公認会計士の転職
更新日:2023/11/07
公開日:2023/10/04
公認会計士は会計分野における豊富な知見と資格の優位性によって、多数の選択肢の中から転職先を選ぶことができます。それゆえにどの転職先が自分に合うのか、判断に迷うケースも多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、公認会計士が転職に失敗しやすいケースを紹介しながら、転職先選びの基準や選ぶ際のポイント・注意点などについて解説します。
目次
まずは公認会計士の転職先を確認しましょう。公認会計士の転職先は多数の選択肢がありますが、主には以下の4つが候補となります。
事業会社は特に大手・上場企業やベンチャー企業、外資系企業で公認会計士の採用ニーズが高い傾向にあります。公認会計士が配属される部署でもっとも多いのは経理ですが、ほかに財務や経営企画室、内部監査室といった部署での活躍にも期待されています。
会計事務所や税理士法人では業務内容は税務がメインになるため、必ずしも公認会計士の専門性を発揮できるわけではありませんが、業務の幅を広げることができます。
将来的に会計事務所の開業を考えている公認会計士は多くが会計事務所での経験を積むことになります。
会計事務所と税理士法人の違いについては、会計事務所は小規模な事務所が多いので意思決定のスピードがはやく、会計や税務に関する幅広い業務を経験できるなどのメリットがあります。
税理士法人は比較的規模が大きいので、監査法人のような組織的な職場風土になじみがある方にはフィットします。ただし分業化されているので会計事務所のように幅広い業務を経験しにくい面があります。
「やりがい」を求めてコンサルティングファームへ転職する人もいます。戦略系や税務系、企業・再生系などの種類がありますが、公認会計士が転職しやすいのは財務系コンサルティングファームです。M&Aアドバイザリーや財務デューデリジェンス、バリュエーションなどのサービスを提供しています。
監査法人からほかの監査法人へ転職するケースもあります。比較的よく見られるのが大手監査法人から中小監査法人への転職です。中小監査法人では大手のような分業制ではないので幅広い業務を経験でき、個人が裁量権をもって働きやすいというメリットがあります。
大手と比べてワークライフバランスを保ちやすい法人も多いので、人によっては働きやすいと感じるでしょう。
公認会計士は何を基準に転職先を選べばよいのでしょうか?
クライアントワークである監査法人では残業が多く、ワークライフバランスを保てないといった声は少なくありません。特にBIG4監査法人は海外ファームからの要請もあって業務量が多く、激務と呼んでいいでしょう。
こうした事情から、ワークライフバランスを改善できるのかを転職先選びの軸にする人が増えています。柔軟な働き方ができるか、残業が少ないかなど人によってワークライフバランスの定義が異なるので、まずはご自身にとってのワークライフバランスを整理してみるとよいでしょう。
若いうちにまったくの未経験領域へ挑戦するケースを除き、転職ではこれまでの経験やスキルを活かすのが大前提です。そうすることで応募先からも採用メリットを感じてもらえますし、転職後にも活躍できて昇進や年収アップにもつながります。
キャリアの棚卸しを丁寧に行い、経験やスキルを活かせる転職先を選ぶことが大切です。
公認会計士として必要なスキルは多くありますが、どんなキャリアを希望するのかによって優先的に身につけるべきスキルは変わってきます。
を確認しておきましょう。監査スキルのみで年齢を重ねると転職が難しくなってくるので、できるだけ若いうちに監査以外のスキルも身につけておくのが望ましいです。
公認会計士は複数回の転職を通じてキャリアアップするのが一般的な職種です。そのため転職先で身につけたスキルをもとに、その後どんなキャリアを形成できるのかまで考えておきましょう。
たとえばM&A関連のスキルがあれば、投資銀行や経営コンサルティングファームのM&Aポジションなど難易度の高い転職先へのキャリアアップも可能となります。
「やりがい」を軸に転職先を選ぶのもひとつの考え方です。特に監査法人で一通りの監査を経験すると業務がルーティン化してくるので、やりがいを求めて転職するのはよくあるケースです。
なお、やりがいとワークライフバランスは基本的に相反しますが、最近ではやりがいを持ちつつワークライフバランスも保てる転職先も増えています。職場ごとに違いがあるので、「○○だから忙しいはず」という思い込みを捨てて柔軟に探していくのがよいでしょう。
年収は家族のためにもモチベーション維持のためにも譲れないという方もいるでしょう。年収のみで転職先を決めるのはあまりおすすめしませんが、転職先選びのひとつの材料と位置づけておくのは悪いことではありません。
ただし監査法人の年収水準は高いので、年収を維持またはアップさせるためには転職先がある程度限られてきます。たとえば事業会社ではなくコンサルティングファーム、また事業会社でも大手上場企業の経理ポジションよりもベンチャー企業のCFOといった選択が考えられます。
意外と見落としがちなのが福利厚生や研修制度ですが、これも転職先を選ぶ際には大事な要素になります。
たとえば事業会社は監査法人に比べると年収は劣りますが、各種手当や費用補助など福利厚生が充実しているため、実際の手取りは思っているより下がらない場合もあります。
また実務経験年数が短い人やOJTに不安がある人は研修制度が充実している転職先を選ぶことで、安心して業務に取り組むことができ、スキルがしっかり身につく可能性があります。
しっかりと自分の軸を持って転職活動を進めて転職を成功させる人がいる一方で、「転職は勢いが大事」「周囲に転職している人が多いから」などと、あまり深く考えず転職してしまう人も見受けられます。
転職先の選び方を間違えた結果、以下のような失敗につながる可能性があります。
「事業会社」「会計事務所」「コンサルティングファーム」といった事業形態ごとにどんな働き方ができるかのかについては、あくまでも「傾向」にすぎません。実際には一社一社に特色があるので、転職先を選ぶ際には事業形態にかかわらず実態を確認する必要があります。
これは当たり前のようでいて、意外とできていない人がいます。典型的には「事業会社ならワークライフバランスを改善できる」と考えて事業会社を選んだ結果、想像以上に忙しく思うようなワークライフバランスを実現できなかったケースです。
長期的に見たときにキャリアの選択肢が狭まってしまう失敗もあります。
たとえば事業会社の内部監査室に転職すると、内部監査室のある企業が限定されることから、他企業へ転職してキャリアアップするのは難しい面があります。
監査法人+内部監査の経験だと基本的に監査経験のみなので、年齢によってはコンサルや会計事務所などへの転職も難しくなってしまう場合もあるでしょう。最後のキャリアとして選ぶのであればよいのですが、今後も転職してキャリアアップを狙うなら慎重になるべきです。
自分が想定していた業務に就けなかったという失敗もあります。
たとえば大手上場企業で高度な経理業務を担当できると思っていたのが、実際には日常の仕訳入力や小口現金の管理など公認会計士でなくてもできる業務ばかりを担当するといったケースです。
もちろん公認会計士とはいえこうした日常業務を担当する覚悟は必要ですが、それだけになってしまうと不満が募り、早期の退職につながってしまう場合があります。
社風や職場の雰囲気が合わないために職場になじめずに早々に辞めてしまうケースもあります。
監査法人の同僚・先輩は公認会計士ばかりですが、ほかの転職先では公認会計士以外にもさまざまな職種の人や多様なバックボーンを持つ人がいます。そのためうまくコミュニケーションを取れずに浮いてしまうというケースは少なくありません。
また、監査法人は比較的自由な働き方ができ、個人主義的な人も多いのに対して、事業会社などではとにかく協調性やチームワークを重視するなど風土の違いもあります。こうした違いを理解しておらず転職後に後悔するケースは少なくありません。
年収や待遇が下がることはある程度承知していたつもりでも、想像以上に下がったことで後悔するケースも散見されます。
転職先が公認会計士の持つ知識や経験の重要性・貴重性を理解していなかったり、年齢や社歴のみで判断する古典的な給与制度を採用していたりするケースでは、せっかくの能力が年収や待遇に反映されません。
ここからは、公認会計士が転職先を選ぶときにどんな点を意識すればよいのか、ポイントや注意点をお伝えします。
年収やワークライフバランスなどすぐ先のことだけ考えて転職先を選ぶのではなく、中・長期的な視点で選ぶことが大切です。
自身が思い描くキャリアプランのゴールから逆算し、そのキャリアを形成するためには、いつどんなスキルを身につけておく必要があるのかを考えて転職先を選ぶのがよいでしょう。
また年齢が上がると体力面で無理がきかなくなったり、監査経験のみでは転職市場で評価されなくなったりしてきます。体力に自信のある若いうちに幅広い業務を経験してスキルアップしておくことも必要です。
30代以降になると結婚や子どもの誕生などライフイベントが発生し、仕事とプライベートの両立を考え始める方が多いでしょう。そのためキャリアプランを描く際には仕事のことだけでなくプライベートも含めた人生設計を併せて考えることをおすすめします。
もちろん志を持って公認会計士という職業を選んでいる方が大半で、プライベートよりも仕事を優先したいという考えの方もいるかとは思いますが、人生全体で考えたときにプライベートをまったく考慮しないというのはどこかで無理が生じることがあります。
そのときになってキャリアを変更しようとしても難しい場合が多いので、キャリアプランを検討する際には視野を広く持っておきましょう。
監査法人や会計事務所では公認会計士の専門性や役割を理解していますが、ほかの職場では理解の度合いや公認会計士に何を求めているのかはそれぞれ異なります。応募の段階でどんな活躍を期待されているのかよく確認しておきましょう。
これまで公認会計士の採用実績があるのか、ほかにも公認会計士がいる職場なのかによっても変わってきます。特に初めて公認会計士を採用する職場の場合は何を期待されているのかを応募先とすりあわせ、いわゆる期待値ギャップを減らしておきましょう。
応募した先で高い評価を受けてスムーズに転職が決まるケースほど、気持ちが高揚してしまい、給与や業務内容の確認がおろそかになりがちです。実際に働き始めてから冷静になり後悔するケースも多いので、転職する前の段階でよく確認しておきましょう。
求人票に記載された給与や業務内容はあくまで一例にすぎないため、ご自身のケースでどうなるのかは契約内容を含めて精査するべきです。
なお、人事担当者では細かな業務内容まで把握できないので、一緒に仕事をする予定の上司や現場の方から話を聞く機会を設けてもらうのが望ましいです。業務内容だけでなく、仕事の進め方も確認しておくのがベストです。
働く人の年齢構成や男女比のバランスも確認しておきましょう。たとえば年齢が高い人が多く若い人が少ない職場では、若い人が活躍しにくい状況があるのかもしれません。また若い人ばかりが集まり社歴の長い人がいない職場も、離職率が高い可能性があり注意が必要です。
せっかく能力の高い公認会計士でも、社風が合わなくて辞めるケースは少なくありません。採用側としても自社の風土にフィットする人材を求めているので、面接の際に社風についても聞いておくとよいでしょう。
求人票では勤務時間や基本給など基本的な情報は記載されていますが、実際の残業時間や休暇の取得しやすさ、職場の雰囲気など求人票に載らない実情こそが重要です。現場の方から話を聞く、転職エージェントを通じて間接的に情報を得るなどして実情を把握しましょう。
ここで転職先を選ぶために欠かせないステップを確認しておきましょう。
まずはなぜ転職したいのかを今一度整理します。
といった理由ではうまくいきません。明確な転職理由がなければ短期間で転職を繰り返すことになり、思うようなキャリアを形成できない可能性があります。長期的なキャリアプランの中で、「今、このタイミングでなぜ転職が必要なのか」をよく考えておくことが大切です。
続いて、転職活動の軸にブレを生じさせないために、転職における優先順位を決めましょう。優先順位が定まっていれば数ある求人の中で自分に合った転職先を選びやすく、応募の際にも説得力のある志望動機を伝えられます。
また転職した後に何かの部分で多少の不満があっても、優先順位の高い項目が守られていれば、ある程度の納得感を持って仕事を続けることができます。
次に、ご自身のスキル・経験を棚卸しましょう。これにより自身の強みが明確になり、応募先の選定や転職するタイミングの判断に役立ちます。
また転職活動ではこれまでのキャリアに関する質問が必ずあるので、丁寧に棚卸ししておくことで、面接で説得力のあるアピールにつなげられるでしょう。
最後に、自分が活かしたいと思っているスキル・経験と、応募先が求めるスキル・経験を照らし合わせましょう。合致する部分が多い転職先ほど、期待値とのギャップが少なく転職後に活躍できる可能性があります。
ここまでのステップを踏むことで、自分に合った転職先を選ぶことができます。
転職先選びに迷ったら転職エージェントに相談するのがベストです。その理由を解説します。
転職エージェントに相談すると、最初にキャリアアドバイザーとのキャリア面談が実施されます。そこでは自分の希望を伝えるだけでなく、転職先をどう選べばよいのか、そもそも転職するべきタイミングなのかといった点について客観的なアドバイスをもらえます。
公認会計士市場に詳しい転職エージェントであれば、希望や経歴と照らしてどんな転職先が合うのかを判断し、紹介してもらえます。公認会計士の場合は重要なポジションや好待遇の求人が多いため、転職エージェントのみが保有する非公開求人を利用できるのもメリットです。
転職エージェントは人事担当者や現場の責任者などとのパイプを持っているケースが多く、職場の雰囲気や残業時間などの詳しい情報を入手できます。求人票を見ただけでは得られなかった情報を提供してもらえるため転職先選びに役立つでしょう。
公認会計士の専門性を把握している監査法人や会計事務所などを除くと、公認会計士に対してどの程度の年収を提示するべきか分からず、結果的に相場よりも大幅に低い年収を提示する法人・企業もあります。
しかし、公認会計士の価値を客観的に伝えることで年収交渉が可能なケースもあるので、諦める必要はありません。
転職エージェントを利用すれば年収交渉を代理してくれます。自分で交渉するよりも客観性のある交渉が可能なので年収アップにつながりやすいでしょう。
公認会計士が相談するべきは公認会計士の転職に詳しいエージェントです。特に以下の2社がおすすめできるのでまずは相談してみましょう。
ハイスタ会計士は公認会計士・経理・財務人材に特化した転職エージェントです。専任のアドバイザーがひとりひとりのスキル・経験を活かしたキャリア形成をサポートしてくれます。
単なる求人の紹介にとどまらず、職場の雰囲気などのリアルな情報を提供してくれるため、転職後のミスマッチや早期退職といった失敗を回避できます。
公式サイト:https://hi-standard.pro/cpa/
マイナビ会計士は公認会計士専門の転職エージェントです。大手マイナビが運営する安心感と手厚いサポートが魅力です。
大手のネットワークを活かし、特に事業会社の転職に強いため、事業会社への転職に興味がある公認会計士は利用を検討しましょう。
公認会計士が転職先を選ぶ際のポイントや注意点などを解説しました。公認会計士は市場価値が高いため内定をもらうのにそれほど苦労しないかもしれませんが、転職してから後悔するのでは転職が成功したとは言えません。
今回お伝えした選び方のポイントを参考に、ご自身にとって納得のいく転職を実現させてください。
edit_note この記事を書いた人
一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。
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