公認会計士の転職
更新日:2024/02/28
公開日:2024/02/28
転職理由とは「自分がなぜ転職したいのか」「転職によって何を実現したいのか」という理由のことです。
転職の方向性を決める際の基礎となるものであり、面接においても応募先の企業が必ず確認しておきたい項目のひとつにあたります。
公認会計士の場合、複数回転職する人が珍しくないこともあって、「自分も転職しなくては」と焦って転職活動を進めるケースが散見されます。
しかし転職理由が明らかになっていないのならそのまま転職活動を進めても失敗に終わる可能性があります。この記事では公認会計士の主な転職理由を紹介しながら、転職理由を整理することの重要性と面接で伝える際のポイントなどを解説します。
目次
まずは公認会計士の主な転職理由を確認しましょう。公認会計士は向上心が高くキャリア志向の方が多いので、転職理由も前向きなものが多く見られます。
一方で、長時間労働や監査業務に対する不満も多く、転職理由につながっているようです。
スキルの幅を広げたいとの理由で転職を決める方は多いです。監査法人では、独占業務・花形業務である監査業務には関われるものの、それ以外の業務はほとんど経験できません。
そのため将来のキャリアプランを達成するためにスキルの幅を広げる必要があると考えて転職を決める方が多くいます。
近年多いのはIPOに関するスキルを身につけたいという理由です。IPO支援に関する業務はもともと大手監査法人が多く受注していましたが、近年は監査品質の厳格化や人材不足などにより、時間がかかるIPOの受注を控える大手監査法人が増えています。
そのため中小監査法人でIPOを手がけるようになってきており、IPOを経験したいと考える公認会計士が大手から中小の監査法人へ転職するケースが多いのです。
監査法人ではスタッフ・シニアスタッフ→マネージャー・シニアマネージャー・パートナーと階級が上がっていく仕組みです。
しかし今はどの法人も上が詰まっている状態で階級を上げたくともなかなか難しくなっています。そのため、ポジションを上げたいが法人内での昇進が見込めないと判断して転職するケースがよくあります。
ポジションアップを理由とする転職で多いパターンは大手監査法人から中小監査法人です。中小監査法人だとポジションに空きがあるケースがあり、大手からの転職だと上のポジションで迎え入れてくれる場合も少なくありません。
もしくは事業会社への転職で管理職ポジションやベンチャー企業のCFOポジションを狙う方もいます。
また、ポジションアップまでは考えなくても、「昇進が見込めない=定年まで働けるとは思えない」という理由で転職する人もいます。いずれ転職するなら市場価値が高いうちに転職したほうが得策だと考えるわけです。
大手監査法人の公認会計士に多いケースですが、クライアントともっと近い距離で仕事がしたいと考えて転職する人もいます。
大手監査法人にいると業務が分業化されているので今行っている業務の位置づけや意味がわかりにくく、クライアントから感謝される機会もありません。
モチベーションを保つのが難しいので、クライアントの顔が直接見える距離で仕事をしたいと考えるのです。この場合はコンサルや会計事務所、税理士法人への転職がよくあります。
将来的に独立して会計事務所を開業したいと考えている方や、実家が会計事務所なので将来は地元に戻って実家を継ぐという方は珍しくありません。
いずれにせよ会計事務所を開くには税務の経験が必須なので、会計事務所や税理士法人で税務の経験を積みたいと考えて転職するケースです。
監査業務を数年経験してやりきったのでほかの業務を経験したいという理由です。監査業務は慣れてくるとルーティンワークが中心になるので、監査に飽きたと考える人もいます。
こうした考えの方はコンサルやアドバイザリー業務など、監査よりもクリエイティブな業務を経験できる転職先を求める傾向があります。
現職では希望する業務に就けないことも転職理由になります。
たとえばアドバイザリー業務を経験したいと考えたとき、大手監査法人であればアドバイザリー部門へ異動する方法がありますが、実際には監査部門の人手不足や希望者が多いなどの理由により法人内での異動は難しいのが現実です。
そうなると、希望する業務を経験できる場所へ転職しようと考えます。
監査法人は大手を中心に激務で知られています。
特にクライアント企業の決算期直後にあたる4月~5月は繁忙期にあたり、残業時間は月100時間近くにもおよびます。また決算期が異なるクライアントがいれば4月~5月以外でも忙しい場合があり、そうなるとかなりハードです。
結婚して子どもが生まれたので家族との時間を取りたいといった方もいるでしょう。そこでワークライフバランスの改善を求めて転職を考えるようになります。
上記のような理由で転職したものの、「社風が合わなかった」「期待した業務ができなかった」などのミスマッチが起きて再転職するケースも少なくありません。
監査法人へ戻るパターンと、改めて自己分析やキャリアの棚卸しをしてほかの転職先を選択するパターンがあります。
なお、監査法人へ戻るのは気が引けると考える方がいるかもしれませんが、監査法人では出戻りを歓迎する向きがあり、戻るのはそれほど難しくありません。
また監査法人といっても規模によって社風や経験できる業務、クライアントの種類などが異なるため、異なる規模の法人へ戻るという選択も可能です。
自身の転職理由を考えたときに、以下のような理由しか思い浮かばなかったのなら、転職は思いとどまったほうがよい可能性があります。転職しても失敗するリスクが高いため、慎重に判断しましょう。
転職はいうまでもなく自分自身のキャリアのためのステップです。同僚が次々と転職したから、友人がやりがいをもって仕事をしているのが輝いて見えたからといった理由だけで転職しても、その転職は失敗に終わる可能性が高いでしょう。
なぜなら面接で「なぜ転職するのか」「なぜその業界・企業を選んだのか」について説得力をもって伝えられず、応募先が採用したいとは思わないからです。
仮に運よく採用されたとしても、何のために転職したいのか分からないまま転職先を選んでいるのでミスマッチが起こりやすく、「こんなはずではなかった」という後悔につながります。
事業会社へ転職するケースでは、「会計スキルを活かしつつ当事者として企業に貢献したい」といったポジティブな理由と「残業が少ない・ワークライフバランスが改善できるから」といったややネガティブな理由に分けられます。
前者の場合は自分のやりたいことが明確なケースが多いので成功しやすいのですが、後者の場合は単に労働環境だけに着目した転職なのでミスマッチが起こりやすく失敗するケースが散見されます。
また事業会社の残業時間については会社によって差があり、繁忙期には連日深夜遅くまで残業が続くというケースもありますので「事業会社=残業が少ない」といった思い込みは禁物です。
スタートアップ・ベンチャーへ転職する場合、IPOに成功したときのストックオプションを含めて年収アップを期待するケースがありますが、過度な期待はやめましょう。そもそもIPOの成功率は0.5%程度と言われており非常に低いです。
またストックオプションは創業期メンバーであっても持ち株比率は1%以下とされており、期待した金額にならない場合もあります。
スタートアップ・ベンチャーの場合はゼネラリストとしての幅広い活躍を求められますし、ハードワークです。年収のみが転職理由になると心身が持たずに挫折する可能性が高く、転職が失敗に終わる可能性があります。
転職を考える以上は、ポジティブ・ネガティブに限らず、何かしらの転職理由があるはずです。しかしその転職理由は成功につながる理由なのでしょうか?
まずは自分の転職理由を客観的に見たときに、転職によって解決・実現できる問題なのかを考えましょう。転職先でも同じ不満にぶつかる可能性があるのなら、再転職することになり、その転職は意味のないものとなってしまいます。
また、よくよく聞いてみると、今の職場でも実現可能なことを転職理由にあげている人もいます。今の職場では本当に実現できないのかは冷静に判断しなければなりません。
現時点では今の職場で実現できていなくても、実現するための努力はしたのかどうかも自身に問いかけてみてください。
こうした検討をした結果、今の職場では本当に実現できないことであるなら、その転職理由には強い動機があります。自分の希望にあった応募先を選ぶことができ、転職後のミスマッチもなく仕事を続けられる可能性が高いでしょう。
キャリアの棚卸しとは、これまでの経歴・業務内容を振り返り、紙に書くなどして整理・視覚化することです。これにより、これまでの経験をどのように活かせるのか、また自身の強みは何かが見えてきます。
「どんな転職をしたいのか」が整理されるので前向きな転職理由につながり、転職が成功しやすくなります。特に、同僚が転職して焦っているなど周囲に流されている人には効果がある方法です。
転職活動を進めるにあたり、人生設計もあわせて考えてみてください。不満による転職理由しかないと思っていても、人生設計と照らすことで未来志向になり、ポジティブな転職理由が見えてきます。
たとえば「年収に不満がある場合」でも、人生設計に照らすと「近い将来家庭を持ってモチベーション高く働きたい」という前向きな理由に変換でき、転職が成功しやすくなります。
公認会計士は新卒時に一般的な就職活動を行っていない人も多いので、自分の転職理由が成功につながりやすいのかが分からない、そもそも転職理由が思い浮かばないというケースも多いでしょう。
そんなときは転職エージェントから客観的なアドバイスをもらうことをおすすめします。
転職が成功しやすい人の特徴や失敗パターンを熟知しており、求職者が成功するために何が不足しているのかを見極めることができるので、改善点が見えてくるはずです。
ここでは、公認会計士の転職活動で利用すべき転職エージェントを紹介します。
公式サイト:https://hi-standard.pro/cpa/
「ハイスタ会計士」は、公認会計士・財務・経理人材専門の転職支援サービスです。
業界特化型の転職エージェントのため、求人数は大手には及ばないものの、丁寧なサポートとミスマッチのない求人の質に定評があります。応募書類の添削や面接対策も個別サポートにも力に入れており、スカウトメールに応募をしても受からない、書類で落とされるといったことが極端に少なくなるのも魅力の一つ。
前進は弁護士特化領域でのサービス展開をしていた関係で、士業関係者の転職ノウハウや業界ならではの勘所を抑えた提案が可能です。
公式サイト:https://hi-standard.pro/cpa/
公式サイト:https://cpa.mynavi.jp/
「マイナビ会計士」は会計士・試験合格者・USCPA専門の転職エージェントです。手厚いサポートと質の高い紹介を受けられると評判で、公認会計士がまずは利用を検討するべきエージェントの筆頭となります。
業界に精通したアドバイザーから的確なアドバイスを受けられる点、職務履歴書の添削指導や推薦状の作成、個別の面接対策など徹底したサポートを受けられる点が魅力です。マイナビエージェント本体と連携した豊富な求人があり、独自求人も多いので幅広い選択肢をとれます。
求人傾向としては、コンサルティングファームへの転職実績が高く、経験の少ない若手公認会計士や女性公認会計士の個別の悩みにそった転職支援にも強みがあります。
公式サイト:https://cpa.mynavi.jp/
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
「MS-Japan(MS Agent)」は管理部門・士業の転職に特化した転職エージェントです。管理部門・士業の登録率・転職相談率No.1と特化型エージェントの中で特に高い実績があります。
業界・職種事情を熟知したアドバイザーが多数在籍している点が特徴で、特化型ならではの質の高いアドバイス・提案が受けられます。求人の質も高く、会計領域では大手転職エージェントにひけをとらない案件を保有しています。
求人傾向としては、一般事業会社の経理・財務などのほか税理士法人・会計事務所への転職にも強みがあります。大手では扱っていない比較的小規模の法人・事務所やベンチャーまで幅広くカバーしているのも特徴です。
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
ここでは、公認会計士が転職活動で転職理由を整理しておくべき理由を解説します。
転職を成功させるには、自分に合った転職先を選ぶことが大切です。
転職理由が整理されると、転職の軸すなわち「転職するときに大事にしたいことは何か」が見えてきます。すると、転職の方向性が明らかになるので、おのずと自分に合った転職先を選定できます。転職後もミスマッチが少なく、長く活躍できるはずです。
転職活動を始めると、最初の頃は同じ方向性で応募先を選んでいても、次第に応募先選びにブレが生じることがあります。ブレがあるので面接でも一貫性のある主張ができず、なかなか採用に結びつかないということも起こります。
ブレが生じてしまうきっかけは、応募先からの反応が芳しくなかった、複数の求人を見るうちにほかの業界も悪くない気がしてきたなどさまざまにあります。
いずれにしても転職活動の過程でブレが出る原因は転職理由がはっきりしていないからです。
転職理由が整理されていれば、転職活動の過程で迷いや考え方の変化が生じた場合も原点に立ち戻ることができ、同じ方向性で転職活動を進めることができます。
転職理由は中途採用の面接で必ずといっていいほど質問される項目です。
企業が転職理由を質問するのは、採用してもすぐに辞めてしまわないかどうかを確認するリスクチェックと、応募者がこの会社で活躍できる人物かを見極める意味があります。
そのため転職理由の整理は面接対策としても不可欠であり、転職理由がまとまっていないと思うような結果につながりません。
たとえば前向きな理由がよいと思って何となく「スキルアップのためです」と伝えたとしても、曖昧で具体性がないため面接官もなぜその会社に応募してきたのか判断できないでしょう。
結果として「自社にあまり興味がない人」と思われてしまい、採用を見送られてしまうことになります。
面接で転職理由を伝える際にはどんな点に注意すればよいのでしょうか。
ネガティブな転職理由はポジティブに変換して伝えたほうがよいとよく言われます。
これは、「嘘を言う」という意味ではなく、ネガティブな理由の裏にあるポジティブな理由を伝えるのが効果的だからです。嘘の転職理由を伝えても入社後のミスマッチにつながり結局は再転職することになるので、嘘を言うのはおすすめしません。
たとえば「監査がつまらない」「やりがいを感じられない」といったネガティブな理由でも、その裏には「業務の幅を広げてもっと自分の能力を発揮したい」という希望があるかもしれません。
この場合、「今の職場では分業制なので担当できる業務が限定されるが、もっと幅広い業務にチャレンジしてスキルを磨きたい」と伝えればポジティブな転職理由として捉えてもらえるでしょう。
現職(前職)の不満が転職理由になっている方もいるでしょう。これらは転職のきっかけにはなり得ますが、面接で不満を伝えることに終始しないことが大切です。
これだけだと求職者が転職によって何を成し遂げたいのかが分からず評価できませんし、「何かにつけて不満を持ちやすい人物」という印象を与えてしまいます。
もしも不満に触れる場合でも事実を具体的に伝えたうえで、改善のための努力もしたことを添えるとよいでしょう。
たとえば残業時間が長いことが不満なら、
「職場全体で深夜の12時過ぎまでの残業が常態化していたため、業務効率の提案をしましたが改善されませんでした。それをきっかけに転職を考えるようになったところ、私はもともと○○業務をしたいという希望があったので御社に興味を持ちました。」
といった伝え方ができます。
転職理由と志望動機はセットで考え、一貫性を持たせることが大切です。それにより志望動機に説得力が生まれます。
たとえば、志望動機が「アドバイザリー業務を経験できる会社で働きたい」場合に、転職理由が「現在の職場で異動を申し出たが認められず希望を叶えられる環境にない」だったのなら、両者には一貫性があるといえます。
転職理由は人によってそれぞれですが、周囲に流されて転職を考えている場合や、条件・労働環境だけに着目している場合は転職が失敗してしまう可能性があります。
自分がなぜ転職したいのかは転職活動を進めるうえで基礎となる部分なので、じっくりと考えて整理しておきましょう。
エージェント名 | 特徴 |
ハイスタ会計士 | 業界特化型の転職エージェントのため、求人数は大手には及ばないものの、丁寧なサポートとミスマッチのない求人の質に定評があります。 |
マイナビ会計士 | 会計士・試験合格者・USCPA専門の転職エージェントです。手厚いサポートと質の高い紹介を受けられると評判で、公認会計士がまずは利用を検討するべきエージェントの筆頭。 |
MS-japan | 管理部門・士業の転職に特化した転職エージェントです。管理部門・士業の登録率・転職相談率No.1と特化型エージェントの中で特に高い実績。 |
edit_note この記事を書いた人
一般事業会社の経理・財務・CFO候補に加え、監査法人・会計事務所への転職支援サービスも充実。転職成功事例や充実したサポート体制をお約束します。
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