公認会計士に人気のPEファンドというキャリアと転職事例|転職難易度や注意点・転職サイトも解説

公認会計士の転職

更新日:2022/07/25

公開日:

近年、事業戦略の見直しによる子会社の売却、事業継承や事業再生を行う企業の増加などによってPEファンド業界は活性化しています。

そのためPEファンド業界に注目して転職を考えている方も多いのではないでしょうか。公認会計士においても、若手を中心に監査法人の次のキャリアとして注目を集めています。

とはいえ監査法人からの転職が可能なのか、どんなスキルや経験が求められるのかなど詳しくわからない部分も多いでしょう。この記事ではPEファンドの概要や転職難易度、求められるスキル・経験などについて解説します。

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目次

若手会計士を中心に人気のPEファンドというキャリア

最初に、PEファンドの仕事内容や働く人の特徴、公認会計士が転職する場合の難易度について解説します。

PEファンドとは

投資家から資金を集めて企業に投資し、獲得した収益を投資家に分配する会社をファンドといいます。

PE(プライベートエクイティ)ファンドは、成長期を過ぎた安定した企業を対象に投資するファンドのことです。ほかに創業期のベンチャー企業を対象としたVC(ベンチャーキャピタル)ファンドもあります

コンサルティング会社や投資銀行ではアドバイザリーとして投資に関わるのに対し、PEファンドではプリンシパルとして投資に関わるという違いがあります。

すなわち、コンサルや投資銀行のクライアントは企業(買収企業・被買収企業)ですが、PEファンドのクライアントは投資家です。仕事内容は投資候補先への提案資料や売却対象の企業・事業内容を記載した資料の作成、売却価格の検討や戦略の策定、交渉などを行います。

どんなキャリアの人が働いているのか

PEファンドでは基本的に前職が戦略コンサルか投資銀行の方が多数です。ほかにはFASコンサルや金融機関、証券会社、同業他社からの転職者もいます。

こうしたキャリアを持つ人が多いため必然的に30代以上が占める割合が高く、ハイスペックで頭のよい方が多いです。

公認会計士がPEファンドへ転職する際の難易度

公認会計士がPEファンドへ転職できる可能性はありますし、実際にファンドで活躍している公認会計士もいます。

ただし、監査法人で監査経験しかない公認会計士が直接PEファンドへ転職するのは非常に厳しいと言わざるを得ません。

PEファンド側もM&Aアドバイザリー経験や戦略コンサル経験を必須とするケースが多いので、まずはこれらの経験を積める場所へ転職し、そこからファンドを目指すのが現実的でしょう。

また経験等の条件を満たしていても、メンバーとの相性を重視されるので、必ず採用されるわけではありません。PEファンドでは基本的に少人数のチームで行動するので、メンバーと合う人かどうかは非常に大切だからです。

PEファンドでは長期就労する方が多くポジションに空きがでない、採用枠がそもそも少ないという問題もあります。応募者も優れた経歴を持つ方ばかりで公認会計士以外からの人気も高い職種なので、その方たちとの争いに勝たなければならないという点でも転職難易度は高いといえます。

狭き門だがポテンシャル採用を行うファンドもある

監査経験のみの公認会計士が直接転職するのは非常にハードルが高いですが、20代の若手会計士であればポテンシャル採用の可能性が残されています。特にM&A・事業再生の経験がある公認会計士で、意欲が高くポテンシャルに期待できる方であれば、狭き門ながら転職の可能性があります。

公認会計士がPEファンドへ転職するメリット・デメリット

公認会計士がPEファンドへ転職するとどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

市場価値が高まる

PEファンドの経験がある公認会計士は少ないので、希少性のある人材になれます。市場価値が高まるため、さらに転職する場合には非常に有利になるでしょう。

戦略コンサルや投資銀行のほかに、スタートアップ企業のCFOや一般事業会社の経営企画ポジションなどへの転職が可能です。

大きなやりがいを感じられる

PEファンドの業務はクリエイティブ性が強いため、自らが考えて主体的に動くことができる点に魅力を感じる方が多いようです。

経営に密接に関与するので緊張感が高く、当事者として企業の成長に導く部分もやりがいを感じやすいでしょう。案件が成功し、大きな報酬を得られたときにも達成感ややりがいを感じられるはずです。

高い報酬を手にできる

PEファンドの年収は高めです。そもそも大半が、年収が高い戦略コンサルや投資銀行からの転職なので、年収もそのままスライドされています

またPEファンドでは固定給に加えてイグジットボーナスと呼ばれる成功報酬が高額になる場合があるので、運用成績がよければ非常に高い報酬を手にできます。

公認会計士の場合はアソシエイトからスタートすることが多いですが、転職直後から少なくとも年収1,500万円は見込めます

順調に昇格すれば2,000万円は得ることができます。特に20代で転職した公認会計士であれば年収が上がることが多いでしょう。

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激務

PEファンドは戦略コンサルや投資銀行と比べると残業時間は抑えられる傾向にあります

そのためこれらの前職をお持ちの方はワークライフバランスが改善される可能性が高いでしょう。

PEファンドはクライアントにスケジュールを左右されることが少なく、自分たちで仕事の時間をコントロールできるためです。

ただし、激務であることには変わりありません。特に投資直後は実際に投資先に赴く機会が増え、業務量も増してきます。月・週によって異なるものの、多いときは残業が月80時間を超える(いわゆる過労死ライン)場合もあるので、やはり激務の部類に入ります。

経営に関与するリスクがある

PEファンドではコンサルや投資銀行のようにアドバイザリーにとどまるのではなく、企業の株式を譲り受け、経営に関与することになります

この点にやりがいを感じる方が多く、人気の理由でもありますが、一方で経営に関与する責任やリスクもあります。案件が失敗した場合、次のファンドレイズができないとクローズになり、出資した資金も戻ってきません。

実力主義で常に結果が求められるので、精神的なストレスやプレッシャーも監査法人の比ではありません。

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PEファンドで要求される能力・スキル

PEファンドの転職ではどんな能力やスキルが求められるのでしょうか。

前提としてPEファンドの仕組みや経営全般に対する理解が必要

前提として、PEファンドに対する理解や経営全般の知識は不可欠です。

公認会計士の場合は財務・会計のスキルや知識が評価の対象になりますが、それだけで採用されることはありません。そのほかに金融商品取引法や会社法、証券取引所の開示規則に関する知識など法令に関する知識も備えている必要があります。

ポテンシャル採用であってもこれらをゼロから教えてくれるわけではないので、転職する前にご自身で吸収しておかなければなりません。

財務モデリング能力

財務モデリングとは一般的には財務3表(PL/BS/CF)をシナリオ別に作成してシミュレーションを行うことをいいます。財務モデリングは投資採算を検討するときに重視されるスキルなので、PEファンドへ転職するなら必須です。

公認会計士の場合、財務3表の取り扱いには慣れているので業務としては向いています

ただし財務モデリングは基本的にM&Aアドバイザリー業務から培われるスキルなので、監査法人のみの経験で転職するとなるとスキルや能力をアピールするのは難しいでしょう。

監査法人から転職してFASの財務モデリングチームにいた、『投資銀行でM&Aアドバイザリーをしていたといった経歴』があればアピール可能です。

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ファイナンス以外の知識を吸収できるポテンシャルも重要

PEファンドではファイナンスの知識はもちろん、金商法などの法令知識や経営・事業戦略、マーケティングなど幅広い知識をどんどん吸収していく必要があります。

知識を吸収できるポテンシャルも必要であり、勉強への意欲や体力があるかどうかも採用の基準となります。

人間的な魅力を重視するファンドも多い

PEファンドでは自分ひとりで完結する仕事はなく、投資や経営支援などさまざまなフェーズでほかの専門家やチームのメンバーと一緒に仕事を進めていきます

そのため実務能力や経験値だけでなく、人間力や人間的な魅力も重視されます。

公認会計士がPEファンドへの転職で活かせるスキル・経験

公認会計士がPEファンドへ転職する場合に活かせるスキルや経験について解説します。

監査経験を直接活かせる機会はほとんどない

監査法人とPEファンドでは仕事内容が大きく異なるため、ファンドで監査経験を直接活かせる機会はほとんどありません。

また監査法人だと枠組みを決めて仕事をする機会が多いのに対してPEファンドではクリエイティブな要素が多く、仕事の進め方においても考え方を大きく変えていかなければ対応できません

また個人差はあるものの、監査法人にいる公認会計士はコミュニケーションを苦手とするケースが少なくありません。

PEファンドではクライアントとのコミュニケーションや説明、交渉といった場面で高度なコミュニケーション能力が必要とされます。そのためコミュニケーションが苦手な会計士は適性が低いと判断され、採用に至らない可能性が高いでしょう。

会計的な素地は活かせる

PEファンドでは公認会計士資格や監査経験が業務に直接活かせることはないですが、会計士が持つ数字の感覚や理解は大いに役に立ちます。

PEファンドではキャッシュフローを正確に予測し、その数字を整理・分析して対象企業の置かれた状況を把握します。そのため業務全般で会計的な素地が必要となり、公認会計士が持つ数字への深い理解はファンドへの転職で強みとなります。

M&A業務経験

バリュエーションや財務モデリングなどM&Aアドバイザリー業務で得られるスキルがあればアピールできます。

監査部門での経験のみではスキルを得るのは難しいかもしれませんが、監査法人でもアドバイザリー部門にいた方ならアピールできる可能性があります。

デューデリジェンス

PEファンドでは企業を買収する際に財務・税務・法務などさまざまな分野でデューデリジェンスを実施します。公認会計士の場合は、FASなどで財務デューデリジェンスのスキルを磨いていればアピールできるでしょう。

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公認会計士がPEファンドへ転職するために積んでおくとよいキャリア

監査法人からの直接の転職が難しいと考え、いったん別のキャリアを積んでから転職する場合、どんなキャリアを選ぶのがよいのでしょうか。

M&Aアドバイザリー

M&Aアドバイザリー業務はPEファンドの業務と親和性が高いので、経験を積んでおくとPEファンドへキャリアアップできる可能性が高まります

大手監査法人で働いている公認会計士であれば、法人内のアドバイザリー部門へ異動した後にPEファンドへ転職する方法もあります。ただし法人内での異動もかなり難しい現実もあるため、いったん転職してアドバイザリーを経験するほうが近道だと考えられます。

戦略コンサル

戦略コンサルは事業戦略の策定や実施を行う仕事なので、M&A戦略についても関わる機会が多いです。そのため戦略コンサルでの経験はPEファンドでも評価されやすく、戦略コンサル出身者も多く活躍しています。

ただし公認会計士としては、戦略コンサルよりも投資銀行のほうがフィットすると感じる方が多いようです。PEファンドへの足がかりとしてキャリアを積むなら、投資銀行も候補に入れておくのがよいでしょう。

投資銀行

投資銀行出身の公認会計士であれば、M&Aファイナンスの知識や財務モデリングスキル、財務分析・株価分析のスキルなどPEファンドで活かせるスキル・知識が多数あります。

そのためPEファンドへ転職する前に、いったん投資銀行で修行を積んでからと考える公認会計士が多いです。

PEファンドへの転職活動に関する注意点

PEファンドへの転職活動で気をつけたいポイントを解説します。

転職難易度が高いので入念な準備が必要

PEファンドへの転職難易度は高いので、転職活動はしっかりと準備して臨むことが大切です。

面接ではバリュエーション等のスキルに関する質問を受けることが多く、財務モデルに関するテストや投資案のディスカッションなどが行われることもあります

どのような対策が必要なのかは応募先やご自身のスキル・経験によって異なるため、転職エージェントに過去の傾向を確認するなどして準備しておきましょう。

採用枠が限定されるので応募のタイミングを逃さないこと

年間を通じて求人が少なく、採用枠もファンドごとに1人~2人と限定されるので、応募のタイミングを逃さないことが大切です。

それには、とにかくはやく転職活動を開始すること、求人がオープンした段階ですぐに応募できるよう準備を進めておくことが必要でしょう。求人状況も常にチェックしておく必要があります。

長期就労を前提にすること

PEファンドから次のキャリアを展開する方もいますが、起業やCFOへの転職がメインとなり、基本的にはPEファンドをゴール地点と捉えている方が多い傾向にあります。

ファンドの運用期間は一般に5年~10年ほどあるので、長く働かないとボーナスを獲得する機会に恵まれにくいのも理由のひとつでしょう。そのため経営者との相性がよくないなどの特別な理由がない限りは長く働く方が多いです。

したがって、転職の際には長期就労を前提とし、長く働ける環境や仕事としての魅力があるかどうかもよく検討することをおすすめします。

PEファンド側も長く働いてもらうことを前提としているので、PEファンドで経験を積んで次のキャリアを目指したいといった考えだと評価が低くなる可能性があります。

公認会計士のPEファンドへの転職成功事例3つ

32歳/男性
PEファンドへの転職|公認会計士
前職:大手監査法人アドバイザリー部門(年収780万)
現在:外資系PEファンド(年収900万)

私は大手監査法人にて法定監査業務とIPO支援業務を経験した後、監査法人内のアドバイザリー部門へ転籍しました。アドバイザリー部門では、M&Aコンサルティング業務に従事し、財務デュ―デリジェンス、バリュエーション、ストラクチャリング業務を一通り経験しました。30歳を過ぎた頃に投資ファンドに興味を持ち始め転職を意識するようになりました。特に関心の強かった地方再生関連ファンドに携われる求人を中心に転職活動を進めましたが、実際に転職が決まるまでに1年ほどかかりました。業務で多忙であったことと、慎重に転職を検討したかったためです。TACキャリアエージェントのコンサルタントの方々は大らかな方が多く、焦ることなく落ち着いて転職活動を進めることができました。
引用元:TACキャリアエージェント

熱望していた3年越しのPEファンドへの転職
<学歴>有名私立大卒
<年齢>男性 29歳
<前職>大手監査法人/会計監査、財務DD→Big4系FAS

私は兼ねてより、経営に深く関わっていきたいという漠然とした気持ちかがあり、学生のころから会計・ファイナンスの勉強をはじめ、公認会計士受験を経て監査法人に入所しました。
しかしながら監査法人ではクライアントの会計監査や、財務DDに携わっていたものの、立場上積極的に経営に関与できるということはできない状態でした。

そこで、ダイレクトに経営に関わりたいという思いがあり投資ファンドへの転職を目指しましたが、3年前は転職が叶わず、経験を積むため、Big4系のFASに入り、M&Aのエグゼキューションの経験を積みました。その後、再度ファンド転職にチャレンジし、今回は念願のバイアウトファンドに入ることが出来ました。
引用元:ムービン

Big4系FASから日系PEファンドへ
BEFORE:[M&Aアドバイザリー]Big4系FAS
AFTER:[投資メンバー(VP)]日系PEファンド
前職はBig4系のFASにて、主にM&Aアドバイザリーの業務に従事していました。PEファンドへの業務提供も多数経験する中で、実際に自分が投資の意思決定および、投資後の経営に携わる側に身を置きたいという思いが強くなり、転職活動を開始しました。

転職活動開始時に、志望していた先であるPEファンド業界の知人に強く勧められて登録しました。実際には5~6社のエージェントの方に面談はしていただきましたが、やはりアンテロープは他社と比較して業界の知見が圧倒的と感じました。
引用元:アンテロープ

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PEファンド求人の探し方|公認会計士が利用すべき転職サービスは?

最後にPEファンドの求人を探す方法について解説します。

人脈を経由して探す

PEファンド業界は特殊性が強く、業務の特性から情報がオープンにされにくいので、転職の情報収集も簡単ではありません。

そのため人脈を経由した転職も比較的行われています。ファンド業界へ転職した知人や、ファンドのクライアントなどに知人がいれば、人材を求めているファンドの情報を得られる可能性があります。

ヘッドハンター経由で探す

人脈がない場合にはファンド業界に詳しいヘッドハンターを利用して転職する方法があります。

ヘッドハンティングというと優れた実績のある方がある日突然スカウトを受けるイメージがあるかもしれませんが、転職する意思のある人がヘッドハンティング会社に登録してスカウトを待つ方法もあり、どちらかといえばこのほうが一般的です。

たとえばリクルートダイレクトスカウトやビズリーチなどがあります。

【関連記事】転職でおすすめのスカウトサイト25社を徹底比較|職種別で見たおすすめサイトを厳選

転職エージェント経由で探す

PEファンドへの転職は非常に難しいため、綿密に戦略を立てて転職活動に取り組む必要があります。またファンドの求人は非公開求人がほとんどなので、転職エージェントからの紹介が欠かせません。

ただし、公認会計士は専門性が高い職種であり、PEファンドへの転職の場合はファンド業界への理解も必要です。そのため公認会計士の転職に強みを持つ転職エージェントを厳選することをおすすめします。

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まとめ

公認会計士のキャリアとして注目度が高いPEファンドですが、転職難易度は非常に高いため、戦略的に転職を考える必要があります。

いったん別のキャリアを積んでから転職したほうが近道なケースも多いので、ご自身のケースで転職が可能かどうかも含めて、まずは転職エージェントに相談するとよいでしょう。

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ハイスタ編集部

一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。

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