監査法人から転職
更新日:2022/05/30
公開日:2022/05/28
公認会計士は新卒時に4大監査法人のいずれかに入社するのが一般的です。ファーストキャリアを4大監査法人で築いてきた方は、およそ3~5年のあいだに自分の特性を知り、より適した環境を選択していくのがスタンダードだといえます。
4大監査法人とは、「PwCあらた有限責任監査法人」を含めた「有限責任監査法人トーマツ」「有限責任あずさ監査法人」「EY新日本有限責任監査法人」があり、日本最大級の規模を誇ります。
公認会計士はとして今後のキャリアを考えた場合や、新たな目標が芽生えたり、PwCあらた有限責任監査法人での仕事からステップアップしたい希望があれば、転職してCFOやコンサルタントなどになった方もいます。
本記事では、そのようなPwCあらた有限責任監査法人から転職する際の、キャリアパスに注目して解説します。
PwCあらた有限責任監査法人に在籍中の方も、これからPwCあらた有限責任監査法人に入社しようか悩んでいる方も、ぜひ参考にしてみてください。
目次
PwCあらた有限責任監査法人は、2006年に設立された比較的新しい監査法人です。2016年に有限責任監査法人へ移行しました。4大監査法人の中では最後の有限責任監査法人への移行です。そんなPwCあらた有限責任監査法人の基本情報についてまとめたので解説します。
PwCあらた有限責任監査法人は、4大監査法人のひとつでPwC (PricewaterhouseCoopers)グループの一員です。PwCは、ロンドンを本拠地とし、世界157カ国742拠点に27万6,000人のスタッフを擁する世界最大級のプロフェッショナルサービスファーム。「デロイト トウシュ トーマツ」「KPMG」「アーンスト・アンド・ヤング(EY)」と並び、世界4大会計事務所・コンサルティングファーム(Big 4)の一角を占めます。
PwCあらた有限責任監査法人は、国内の4大監査法人の中では最も新しい監査法人で、今後は日本スタッフを増やす計画もあるようです。
名称 | PwCあらた有限責任監査法人(英文名称:PricewaterhouseCoopers Aarata LLC) | ||||||||||||||
所在地 | 【主たる事務所】 〒100-0004東京都千代田区大手町1-1-1大手町パークビルディング 【その他事務所】 <大阪> <福岡>〒812-0012福岡県福岡市博多区博多駅中央街8-1 JRJP博多ビル4F |
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設立 | 2006年6月1日 | ||||||||||||||
従業員数 |
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代表者 | 井野 貴章 | ||||||||||||||
公式ホームページ | https://www.pwc.com/jp/ja.html |
次に、PwCあらた有限責任監査法人の沿革をみてみましょう。
PwCあらた有限責任監査法人の事業内容のメインは国内案件ですが、PwCのグローバルネットワークで培われた経験や知識は共有され、日系・外資系のグローバル企業を担当する機会も少なくありません。多くのポジションでビジネスレベルの英語も必要とされます。外国籍の社員とチームを組む機会も多いでしょう。
PwCあらた有限責任監査法人の取り組みを伝えるために、主なクライアントを紹介します。
素材・エネルギー | フジクラ、トヨタ紡織、大王製紙 |
医療・化学 | 旭化成、クラレ、太陽ホールディングス、ユニ・チャーム |
自動車・機械・部品・エレクトロニクス | 東芝、トヨタ自動車、ソニー、シャープ、アイシン精機、キオクシアHD、沖電気工業、ルネサスエレクトロニクス、日野自動車、豊田自動織機、東芝テック、ノーリツ鋼機、ダイフク、アルバック |
生活・サービス | コナミHD、みらかHD |
情報・通信 | LINE、トランスコスモス |
卸売・小売・外食 | 豊田通商、兼松、ゼンショーHD、丸井グループ |
金融・保険 | 東京海上HD、ソニーフィナンシャルHD、東京海上日動火災保険、アクサHDジャパン、プレミアグループ、商工組合中央金庫 |
参考:openwork
PwCあらた有限責任監査法人では、「監査およびアシュアランス」「コンサルティング」「ディールアドバイザリー」「税務」「法務」を扱っています。これらの業務で身に付いた、転職に活かせるスキルや経験についてまとめてみます。
前提として監査業務で必要になるスキルを5つ挙げます。
監査業務を行っていると、財務会計やファイナンス、ITなど広域な業務の理解をしているはずです。その知識は、引き続き監査業務を行ううえで非常に重要です。転職してクライアントが変わればまた勉強し直さないといけないこともありますが、PwCあらた有限責任監査法人出身の公認会計士が活かせるスキルや経験のひとつだといえるでしょう。
その他の洞察力や分析力、コミュニケーション能力、アドバイス能力も存分に活かせるでしょう。CFOやコンサルタントに転身するためにも必要不可欠です。とりわけ問題の本質を捉えたうえでアドバイスができるロジカルな思考が重要で、公認会計士の存在意義だともいえます。
今までにコンサルティング経験がある方がコンサルティングファームに転職しやすいというのはありますが、職歴や面接での受け答えを照らし合わせて、コンサルタントとして雇ってもらえることも少なくありません。
M&Aやデューデリジェンスの業務経験があると、財務諸表から不正経理処理の有無や債務・負債の範囲が適正かどうか確かめられるはずです。業務内容は、監査法人での財務調査と重なる部分もあるでしょう。
たしかに、コンサルティングファームやFAS(Financial Advisory Service)の場合、M&Aを通した売り手・買い手のバリューアップや成長に着眼点が置かれており、財務デューデリジェンスはあくまでも戦略上のひとつという位置づけという違いがありますが、応用が利く範囲です。
会計・財務以外の領域でも問題発見や課題解決ができる視野やナレッジの広さがある方は、その点を転職の際にアピールできるでしょう。
IPO(株式上場)支援の業務経験があるなら、会計・財務の実務全般をこなしつつマネジメントする能力に長けているのではないでしょうか。
事業会社やコンサルティングファームにおいても、IPOや内部統制の整備や、IFRSへの対応などの必要性が高まっています。さまざまな業界・業種で、会計の専門家である公認会計士のスキルや経験が求められているため、十分にアピールできるポイントです。
PwCあらた有限責任監査法人に在籍していると、海外進出するような大手企業を担当する機会が多く、部門ごとにクライアント層が分けられているのではないでしょうか。
中堅・中小監査法人に転職するとクライアントの規模が小さくなる可能性がありますが、業務内容の基礎的な部分は変わりません。4大監査法人であるPwCあらた有限責任監査法人で大手企業の会計監査を担当して得たスキルや経験は活かせます。
特定分野に強みがあるなら、その点をアピールするとよいでしょう。うまくマッチングすることがあります。また、中堅・中小監査法人では一連の監査手続きができるように求められることがあるため、その知識を身に付けたいという意思も表示するとよいでしょう。
続いて、PwCあらた有限責任監査法人出身から転職した際のキャリアパスについて解説します。主なキャリアパスとしては、PwCあらた以外の監査法人や事業会社、コンサルティングファームなどが考えられます。
また、少数派にはなりますが、他には投資銀行や会計事務所、税理士法人、独立開業なども選択でき、あらゆるキャリアパスを拓ける可能性に満ちています。
自分のスキルや経験、適性に合わせて検討してみてください。最初からひとつに絞らず、幅広い視野で考えたうえで、最適なキャリアを築いていきましょう。
業務内容には納得していてPwCあらた有限責任監査法人での人間関係や組織風土などに不満がある場合は、PwCあらた有限責任監査法人以外の監査法人を選ぶとよいかもしれません。
他の4大監査法人である「有限責任監査法人トーマツ」「有限責任あずさ監査法人」「EY新日本有限責任監査法人」も、それぞれ特徴が異なります。もしかしたら、現職以上に相性のよいところがあるかもしれません。4大監査法人にもビジネス拡大や人材不足のタイミングがあるので、採用されるチャンスはあります。
また、一連の監査手続きを担当したいなら、4大監査法人よりも準大手監査法人や中堅監査法人のほうが向いているでしょう。担当科目が広く、インチャージ経験をできることもあります。
会計知識を活かして決算業務や開示業務などを行いたいなら、事業会社がおすすめです。内部監査業務の求人は多くあるので、狭き門ではありません。また、監査業務に直結しませんが、中期経営計画や予算の策定、予実管理、M&Aに関する業務、IFRSの導入などの経営企画業務も行えることがあります。
公認会計士が事業会社で働くメリットとしては以下が挙げられます。
年収ダウンや転勤・異動の可能性があるというデメリットも無視できませんが、事業会社に魅力を感じて転職する方は少なくありません。それでは、具体的にどのような役割があるのか確認していきましょう。
CFO(chief financial officer:最高財務責任者)として企業に迎え入れられることもあります。CFOはCEO(chief executive officer:最高経営責任者)やCOO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)と並んで、優先的に設置されることの多い管理系経営ポジションです。
具体的には、企業の財務・経理の戦略立案および執行面での責任者として、企業のお金に関わる全てを統括し、企業を支えます。ベンチャー企業といった小規模組織の場合は、組織開発まで職務領域を広げなければいけないこともあります。組織を動かす中心になりたい方におすすめです。
内部監査は、調査の実施だけで助言がしにくい外部監査とは違い、財務状況や業務状況の調査をしたうえで経営者や部門責任者に対して問題点をアドバイスできます。
内部監査は、企業が定めたルール通りに運営できているかチェックするアシュアランス活動と対象部門へ改善活動のフォローをするコンサルティング活動などに分けられます。未然に不正を防止し、業務の効率化を高めるアドバイスをしたい方におすすめです。
なお、内部監査の仕事をしたいなら、以下の資格を取っておくとよいでしょう。
公認内部監査人(CIA) | 内部監査人の能力の証明と向上を目的とした世界水準の認定制度 |
内部監査士(QIA) | 日本内部監査協会が主催する内部監査士認定講習会を修了した方に与えられる称号 |
内部統制評価指導士(CCSA) | CSA(コントロールの自己評価)に関する知識と実施スキルの修得の証明を目的とする国際的な称号 |
内部監査の仕事は資格を持たなくても担当できますが、資格を取得しておけば専門的な知識やスキルを持っていることを客観的に証明できます。転職の際に役立つため、余力があるなら取っておいて損はしません。
他には、上場準備中のベンチャー企業の財務担当者になる選択肢もあります。財務担当者に求められるスキルは、事前に計画を立て、集めた資金を管理し、資金が不足した段階で再び資金調達するという調整力や交渉力などです。
財務諸表をもとに仕事を進めることが多いため、財務諸表を理解できなければいけませんが、PwCあらた有限責任監査法人に在籍していた公認会計士なら問題ないでしょう。ただし、ライバルは公認会計士だけでなく税理士も対象です。
ベンチャー企業といった小規模企業なら性格や理念が合うかという点も重要視されます。転職する際には応募企業の公式サイトを閲覧するだけでなく、CEOや代表的な社員のSNSをチェックしてもよいでしょう。そのベンチャー企業が大切にしている価値観を共有できます。
公認会計士としての知識を活かしてクライアントが抱える課題の解決を図る、コンサルティングファームもキャリアパスのひとつです。特に転職先として多いのが、金融系と外資系です。それぞれについて解説しましょう。
具体的に金融系コンサルティングファームを列挙します。
日本発祥の独立系経営コンサルティングファームには非常にユニークな取り組みを行うところもあり、うまくマッチングすれば自分のこだわりを大切にできるでしょう。
次に、外資系コンサルティングファームを挙げていきます。
全業界の中でも高い人気を誇るので、ライバルは多いですが、男女平等に出世機会が与えられて若手の裁量も大きいところに魅力を感じて転職を希望する方も少なくありません。
クライアントの企業価値を高める戦略を練れるだけの洞察力や思考力、精緻な財務分析ができる数的能力などに優れているなら、投資銀行へのキャリアパスを検討してもよいでしょう。
クライアントのためにタフな交渉をこなせるコミュニケーション能力や高い緊張感のある環境での長時間労働が可能な体力などが求められて楽な仕事ではありませんが、その分リターンが大きいのが魅力です。
もう少し堅実な生活をしたいなら、会計事務所はいかがでしょうか。税理士資格者が運営している会計事務所にはもちろん繁忙期もありますが、比較的安定的に働けます。デスクワークが苦にならない人にとっては、集中して仕事に取り組める環境だといえるでしょう。
PwCあらた有限責任監査法人での業務内容と変わる点が多いですが、税理士業務に変えたい方におすすめです。
気の合う税理士資格者がいるなら、会計事務所ではなく税理士法人として経営していく方法もあります。会計事務所は税理士が個人事業主として運営しているのに対して、税理士法人は2人以上の税理士が所属して法人としての形態を持っているという違いがあります。
税理士法人には、支店を展開したり代表者が不在になったときにも業務を継続できたりするメリットがあるので、ぜひ検討してみてください。
PwCあらた有限責任監査法人でのキャリアを活かしつつ、得意分野や営業力、資金があるなら、独立開業するという選択肢もあります。独立開業する方は、ほとんどが税理士登録も行います。そのため、仮に税務業務の経験が不十分な場合でも、国税の基本とも言える所得税の仕組みや、確定申告の制度について情報収集しておく必要があるでしょう。
そういったところまで幅広く柔軟に対応するスタンスがあるなら、独立開業は向いています。
最後に、公認会計士の転職成功事例を紹介します。
中にはUSCPA(米国公認会計士)を取得して転職に成功した方がいます。資格は客観的に知識やスキルを証明できるものです。余裕があるなら資格勉強に取り組むことをおすすめします。
何かしらの不満があるからこそ転職を考えるはずですが、その譲れないポイントは明確化して揺るぎないものにしておきましょう。場合によっては転職した結果、年収や待遇が下がるということもあります。自分の不満を改善できないなら無理して転職する必要はないでしょう。
公認会計士について熟知しているキャリアアドバイザーに転職に関する助言をもらって転職を成功させた方が大勢います。履歴書や職務経歴書を見るだけでなく、キャリア面談を通して深堀してくれるでしょう。転職エージェントは無料で利用できるため、大変おすすめです。
会計士は働く場所にあまり困らない職種です。そのため、会計士が転職活動をする際に、転職エージェントを利用する必要あるのかなと、疑問を持っている人もいるかもしれません。この項目では、会計士の転職で転職エージェントを利用したほうがよい理由を紹介します。
非公開求人とは、何らかの理由に人材募集していることを知られたくない求人のこと。特に今回ご紹介したようなCFO候補、IPO準備室などはエージェントの非公開求人に集中しているため、転職エージェントを活用した情報収集は必須と言えます。
企業や業界の詳しい情報が知れるのも、転職エージェントを利用するメリットの一つ。求人情報を見ただけでは、その企業がどのような雰囲気なのか、どんな人材を求めているのかわかりませんよね。
転職エージェントが紹介する企業について、直接訪問・人事担当にヒアリングするなどして、内情をきちんと把握しています。そうした情報を事前に確認できるため、転職後のミスマッチを避けられるのです。
また、異なる業界への転職を考えている場合、将来性について気になる方も多いはず。実際に働いている人たちの生の声は、転職活動で大いに役立つでしょう。
転職エージェントを利用すれば、さまざまなサポートが受けられるため、効率的に転職活動が行えます。特に働きながらの転職活動だと、準備をする時間が取れないという場合も少ないでしょう。
転職活動の準備が不十分だと、ミスマッチにつながる可能性は高くなり、貴重な時間を無駄にしています。前述したように、企業・業界の詳しい情報や面接日程の調整、履歴書の添削など、転職活動に役立つサポートが受けられます。
転職活動の負担が少なくなれば、仕事と両立して理想の転職先を見つけることも不可能ではないでしょう。
今回はPwCあらた有限責任監査法人の基本情報やPwCあらた有限責任監査法人から転職する際のキャリアパスについて解説しました。転職は人生を左右する大きな決断です。後悔することのないように準備は怠らないでください。まずは、スキル・経験の棚卸や公認会計士の転職に強いエージェントへの登録などを済ましておきましょう。
edit_note この記事を書いた人
一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。
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