務に直結する科目であるため、会計事務所では評価されやすいです。
この段階では「税理士資格の取得を目指して勉強中」であること自体がアピールポイントになります。勉強を支援する体制がある事務所を選ぶことで、働きながら残りの科目の合格を目指すことができます。
年収は300万〜450万円程度が相場です。「科目合格者歓迎」と明記している求人は多いので、求人票をしっかり確認してください。
3科目以上合格していると、市場での評価はぐっと上がります。法人税法や相続税法といった税法科目に合格している場合はなおさらです。中堅以上の税理士法人や、大手税理士法人のスタッフ職にも応募できるようになります。
一般企業の経理部門でも、3科目以上の合格者は「税務の知識がある経理人材」として評価されます。企業内税理士を目指す場合は、この段階で動くのもひとつのタイミングです。
年収は450万〜600万円程度が目安です。合格科目の組み合わせによっても評価が変わるため、面接では「なぜこの科目を選んだのか」を自分のキャリアプランと結びつけて説明できるように準備しておくと好印象です。
5科目合格を達成すると、転職先の選択肢が一気に広がります。BIG4税理士法人、コンサルティングファーム、金融機関、一般企業の税務スペシャリストなど、資格保有者のみが応募できるポジションに手が届くようになります。
特に大きいのは、税理士登録ができることで「独立開業」という選択肢が加わる点です。すぐに独立しなくても、「登録済みの税理士」として対外的な信用が高まるため、コンサルティングファームで顧客対応する際や、一般企業で税務調査に立ち会う際に大きなアドバンテージになります。
5科目合格直後は、自分の市場価値がピークに近い時期です。複数の転職先を並行して検討し、焦らずに最適な選択をすることが大切です。
転職先の選び方が分かっても、実際の転職活動で失敗しては意味がありません。税理士の転職を成功させるために押さえておきたいポイントを5つ挙げます。
転職活動を始める前に、まず自分が経験してきた業務を具体的に書き出してください。「法人税の申告をやっていました」では粒度が粗すぎます。
担当した顧問先の業種と規模、対応した税目、特殊な案件の経験、使用していた会計ソフト。こうした具体的な情報を整理しておくことで、職務経歴書にも面接の受け答えにも説得力が出ます。「年間30件の法人申告を担当し、うち5件は売上10億円以上の中堅企業」というレベルまで落とし込めると、採用側はあなたの実力を正確に評価できます。
年収、業務内容、勤務地、残業時間、職場の雰囲気、成長機会。転職先に求める条件をすべて満たすポジションは、ほぼ存在しません。
だからこそ、優先順位をつけることが必要です。「年収は最低600万円、業務内容は相続税を含むこと、勤務地は東京23区内」のように、絶対に譲れない条件と、できれば満たしたい条件を分けて整理しておくと、判断に迷う場面で軸がぶれにくくなります。
求人票に書かれている情報だけでは、実際の職場環境は分かりません。面接の場で「繁忙期の平均残業時間」「直近1年の離職率」「入社後の教育体制」を具体的に質問してみてください。
会計事務所や税理士法人の場合、所長や代表社員の人柄が職場の雰囲気を決定的に左右します。可能であれば、面接だけでなく事務所見学や先輩社員との面談の機会を設けてもらうと、入社後のギャップを減らせます。
税理士事務所への応募とコンサルティングファームへの応募で、同じ志望動機を使い回すのは避けてください。相手が求めている人物像が違う以上、アピールすべきポイントも変わります。
BIG4税理士法人であれば「高度な専門性を身につけたい理由」と「チームで働く姿勢」を、一般企業であれば「事業会社の中で税務スキルをどう活かすか」を、コンサルティングファームであれば「なぜ申告業務からコンサルに移りたいのか」を、それぞれ具体的に語れるようにしておく必要があります。
税理士の転職は、一般的な転職サイトだけでは十分な情報が得られません。税理士業界に特化した転職エージェントは、非公開求人の紹介だけでなく、事務所の内部事情や面接対策に関する具体的なアドバイスをくれます。
特に、「この事務所は繁忙期にどのくらい忙しいのか」「この法人は中途入社者の定着率がどのくらいか」といった、求人票には載らない情報を持っているのが特化型エージェントの強みです。複数のエージェントに登録して比較するのがおすすめです。
無理な転職は勧めません。年収の適正診断や、今の事務所に残るべきかの判断から、業界特化のプロが徹底サポートします。
税理士の転職で後悔する人には、いくつかの共通したパターンがあります。事前に知っておけば回避できるものばかりなので、自分に当てはまらないか確認してください。
提示された年収に飛びついて転職したものの、業務内容が想像と違っていた。これは転職の失敗パターンの定番です。
たとえば、年収が高いコンサルティングファームに転職したけれど、実際の業務は営業活動が中心で、税務の専門性を活かす場面がほとんどなかった。一般企業の高年収ポジションに転職したら、税務の仕事は全体の2割で、残り8割は一般経理の月次処理だった。こういうミスマッチは、事前の情報収集が足りないときに起こります。
年収だけでなく、「毎日何をやるのか」を必ず確認してください。面接で業務内容の詳細を聞くことは、失礼でも何でもありません。
1月〜3月は確定申告、5月は3月決算法人の申告と、税理士業界は年の前半に繁忙期が集中します。この時期に転職活動を並行すると、面接の準備や企業研究に十分な時間を割けず、判断を誤りやすくなります。
転職活動を開始するなら、6月〜10月の閑散期が理想的です。この時期は業務に余裕があるだけでなく、採用する側もじっくり面接に時間を取れるため、お互いにミスマッチが起きにくくなります。
税理士試験の合格発表が例年11月末〜12月頃にあるため、その前後も求人が増えるタイミングです。合格科目が増えた直後は市場価値が上がるため、このタイミングで動き始めるのも戦略として有効です。
税理士業界は、転職回数がやや多めでも許容される傾向にあります。会計事務所や税理士法人を2〜3社経験してから独立する人も多いため、一般企業と比べると転職回数に対する見方は寛容です。
とはいえ、1〜2年での短期離職が複数あると、さすがに「すぐ辞める人」という印象を持たれます。この場合は、転職ごとに「何を得て、何が足りなかったから次に動いたのか」をストーリーとして説明できるようにしておくことが大切です。
「○○の経験を積むために△△事務所に入り、目標を達成したため次のステップとして□□法人に移りました」というように、キャリアに一貫したロジックがあれば、転職回数はマイナスになりにくいです。
税理士の転職先に関するよくある質問をまとめました。
明確な年齢の上限はありません。40代、50代での転職事例も実際にあります。ただし、年齢が上がるほど求められるスキルや経験のレベルは高くなり、ポジションも限定されます。40代以上で転職する場合は、マネジメント経験や専門領域での実績が武器になります。税理士には定年がないため、70代、80代で現役の人もいます。年齢よりも「何ができるか」で勝負する世界です。
6月〜10月の閑散期が動きやすい時期です。業務に余裕がある分、面接の日程調整や企業研究に時間を使えます。また、11月末〜12月の税理士試験合格発表の前後は、合格者を狙った求人が増えるタイミングでもあります。1月〜3月の繁忙期は、転職先の事務所も人手が足りないため採用を急ぐケースがありますが、自分自身も多忙なため冷静な判断が難しくなりやすいです。
一般企業ほど不利にはなりません。税理士業界では、複数の事務所で経験を積むことがキャリアの一部と見なされることが多いためです。ただし、1年未満の短期離職が複数あると、さすがに敬遠される傾向はあります。転職回数が多い場合は、それぞれの転職に明確な理由とキャリア上の目的があったことを説明できるよう準備しておいてください。
科目合格があれば、未経験でも採用されるケースは十分にあります。特に、中小規模の税理士事務所や会計事務所では「未経験者歓迎」の求人が一定数存在します。20代であればポテンシャル採用が通用しやすいです。30代以上の場合は、前職での経理経験やビジネス経験がプラス評価になります。まったくの業界未経験であっても、「なぜ税理士業界を選んだのか」を具体的に語れるかどうかが採否を分けます。
可能です。税理士業界では科目合格者を積極的に採用しています。1〜2科目の合格であっても、中小規模の事務所では十分に評価されます。3科目以上であれば中堅税理士法人への応募も現実的になります。求人票に「科目合格者歓迎」「科目合格者優遇」と記載されている求人を中心に探すと効率的です。なお、科目合格段階での転職については、本記事の「科目合格段階別」の章でより詳しく解説しています。
税理士の転職先は、税理士事務所、税理士法人、一般企業、金融機関、コンサルティングファーム、官公庁、独立開業と7つの選択肢があります。どれが正解かは、「あなたが何を求めているか」によって変わります。
年収を上げたいならBIG4やコンサルティングファーム。ワークライフバランスを重視するなら一般企業。専門性を磨くなら特化型の事務所。独立を目指すなら幅広い実務経験が積める中小規模の事務所。転職の目的が明確であればあるほど、選ぶべき転職先は自然と絞り込まれます。
だからこそ、「なんとなく良さそう」で決めるのではなく、目的、年代、キャリアビジョンの3つを掛け合わせて、自分にとって最善の転職先を選んでください。
Hi‑Standard税理士では、キャリア相談から、勤務税理士としての最適な転職先のご紹介まで、税理士のキャリア全般を無料でサポートしています。一人で悩まず、まずはプロに相談してみませんか。
年収の頭打ち、激務な繁忙期、古い体質の事務所への違和感。
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edit_note この記事を書いた人

一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。
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